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第一部:第二章 希望を胸に

(四)始まりは…①

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(四)

「クラスの代表であるクラス長を決める」
 教師のそんな言葉に、ラーソルバールは危機感を覚えた。
 危機感、それは他のクラスではエラゼルが代表になるだろう、という確信が有ったからだ。 クラス長同士の会合があった場合、彼女と顔を合わせる事になる。それは回避したい。
 では、誰が適任か。実力もはっきりした推薦入学者で、多少の事が有っても動じることが無さそうな性格。
 フォルテシアしか居ない。
 選考は特に立候補者も無く、ラーソルバールと、フォルテシアを推す声が上がった。だが、ラーソルバールが辞退したことで、無難に決定となってしまった。
(ゴメンね)
 拍手の中、フォルテシアが振り向いたので、ラーソルバールは両手を合わせて頭を下げた。目で合図を送ると、「任された」と言うかのようにフォルテシアは頷いた。

 この日の午後からは、教材と練習用の装備品の支給が行われた。皮鎧と模擬戦闘用の剣である。
 両方とも入学試験の際に使用していた物と同じ物で、鎧は個人の体格に合わせたサイズ変更と、若干の調整が施されていた。
 皮鎧の継ぎ目は、鎖帷子で出来ており、練習中の怪我を減らす配慮がされている。鉄の板鎧と比べれば圧倒的に軽いのだが、それでもこの年頃の者達には十分な重量になる。
 機動性を考えると、それなりの筋力をつけなければならないだろう。

 併せて配布された教材に目をやると「地理・歴史学」「戦術・戦略論」「治世論」「産業・経済」「魔法実践」「生物学」などという分厚い本が積み重ねられていた。これから先の座学の過酷さが伺い知れ、先が思いやられる。
 中に一冊だけ薄い本が混じっていた。「国内外情勢」と書かれた本は、逐次最新のものが配布されると説明された。刻一刻と変わる情勢を、表向きにされた形で伝えるのが目的、という事で、伏せるべき情報は伏せるという事なのだろう。
 これらの大量の荷物は、個人持ちの収納箱に入れて鍵をかけて管理するか、寮への持ち帰りが必須とされた。寮で勉強をしない訳にもいかず、ほぼ全員が、数回に分けて教材を持ち帰る事にした。
 教材の配布と説明を終えた時点で、初日ということもあり、早めの終了となった。

 各自が重たい荷物を持ち、二年生が実技訓練を行っているのを横目に寮へと戻る。
 実技の風景を見て、ラーソルバールは無性に体を動かしたくなった。
「シェラ、寮に戻ったら体を動かすの付き合ってくれる?」
「いいよ、寮にあった練習用の剣使うの?」
 昨日、寮の玄関に貸出し用の武器が有るのを見つけていた。
 学校の模擬戦闘用の物より簡素で、刀身に布が巻いてあり、怪我をしにくい作りになっている。安い皮鎧でも着れば、怪我をすることも無いだろう。
 素振りや、打ち込みが主たる用途らしい。
 二人は寮に戻って着替えると、早速寮母に申請して剣を借り、庭で打ち合いを始めた。
 他人に迷惑をかけないよう、寮から離れた場所を選んだのだが、時折気分転換の為か、散歩や走り込みをしている生徒が通り過ぎて行く。
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