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第一部:第六章 後始末と始まり
(二)剣と耳飾り①
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(二)
ジェスターがしばらく休学する。
担任教師から、そう告げられたのは、演習の翌日だった。
知らせに喜ぶ生徒の声が上がったが、ラーソルバールは心中複雑だった。やり過ぎたか、という後悔と、しっかり見つめ直して戻ってきて欲しいという思いと。
シェラがラーソルバールに向かって振り向き、笑って頷いた。気にするな、という事なのだろう。
教師たちもジェスターには手を焼いていたようで、今回の件について、ラーソルバールは軽いお咎めでのみで済んだ。本来であれば、がっつり怒られる所だろうと自覚している。反省していない訳ではないが、彼もいずれ戻ってくるだろうとは思っているので、深く考えすぎないようにしようと思った。
とは言え、座学が中心となったこの日は、色々と余計な事を考えてしまった。もちろん、授業内容は半分程度しか頭に入ってこない。
こういう時は、放課後に体を動かすしかない。そう決めたら、何となく気持ちの切り替えが出来た。
放課後、例のごとく庭の隅で練習をしていると、何故かガイザがやってきた。
「よう、久し降り」
クラスが違うガイザとは、たまにすれ違う程度で、今までまともに会話をする余裕も無かった。
「ここ、誰に聞いたの?」
「ああ、同じクラスの奴が、散歩でそれらしい奴を見かけたって言うから、見に来てみた。ただの気分転換のようなものさ」
見ると手ぶらで何も持っていない様子で、本当に散歩がてら本人なのか確認しに来たのだろう。
「ガイザさん、お久しぶりです」
「ああ、シェラさん、お久しぶり。お転婆娘のお守りは大変でしょう」
「何と?」
お転婆娘の眼が鋭く光る。
「聞いたぞ、推薦入学者を叩き潰したとか」
「あぅ……」
「どうせ、やり過ぎたとか思って凹んでたから、気晴らしでもしてるんだろ?」
「はうっ!」
図星だった。
「すごいね、全部お見通しだよ」
シェラがけたけたと笑った。
「あ、歓談中すまいないが、この方は?」
沈黙していたフォルテシアが、ようやく口を開いた。
話しかけるタイミングを見計らっていたのだろう。
「ああ、失礼。俺はガイザ・ドーンウィル。ラーソルバールの知り合いです。あなたは?」
「申し遅れました。私はフォルテシア・クローベル」
「クラスメイトだよ」
なるほど、というようにガイザは頷いた。
「しかし、珍しいな。こいつが容赦無くやるなんて」
「まあ、色々有るんですよ。ついでですから、私と交代してください」
シェラは半ば強引に剣を押し付けると、日陰に座り込んだ。
「がんばれー」
「随分とやる気の無い応援だな、おい」
シェラの声に呆れつつ、剣を握り直した瞬間だった。ガイザは危険を察知して、飛び退いた。
「避けたか……」
元居た場所を、ラーソルバールの剣が切り裂いていた。
「危ないだろ、手加減無しかよ!」
「大丈夫、多分寸止めするから。それに当たっても少し痛いだけだよ」
「今、多分って言ったろ!」
「んん?」
ラーソルバールはとぼけた。
「さっきの仕返しのつもりだな!」
「ん? なに?」
とりあえず、遠慮をするつもりが無いことは分かった。諦め半分にガイザは大きく溜め息をついた。
ジェスターがしばらく休学する。
担任教師から、そう告げられたのは、演習の翌日だった。
知らせに喜ぶ生徒の声が上がったが、ラーソルバールは心中複雑だった。やり過ぎたか、という後悔と、しっかり見つめ直して戻ってきて欲しいという思いと。
シェラがラーソルバールに向かって振り向き、笑って頷いた。気にするな、という事なのだろう。
教師たちもジェスターには手を焼いていたようで、今回の件について、ラーソルバールは軽いお咎めでのみで済んだ。本来であれば、がっつり怒られる所だろうと自覚している。反省していない訳ではないが、彼もいずれ戻ってくるだろうとは思っているので、深く考えすぎないようにしようと思った。
とは言え、座学が中心となったこの日は、色々と余計な事を考えてしまった。もちろん、授業内容は半分程度しか頭に入ってこない。
こういう時は、放課後に体を動かすしかない。そう決めたら、何となく気持ちの切り替えが出来た。
放課後、例のごとく庭の隅で練習をしていると、何故かガイザがやってきた。
「よう、久し降り」
クラスが違うガイザとは、たまにすれ違う程度で、今までまともに会話をする余裕も無かった。
「ここ、誰に聞いたの?」
「ああ、同じクラスの奴が、散歩でそれらしい奴を見かけたって言うから、見に来てみた。ただの気分転換のようなものさ」
見ると手ぶらで何も持っていない様子で、本当に散歩がてら本人なのか確認しに来たのだろう。
「ガイザさん、お久しぶりです」
「ああ、シェラさん、お久しぶり。お転婆娘のお守りは大変でしょう」
「何と?」
お転婆娘の眼が鋭く光る。
「聞いたぞ、推薦入学者を叩き潰したとか」
「あぅ……」
「どうせ、やり過ぎたとか思って凹んでたから、気晴らしでもしてるんだろ?」
「はうっ!」
図星だった。
「すごいね、全部お見通しだよ」
シェラがけたけたと笑った。
「あ、歓談中すまいないが、この方は?」
沈黙していたフォルテシアが、ようやく口を開いた。
話しかけるタイミングを見計らっていたのだろう。
「ああ、失礼。俺はガイザ・ドーンウィル。ラーソルバールの知り合いです。あなたは?」
「申し遅れました。私はフォルテシア・クローベル」
「クラスメイトだよ」
なるほど、というようにガイザは頷いた。
「しかし、珍しいな。こいつが容赦無くやるなんて」
「まあ、色々有るんですよ。ついでですから、私と交代してください」
シェラは半ば強引に剣を押し付けると、日陰に座り込んだ。
「がんばれー」
「随分とやる気の無い応援だな、おい」
シェラの声に呆れつつ、剣を握り直した瞬間だった。ガイザは危険を察知して、飛び退いた。
「避けたか……」
元居た場所を、ラーソルバールの剣が切り裂いていた。
「危ないだろ、手加減無しかよ!」
「大丈夫、多分寸止めするから。それに当たっても少し痛いだけだよ」
「今、多分って言ったろ!」
「んん?」
ラーソルバールはとぼけた。
「さっきの仕返しのつもりだな!」
「ん? なに?」
とりあえず、遠慮をするつもりが無いことは分かった。諦め半分にガイザは大きく溜め息をついた。
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