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第一部:第十五章 その流れる先は
(三)軍務省①
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(三)
翌朝、悪夢にうなされることも無く目が覚めた。
エラゼルのおかげ、という事にしておこう。
二人で寝た割には、窮屈さを感じることも無く、布団を奪い合う事も無く、穏やかな夜だったと言える。魔力酔いは夜のうちに消えてから、再発することもなかった。
朝の弱い私よりも、エラゼルは先に目覚めたようで、既に着替えてお茶を飲んでいた。
「起きたか?」
余程暇だったのだろう、教会の影響で置かれていると思われる聖書を片手に持っている。
「起こしてくれればいいのに」
「良く寝ていたので、そのままにしておいた。うなされている訳でも無かったしな」
「はいはい、お気遣いありがとう」
苦笑いしながら身支度を整えると、エラゼルの向かいに座った。
無言で差し出されたお茶を私は手に取った。
着替えているうちに淹れてくれたのだろう。
「ん、丁度いい。有難う」
目覚めの一杯は格別だ、と誰かが言っていた気がする。
ほっと一息つく時間的余裕があればこそかもしれない。
「帰りは歩きだね」
「大した距離ではないし、怪我も治ったのだから問題ないだろう?」
「うん、早く寮に戻らないとね」
お茶を飲みつつ、少しゆっくりした後、私達は部屋を出た。
ホールに出ると、受付担当者と数人の職員が居るのが見えた。
その中にメサイナさんの姿を見つけると、駆け寄った。
「おはようございます、メサイナさん」
「あら、おはようございます。調子はどう?」
書類を手にしていたが、一旦手を止めて私達の方を見る。
「もう大丈夫、って感じです」
「治癒の反動や、まだ治りきっていないところとかあるかもしれないから、昨日の部屋で待ってて」
「はい…」
またあの格好をしなければならないのだろうかと、私は不安になった。
部屋で待つこと少々。書類を持ってメサイナさんが現れた。
「この書面に沿って確認していくから」
そう言って、色々と書かれた書類を見せられた。
この後、着替えは必要ないと言われ、真っ直ぐ歩けるか、体のバランスは問題ないか、柔軟性は悪化していないかなど項目に従って確認が行われた。
異常なし。完治。
メサイアさんは書類にチェックを入れる。
私が最後に書類にサインすると、確認は終了となった。
「はい、これで終わりです」
そう言って穏やかな笑顔を向けて、私を安心させた。
三人は部屋を出ると、ホールに戻ってきた。
「ありがとうございました」
私は頭を下げた。昨日のように痛みが走ることも無い。
「二人共、気をつけて帰ってくださいね。そして今日からまた頑張ってね」
メサイアさんは優しく言葉をかけてくれた。
もう一度頭を下げ、手を振って救護院を出ると、そこには何故か馬車が停まっており、私達の姿を見つけると声をかけてきた。
「騎士団からの伝言です。お二人を一旦寮までお送りしたあと、軍務省までお連れするように、との事です」
「……は?」
その言葉に私とエラゼルは固まった。
馬車には騎士団の紋章が刻まれたプレートが光っていた。
翌朝、悪夢にうなされることも無く目が覚めた。
エラゼルのおかげ、という事にしておこう。
二人で寝た割には、窮屈さを感じることも無く、布団を奪い合う事も無く、穏やかな夜だったと言える。魔力酔いは夜のうちに消えてから、再発することもなかった。
朝の弱い私よりも、エラゼルは先に目覚めたようで、既に着替えてお茶を飲んでいた。
「起きたか?」
余程暇だったのだろう、教会の影響で置かれていると思われる聖書を片手に持っている。
「起こしてくれればいいのに」
「良く寝ていたので、そのままにしておいた。うなされている訳でも無かったしな」
「はいはい、お気遣いありがとう」
苦笑いしながら身支度を整えると、エラゼルの向かいに座った。
無言で差し出されたお茶を私は手に取った。
着替えているうちに淹れてくれたのだろう。
「ん、丁度いい。有難う」
目覚めの一杯は格別だ、と誰かが言っていた気がする。
ほっと一息つく時間的余裕があればこそかもしれない。
「帰りは歩きだね」
「大した距離ではないし、怪我も治ったのだから問題ないだろう?」
「うん、早く寮に戻らないとね」
お茶を飲みつつ、少しゆっくりした後、私達は部屋を出た。
ホールに出ると、受付担当者と数人の職員が居るのが見えた。
その中にメサイナさんの姿を見つけると、駆け寄った。
「おはようございます、メサイナさん」
「あら、おはようございます。調子はどう?」
書類を手にしていたが、一旦手を止めて私達の方を見る。
「もう大丈夫、って感じです」
「治癒の反動や、まだ治りきっていないところとかあるかもしれないから、昨日の部屋で待ってて」
「はい…」
またあの格好をしなければならないのだろうかと、私は不安になった。
部屋で待つこと少々。書類を持ってメサイナさんが現れた。
「この書面に沿って確認していくから」
そう言って、色々と書かれた書類を見せられた。
この後、着替えは必要ないと言われ、真っ直ぐ歩けるか、体のバランスは問題ないか、柔軟性は悪化していないかなど項目に従って確認が行われた。
異常なし。完治。
メサイアさんは書類にチェックを入れる。
私が最後に書類にサインすると、確認は終了となった。
「はい、これで終わりです」
そう言って穏やかな笑顔を向けて、私を安心させた。
三人は部屋を出ると、ホールに戻ってきた。
「ありがとうございました」
私は頭を下げた。昨日のように痛みが走ることも無い。
「二人共、気をつけて帰ってくださいね。そして今日からまた頑張ってね」
メサイアさんは優しく言葉をかけてくれた。
もう一度頭を下げ、手を振って救護院を出ると、そこには何故か馬車が停まっており、私達の姿を見つけると声をかけてきた。
「騎士団からの伝言です。お二人を一旦寮までお送りしたあと、軍務省までお連れするように、との事です」
「……は?」
その言葉に私とエラゼルは固まった。
馬車には騎士団の紋章が刻まれたプレートが光っていた。
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