20 / 21
次の仕事に出発なのじゃ、といいたいとこ…
ろくな事が無いぞ
しおりを挟む
ナサリアが持ってきたのは、街外れの墓地に沸くというスケルトンの退治。
夜になると、墓から出てきて徘徊するのだそうだ。
スケルトン自体は生物の骨だということは誰でも知っている。
まれに、生前の本人の残留思念や、自然界に浮遊する魔力の塊のようなものが動かす事もあるが、大抵は勝手に動き回るというのは誰かが操っているか、漂う霊魂が乗り移り勝手に動かしているかのいずれかだ。
かく言う私も、悪魔らしく骨を操って遊んだ事がある。
躍らせてみたり、雑用に使ったりと魔法の練習に意外と役立つのだ。
我が家の近くにやってくる冒険者が邪魔で、ほれほれと動かして遊んで脅かしたこともある。脅かした程度で、怪我もさせておらんが。
そうしたら、今度はスケルトン退治だ、と息巻いてやってきた。
仕方が無いので、骨にボロ布着せ、拾ったティアラをかぶせ、鎌を持たせて歩かせてみたところ、連中は知識でしかその姿を知らんから「死者の王だ!」と大騒ぎして逃げていった。
ただのスケルトンなんじゃよ。てへ、って手を振って見送った。
それっきり、その連中は来なくなったがの。
話がそれた。
私のようなイタズラであるならまだしも、強烈な悪意があった場合や、術者の魔力が強力であった場合は危険だ。
霊魂が乗り移っていた場合でも、その怨念が強ければ強いほど厄介になる。
まあ、この近辺でそんなモノに出会うとは思えない。
ましてや、今のところ何の被害も出ていないというのだから、あまり深く考える必要もないかもしれない。
ギルドの受付に依頼の手続きに行っていたナサリアが戻ってきた。
「こら!」
胡坐をかいて床に座っていたら、ナサリアに見つかって怒られた。
「女の子がそんなお行儀の悪い格好しちゃ駄目でしょ!」
「待っとる間暇だったのだから、いいじゃろ。これくらい」
私は口を尖らせて文句を言う。
「だめー!」
「ほんじゃあ、私専用の椅子でも持ってきてくれればいいんじゃ。こう……なんというか威厳のあるやつ。背もたれのあたりが、こうウネウネっとしてて…」
「なんじゃい、それ?」
フィリアが呆れたような顔をする。
分からんかのう、あの美的センスが……。
「それよりも、今日の夜に行くから、今のうちに休んでおきましょ」
ナサリアが当然のように言うので、一同は固まった。
「いや、準備は?」
フィリアの真面目ちゃんの虫が騒いだようだ。
「スケルトンだし、何とかなるでしょ」
ヘラヘラと笑うナサリアを見て、フィリアと一緒に私もため息が出た。
スケルトンと思って侮ると、ろくな事が無いぞ……と。
……と思っていた、嫌な予感が的中した。
「いーーーーーやーーーーーー!」
その日の夜、フィリアとナサリアは絶叫していた。
夜になると、墓から出てきて徘徊するのだそうだ。
スケルトン自体は生物の骨だということは誰でも知っている。
まれに、生前の本人の残留思念や、自然界に浮遊する魔力の塊のようなものが動かす事もあるが、大抵は勝手に動き回るというのは誰かが操っているか、漂う霊魂が乗り移り勝手に動かしているかのいずれかだ。
かく言う私も、悪魔らしく骨を操って遊んだ事がある。
躍らせてみたり、雑用に使ったりと魔法の練習に意外と役立つのだ。
我が家の近くにやってくる冒険者が邪魔で、ほれほれと動かして遊んで脅かしたこともある。脅かした程度で、怪我もさせておらんが。
そうしたら、今度はスケルトン退治だ、と息巻いてやってきた。
仕方が無いので、骨にボロ布着せ、拾ったティアラをかぶせ、鎌を持たせて歩かせてみたところ、連中は知識でしかその姿を知らんから「死者の王だ!」と大騒ぎして逃げていった。
ただのスケルトンなんじゃよ。てへ、って手を振って見送った。
それっきり、その連中は来なくなったがの。
話がそれた。
私のようなイタズラであるならまだしも、強烈な悪意があった場合や、術者の魔力が強力であった場合は危険だ。
霊魂が乗り移っていた場合でも、その怨念が強ければ強いほど厄介になる。
まあ、この近辺でそんなモノに出会うとは思えない。
ましてや、今のところ何の被害も出ていないというのだから、あまり深く考える必要もないかもしれない。
ギルドの受付に依頼の手続きに行っていたナサリアが戻ってきた。
「こら!」
胡坐をかいて床に座っていたら、ナサリアに見つかって怒られた。
「女の子がそんなお行儀の悪い格好しちゃ駄目でしょ!」
「待っとる間暇だったのだから、いいじゃろ。これくらい」
私は口を尖らせて文句を言う。
「だめー!」
「ほんじゃあ、私専用の椅子でも持ってきてくれればいいんじゃ。こう……なんというか威厳のあるやつ。背もたれのあたりが、こうウネウネっとしてて…」
「なんじゃい、それ?」
フィリアが呆れたような顔をする。
分からんかのう、あの美的センスが……。
「それよりも、今日の夜に行くから、今のうちに休んでおきましょ」
ナサリアが当然のように言うので、一同は固まった。
「いや、準備は?」
フィリアの真面目ちゃんの虫が騒いだようだ。
「スケルトンだし、何とかなるでしょ」
ヘラヘラと笑うナサリアを見て、フィリアと一緒に私もため息が出た。
スケルトンと思って侮ると、ろくな事が無いぞ……と。
……と思っていた、嫌な予感が的中した。
「いーーーーーやーーーーーー!」
その日の夜、フィリアとナサリアは絶叫していた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」
そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。
曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。
当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。
そうですか。
ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?
私達、『領』から『国』になりますね?
これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。
※現在、3日に一回更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる