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第一部:第三章 学校生活

(一)魔法と気晴らし②

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 成長してから魔法の基礎鍛練は、幼少期のそれよりも難しいと先生が仰っていた。
 成長した体は、既に形が構成されつつあるため、魔力の通り道を広げるだけの領域を、確保できない可能性が高いのだそうだ。
 ただ、結果から導き出された理論のようなもので、裏付けの有る話ではないらしい。詳細は理解できなかったけれど、学の無い私には、今から始める人は大変ですよ、と言われている事だけは分かる。
 軽く意識するだけで、魔力が体内を流れるようにする。
 次に、全身から体の一点に力を集中する。
 これが制御の基本で、私くらいの年齢までには、有る程度習得しておくものだそうだ。
 体内にある魔力の循環が、自身で制御できているか。魔力球を作るのは、その確認方法らしい。
 そういう話を聞くと、魔力球って本当に基礎なんだって改めて思った。
 しかし、私はそれすらできずに、何度も暴発させて魔力を無駄に消費している。
 魔力回復薬でもあれば、休日にでもガンガン練習できるのに。いや、実際に魔力回復薬って有るらしいんですが、とっても高価な物なんだそうです。
 勿論、今までそんな物に一切興味が無かったから、見たことも無いし、有ることさえも知らなかった。学校の売店に売っていても買えないけどね。
 俗に言う『冒険者』と呼ばれる人達が買って行くらしい。そんなに稼ぎが良いのだろうか。まあ、私に縁の無い物の話は置いておこう。

 練習中は五回に一回位しか作れない魔力球。
 しかも歪な形。
 シェラに教えて貰ってはいるけれど、なかなか上達しない。
 私には練習しても使えるようにならないのかもしれない、そんな弱気な気持ちになって挫折しそうになる。けれど、ここで挫折してしまっては、騎士になるという夢は夢のまま終わってしまう。
 やるぞ、やるしかない。そう割り切ってしまえば、あとはやるだけだった。
 暴発させると何があるか分からないので、寮の裏手で剣の訓練の合間に練習を始めた。
 集中することが大事。
 気張ってやっても成功率は上昇しないし、その様子を横で見ているフォルテシアにも呆れられている気がする。魔法の練習をしていると、彼女の態度が妙に余所余所しく感じる。気を使われているのかもしれない。
 あまり根をつめてやっていると、潰れてしまうと言われたので、それならば気分転換をしようと決めた。

 休日になり、気晴らしに街へ出ることにした。
 外部接触禁止となっていた三十日が既に経過し、ようやく寮の敷地から出る事が可能になっていた。
 声を掛けられる範囲で、シェラとフォルテシア、そしてエミーナと、同じクラス四人での外出となった。寮と学校以外の場所は久々なので、少し浮かれているかもしれない。
 騎士学校は女子が少なく、各クラスとも十人程度しか居ない。とはいえ、まだ学校も始まったばかりで、全員と仲良くするというのも中々に難しい。
 皆とは追々仲良くなれたらいいと思っている。
 まず向かったのが、武器屋という女の子だけで行くには不似合いな場所だった。
 食いしん坊シェラの、最初に甘味を食べたいという、要求を突っぱねてまで来たのには訳がある。
 昔から入ってみたかったのだが、娘一人で入るには場違いすぎた。四人も居れば、冷やかし程度のつもりで入れるに違いない。意外にも、この意見が全員で一致した結果だった。
 そこはやはり女とはいえ、騎士学校に入学するような者ばかり。剣に興味が無い訳ではない。
 特に私。
 念願の武器屋に入ってみると、そこは銀色に輝く武器が並べられた眩い世界だった。
「おおー」
 誰かが声を発した。私ではない。
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