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第一部:第十七章 真実は突然に
(二)その者の名は②
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国王が悩み、決断した翌日。
一年生のみとなった騎士学校は休日を迎えていた。
まだ一年生としての授業は終わっておらず、二年生が再度の卒業式を行う前日まで通常通り続けられる事になっている。
この日は、ラーソルバールの部屋に四人が集まっていた。
「四人も入ると狭く感じるな」
エラゼルが不満を述べる。
「寮の部屋なんて、何処だって同じなのに何で私の部屋なの……?」
部屋の主として文句を言ってみるだ、誰も反応しない。
「全くもう……」
口を尖らせてみるが、それ以上言ったところで、エラゼルに「心配だから来た」と言われて終わりそうなので、何も言えない。
「ラーソルがいいお茶が入ったって言うから……」
止むに止まれず、シェラが答える。
「良いお茶飲みたい…」
フォルテシアが続く。
エラゼルは目の前に置かれた菓子の入った箱に視線をやり、話を聞いていない。
「エラゼル、お嬢様がはしたないよ」
呼ばれてビクッとしてラーソルバールの顔を見るエラゼル。
「仕方ないではないか。我が家では幼い頃より、甘味というものを食べさせてもらえる機会が少なかったのだ…」
そう言って再び菓子に視線を戻す。
「それはシェラが、お気に入りのお菓子屋さんで買ってきてくれた物なんだから、感謝しつつ食べないとね」
「そ…そのくらいの事は分かっている…」
言葉に窮してむくれるエラゼルを見て、シェラとフォルテシアは笑ってしまった。
ラーソルバールが皆の茶を入れ終わり、椅子に腰掛けた瞬間だった。
軽くドアを叩く音がして、座ったばかりの椅子から腰を上げた。
「はい、何でしょう?」
そう応えて扉を開くと、そこには寮母が立っていた。
「あら、エラゼルさんも居たのね。丁度良かった」
名を呼ばれたので、渋々菓子から視線を外しエラゼルも席を立つ。
「何でしょう?」
理由も分からず、首を傾げるラーソルバールに、寮母は封書を手渡した。
「今しがた、城からの使者という方が、これを速やかに二人に渡すようにと置いていったのよ」
「はぁ……。有難うございます」
礼を述べると、寮母は大きく頷いた。
「はい、私の役目はここまで。お邪魔したわね」
そう言い残すと、扉を開けたまま慌しく去っていった。
「なぁに?」
「なんだろね?」
そう答えたものの、ラーソルバールは嫌な予感しかしない。
ふと横を見ると、そこに居たはずのエラゼルは既に椅子に座り、今か今かと菓子を見詰めていた。
苦笑いしながら、レターナイフを手に取って腰掛けた。
「ああ、ごめん、先に始めてて……」
ラーソルバールの言葉で、シェラによって菓子箱が開封され、中から菓子が顔を覗かせる。
とたんにエラゼルの目が輝く。
そんな姿を横目に、呆れながらラーソルバールは封書を開けた。
目の前の茶を後回しにして、取り出した書面を読み進める。
「んが……!」
あまりの内容に、ラーソルバールは思わず変な声を出してしまった。
「どうした?」
早速菓子を頬張りながら、ご機嫌のエラゼル。
見るとラーソルバールの顔が青ざめている。
「……こ…こ……国王…陛下からの…お呼び出し……」
「え!」
シェラとフォルテシアが同時に声を発した。
「ほう、行って来ればいいではないか」
菓子に夢中で特に気にも止めぬ様子のエラゼル。適当に答えているに違いない。
「……あなた、自分の手元にも封書来てるの忘れてる?」
呆れたように言うと、ラーソルバールは無関心な友を見詰める。
「ん?」
「国王陛下との謁見は『エラゼル・オシ・デラネトゥスと共に』って書いてあるよ」
「んんんん?」
エラゼルは一転、硬直した。
一年生のみとなった騎士学校は休日を迎えていた。
まだ一年生としての授業は終わっておらず、二年生が再度の卒業式を行う前日まで通常通り続けられる事になっている。
この日は、ラーソルバールの部屋に四人が集まっていた。
「四人も入ると狭く感じるな」
エラゼルが不満を述べる。
「寮の部屋なんて、何処だって同じなのに何で私の部屋なの……?」
部屋の主として文句を言ってみるだ、誰も反応しない。
「全くもう……」
口を尖らせてみるが、それ以上言ったところで、エラゼルに「心配だから来た」と言われて終わりそうなので、何も言えない。
「ラーソルがいいお茶が入ったって言うから……」
止むに止まれず、シェラが答える。
「良いお茶飲みたい…」
フォルテシアが続く。
エラゼルは目の前に置かれた菓子の入った箱に視線をやり、話を聞いていない。
「エラゼル、お嬢様がはしたないよ」
呼ばれてビクッとしてラーソルバールの顔を見るエラゼル。
「仕方ないではないか。我が家では幼い頃より、甘味というものを食べさせてもらえる機会が少なかったのだ…」
そう言って再び菓子に視線を戻す。
「それはシェラが、お気に入りのお菓子屋さんで買ってきてくれた物なんだから、感謝しつつ食べないとね」
「そ…そのくらいの事は分かっている…」
言葉に窮してむくれるエラゼルを見て、シェラとフォルテシアは笑ってしまった。
ラーソルバールが皆の茶を入れ終わり、椅子に腰掛けた瞬間だった。
軽くドアを叩く音がして、座ったばかりの椅子から腰を上げた。
「はい、何でしょう?」
そう応えて扉を開くと、そこには寮母が立っていた。
「あら、エラゼルさんも居たのね。丁度良かった」
名を呼ばれたので、渋々菓子から視線を外しエラゼルも席を立つ。
「何でしょう?」
理由も分からず、首を傾げるラーソルバールに、寮母は封書を手渡した。
「今しがた、城からの使者という方が、これを速やかに二人に渡すようにと置いていったのよ」
「はぁ……。有難うございます」
礼を述べると、寮母は大きく頷いた。
「はい、私の役目はここまで。お邪魔したわね」
そう言い残すと、扉を開けたまま慌しく去っていった。
「なぁに?」
「なんだろね?」
そう答えたものの、ラーソルバールは嫌な予感しかしない。
ふと横を見ると、そこに居たはずのエラゼルは既に椅子に座り、今か今かと菓子を見詰めていた。
苦笑いしながら、レターナイフを手に取って腰掛けた。
「ああ、ごめん、先に始めてて……」
ラーソルバールの言葉で、シェラによって菓子箱が開封され、中から菓子が顔を覗かせる。
とたんにエラゼルの目が輝く。
そんな姿を横目に、呆れながらラーソルバールは封書を開けた。
目の前の茶を後回しにして、取り出した書面を読み進める。
「んが……!」
あまりの内容に、ラーソルバールは思わず変な声を出してしまった。
「どうした?」
早速菓子を頬張りながら、ご機嫌のエラゼル。
見るとラーソルバールの顔が青ざめている。
「……こ…こ……国王…陛下からの…お呼び出し……」
「え!」
シェラとフォルテシアが同時に声を発した。
「ほう、行って来ればいいではないか」
菓子に夢中で特に気にも止めぬ様子のエラゼル。適当に答えているに違いない。
「……あなた、自分の手元にも封書来てるの忘れてる?」
呆れたように言うと、ラーソルバールは無関心な友を見詰める。
「ん?」
「国王陛下との謁見は『エラゼル・オシ・デラネトゥスと共に』って書いてあるよ」
「んんんん?」
エラゼルは一転、硬直した。
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