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はてさて、どうしよう

嫌味の一つでも

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「いかんいかん、段々と口調が悪魔の時に戻ってきておる」
 私は自分の頭をコンコンとロッドで叩いた。

「なに、今凄い音がしたけど!」
 フィリアが戻ってきた。オーガとの戦闘音を聞きつけたのだろう。
「私の事はいいが、ナサリア達はいいのか?」
「あ、呼び戻したから、もうすぐこっちに来るよ………って、この黒コゲなに?」
 横たわる焼け爛れたオーガを指差す。
「見て分からんか?」
「いや、分かるけどさ、つるぺたが倒したの?」
「当たり前じゃろ? 他に誰が居る」
 そう答えると、フィリアは「むー」と唸って、まじまじとオーガの死体を見て回る。
「炎か雷使った?」
「使ったぞ。ええじゃろ、近接だったから外しようも無いし。それに、森が燃えたわけでもない」
「まあ、緊急だろうからいいけどさ。何か証拠になるもの持って行く?」
「ああ、それがええじゃろ。村に戻ったら嫌味の一つでも言ってやらにゃ、気が済まん。黙っていた事も含めて、報酬を上乗せして貰わんとな」
 実際、私にしてみたら、この程度の相手は大した事は無い。
 だが、もし他の3人が遭遇していたら、どうなっていたか分からない。
 依頼者にとって、冒険者の価値などその程度だということだ。
 ゴブリン討伐で呼び寄せ、あわよくば、一緒に倒してもらえる。
 失敗しても、また別の冒険者がやってくる。下衆の考える事、下級悪魔よりも性質が悪いではないか。
 こんな事で怒りを覚えるとは、私もこいつらに多少の仲間意識でも生まれたか?
 それとも冒険者という存在に対する憐れみか?
 考えても意味の無い事だ。それよりも……。
「おお、そうだ。私は足が疲れたから、乗り物に乗って良いか?」
「乗り物?」
「召喚するのじゃよ」
 そう言うと、フィリアが興味津々といった表情で私を見る。
「何呼ぶの? 精霊?」
地獄犬ヘルハウンド……」
 ゴイン!
「いったーい」
 頭を殴られた。
「そんなもん呼んだら危ないでしょ!」
「そんな事は無いわい。『かわいー!』と大ウケすること間違いなしじゃ!」
 なんじゃ、その白い目は……。
 信じておらんの。
「んじゃ、体内魔力に余裕があるんだったら呼んでみな。戦力になるかもしれないし」
 何だかんだ言って微妙に期待しておるじゃないか。
「ちょいと離れておれ」
 フィリアを下がらせ、私は魔力を可視化させ、空中に魔法陣を描く。
「エディラヌーサ・フィフサス・ローダ……彼方より我が求めに応じ、ここに出でよ!」
 詠唱を終えると、魔法陣から黒い大きな頭が現れ、少しずつその姿を顕現させていく。
 次第に青ざめていくフィリア。
「む…無理ムリムリムリムリ………だめー!」
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