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第一部:第十七章 真実は突然に
(二)その者の名は①
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(二)
ヴァストール国王は悩んでいた。
何度か聞く事になった「ラーソルバール・ミルエルシ」という名前の娘とは誰で、何なのか。
宰相の命を守る事に貢献したばかりでなく、街の危機に駆けつけ大きな仕事をしたとか、闇の門というものの情報を提供をしたという話も聞いた。
事実であれば、褒賞や、爵位なども考えなくてはならないではないか。
悩んだので、色々と知っていそうな次男を捕まえて聞いてみた。
「ええ、知っていますよ。美しい娘で、剣も一流、才覚も十分。デラネトゥス家のイリアナを暗殺者の手から救いました」
あっさりと答えが返ってきた。
漠然としていて良く分からず、デラネトゥス公爵が丁度城に顔を出したと聞いたので、話を聞いてみる事にした。
「ええ、三女の友人で、長女の命の恩人です。気の良い娘ですよ」
簡潔な答えが返ってきたが、娘の友人で、更に恩人となれば、悪し様には言うまい。
腑に落ちず、通りかかった長男を捕まえた。
「ああ、鷲の娘です。騎士学校に通っています。綺麗な娘ですよ」
こちらもあっさりと応えた。
騎士学校ならば、ナスタークに聞いてみれば良いかと思い、軍務大臣を呼んでみた。
「ああ、ラーソルバール嬢ですか。陛下もご存知かとは思いますが、私も先日、宰相と共に命を救われました。剣の腕は騎士団長にも引けを取りません。赤のドレスの娘と言えば、有名です。フェスバルハ伯の秘蔵っ子ですな」
ならば、一番事情を知って居そうな、そのフェスバルハ伯爵を呼んでみるか、と考えた。
商業の報告を聞くついでと称して呼び、話を聞いてみる。
「はい、良く存じております。才知に富んでおり、剣の腕も立ちますが、なにぶん目立つ事が嫌いで褒められるのを苦手としております。陛下にはお話しておりませんでしたが、昨年の流言の件で、陛下に進言するよう私の腰を上げさせたのが彼女でございます」
聞けば聞くほど分からない。
騎士学校の生徒といえば、十五歳程度。
双剣の鷲といえば、息子の尊敬して止まないミルエルシ男爵で、その娘という事になる。
そこまでは理解できるが、皆が知っていて褒める。
しかも剣の腕前は、騎士団長程もあるとか。
「ワシは皆にからかわれておるのか?」
国王は苦笑した。
そうだ、あの男なら冗談を言うまい。
サンドワーズ第一騎士団長を急用があると言って呼び寄せた。
「ラーソルバールという者を知っているか?」
「はい、存じております。かなりの剣の腕を持つ娘です。私もこの目で見ておりますし、部下の証言もあります。現在問題になっている闇の門の対処にも大きく関わっております。部下の話では、デラネトゥスの娘と共に相当な才があるのではないかと申しておりました」
この時点でようやく皆の話が嘘ではないと納得した国王は、宰相を呼ぶことにした。
「はい。目の前で我々を救うべく、ジャハネートと共に獅子奮迅の働きをしてくれました。初見でしたが、体は大きくないのに、剣の腕はジャハネートに劣るものではございませんでした。ああ、そうそう、剣の腕とは別に、とても可愛い娘でしたよ。こう言ってはなんですが、デラネトゥスの娘と並んでも遜色ありませんでした」
そう言われたので、国王はひとつため息をつくと、ようやく会ってみようかと重い腰を上げる事とした。
ラーソルバールが初の謁見を行う三日前の出来事である。
ヴァストール国王は悩んでいた。
何度か聞く事になった「ラーソルバール・ミルエルシ」という名前の娘とは誰で、何なのか。
宰相の命を守る事に貢献したばかりでなく、街の危機に駆けつけ大きな仕事をしたとか、闇の門というものの情報を提供をしたという話も聞いた。
事実であれば、褒賞や、爵位なども考えなくてはならないではないか。
悩んだので、色々と知っていそうな次男を捕まえて聞いてみた。
「ええ、知っていますよ。美しい娘で、剣も一流、才覚も十分。デラネトゥス家のイリアナを暗殺者の手から救いました」
あっさりと答えが返ってきた。
漠然としていて良く分からず、デラネトゥス公爵が丁度城に顔を出したと聞いたので、話を聞いてみる事にした。
「ええ、三女の友人で、長女の命の恩人です。気の良い娘ですよ」
簡潔な答えが返ってきたが、娘の友人で、更に恩人となれば、悪し様には言うまい。
腑に落ちず、通りかかった長男を捕まえた。
「ああ、鷲の娘です。騎士学校に通っています。綺麗な娘ですよ」
こちらもあっさりと応えた。
騎士学校ならば、ナスタークに聞いてみれば良いかと思い、軍務大臣を呼んでみた。
「ああ、ラーソルバール嬢ですか。陛下もご存知かとは思いますが、私も先日、宰相と共に命を救われました。剣の腕は騎士団長にも引けを取りません。赤のドレスの娘と言えば、有名です。フェスバルハ伯の秘蔵っ子ですな」
ならば、一番事情を知って居そうな、そのフェスバルハ伯爵を呼んでみるか、と考えた。
商業の報告を聞くついでと称して呼び、話を聞いてみる。
「はい、良く存じております。才知に富んでおり、剣の腕も立ちますが、なにぶん目立つ事が嫌いで褒められるのを苦手としております。陛下にはお話しておりませんでしたが、昨年の流言の件で、陛下に進言するよう私の腰を上げさせたのが彼女でございます」
聞けば聞くほど分からない。
騎士学校の生徒といえば、十五歳程度。
双剣の鷲といえば、息子の尊敬して止まないミルエルシ男爵で、その娘という事になる。
そこまでは理解できるが、皆が知っていて褒める。
しかも剣の腕前は、騎士団長程もあるとか。
「ワシは皆にからかわれておるのか?」
国王は苦笑した。
そうだ、あの男なら冗談を言うまい。
サンドワーズ第一騎士団長を急用があると言って呼び寄せた。
「ラーソルバールという者を知っているか?」
「はい、存じております。かなりの剣の腕を持つ娘です。私もこの目で見ておりますし、部下の証言もあります。現在問題になっている闇の門の対処にも大きく関わっております。部下の話では、デラネトゥスの娘と共に相当な才があるのではないかと申しておりました」
この時点でようやく皆の話が嘘ではないと納得した国王は、宰相を呼ぶことにした。
「はい。目の前で我々を救うべく、ジャハネートと共に獅子奮迅の働きをしてくれました。初見でしたが、体は大きくないのに、剣の腕はジャハネートに劣るものではございませんでした。ああ、そうそう、剣の腕とは別に、とても可愛い娘でしたよ。こう言ってはなんですが、デラネトゥスの娘と並んでも遜色ありませんでした」
そう言われたので、国王はひとつため息をつくと、ようやく会ってみようかと重い腰を上げる事とした。
ラーソルバールが初の謁見を行う三日前の出来事である。
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