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第1章 アルストロメリア編
第11話 レイ君との婚約話
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アリスは婚約パーティーがどんなものかわからなかった。
しかし、作法は分からないが、アリスと貴族たちの顔合わせを兼ねた立食形式パーティーであった。
舞踏会のように踊ったりはしない。
そもそも次期女王や王子は踊らないのだ。
この立食パーティは踊り子が踊っているのを眺めたり、料理人がゲストの目の前で料理を作ったり、大道芸を披露したりするのを眺めながら貴族や王族などが軽い雰囲気で話し合う社交場なのである。
そのために、食事はあくまで飾りであり、貴族同士の交流や結婚相手探しなどがメインである。
(うぅ、美味しそうなものだらけなのに手を出せないのは辛いです)
アリスの仕事は特に変わったことはなく各貴族との顔合わせをするだけである。
しかも今回は人数が多いので身分の低いものや当主以外は、アリスとアルに近づけない
アリスは現在、困惑していた。
「それでアリス様、我が息子レイナルドを何卒宜しくお願い致します」
この新たなレイを頼むと言っているのは、レイの父ユルゲン・ヴァンフォール公爵である。
最初は優しくて気のいいおじさんと思っていたがアリスだったが、策士だったと気づいて頃には手遅れであった。
アリスは、最初は何も気づかずに楽しく会話していたが話は徐々に婚約の話になり、現在の逃げられない状況になってしまったのだ。
そんな苦しい状況の中、女王と王がアリスたちの方に近づいてくる。
「おぉ、これはユルゲンではないか。どうしたのだ。そんな真剣な顔をして」
「はい兄上、アリス様とレイとの婚約を認めていただきたいのです」
ヴァンフォール公爵は王であるガンフォルドの弟である。
彼は兄を支え続けており、絶大な信頼を受けているのだ。
「まぁ、それはどうしてなのかしら」
政治的な利用なのではないかと女王は遠回しにヴァンフォール公爵に問いただす。
その発言に王は気まずそうに、黙って目を逸らす。
(あれ、王様なんで目を逸らしているんですか。ここは、もう少し王様らしくしないのですか。明らかに女王様の尻に敷かれてないですか?)
女王は50歳、王は46歳であり、年上の女王に対して王は時々逆らえないのだ。
情けない状況ではあるが、この関係で20年以上愛し合ってきたのだから、バランスはしっかりと取れているのだ。
「はい義姉上、恥ずかしながら我が息子のレイナルドが、アリス様に一目惚れしてしまったのです。これは私の公爵としての地位を賭けることができるくらいの真実ですので信用していただけませんか?」
女王はユルゲンの目を見て目、真意を探る。
その鋭い目に、彼と王は冷や汗を流す。
「どうやら、嘘ではないようですね。アリスさんあなたはそれでいいですか」
(どうでしょうか。レイくんの思いも受け止めることができるのでしょうか。レイ君の見た目や、性格も申し分ないです。多少強引な性格も意外と悪くないのかも知れない。しかし、それだけで決めてしまっていいのでしょうか。こんな簡単に人生の大切なことを決めるなんて、本当にできるのでしょうか。優柔不断な自分が嫌になります。しかし、ここで決めなければレイ君を傷つけることになります)。
アリスは頭の中で何度も何度も考えるが答えはでない。
愛するということは簡単なことではないのだ。
「アリス、レイのことを嫌いか。そこまで深く考えるな。貴族の婚約は、第一印象で決めて一年くらいお互いの相性を確認するものだ。だから、お前はレイに合って嫌いだと思ったか」
アルは優しくアリスの耳元でアドバイスをする。
アルはアリスが自分のことで気を使っているのを知っている。
しかし、この国のためにはこうする他ないのだ。
アリスを独り占めしたいのは本音だ。
しかし、アリスも大切だが、
この国もそれだけ大切だ。
だからアルは、自分を押し殺すのだ。
この国の未来を憂いる者として――
「それで、どうなのですかアリスさん」
女王は再度、アリスに答えを問う。
そう、アリスの気持ちは決まっている。
「私はレイ君との婚約をー―」
その答えにアルは優しく微笑むのだった。
しかし、作法は分からないが、アリスと貴族たちの顔合わせを兼ねた立食形式パーティーであった。
舞踏会のように踊ったりはしない。
そもそも次期女王や王子は踊らないのだ。
この立食パーティは踊り子が踊っているのを眺めたり、料理人がゲストの目の前で料理を作ったり、大道芸を披露したりするのを眺めながら貴族や王族などが軽い雰囲気で話し合う社交場なのである。
そのために、食事はあくまで飾りであり、貴族同士の交流や結婚相手探しなどがメインである。
(うぅ、美味しそうなものだらけなのに手を出せないのは辛いです)
アリスの仕事は特に変わったことはなく各貴族との顔合わせをするだけである。
しかも今回は人数が多いので身分の低いものや当主以外は、アリスとアルに近づけない
アリスは現在、困惑していた。
「それでアリス様、我が息子レイナルドを何卒宜しくお願い致します」
この新たなレイを頼むと言っているのは、レイの父ユルゲン・ヴァンフォール公爵である。
最初は優しくて気のいいおじさんと思っていたがアリスだったが、策士だったと気づいて頃には手遅れであった。
アリスは、最初は何も気づかずに楽しく会話していたが話は徐々に婚約の話になり、現在の逃げられない状況になってしまったのだ。
そんな苦しい状況の中、女王と王がアリスたちの方に近づいてくる。
「おぉ、これはユルゲンではないか。どうしたのだ。そんな真剣な顔をして」
「はい兄上、アリス様とレイとの婚約を認めていただきたいのです」
ヴァンフォール公爵は王であるガンフォルドの弟である。
彼は兄を支え続けており、絶大な信頼を受けているのだ。
「まぁ、それはどうしてなのかしら」
政治的な利用なのではないかと女王は遠回しにヴァンフォール公爵に問いただす。
その発言に王は気まずそうに、黙って目を逸らす。
(あれ、王様なんで目を逸らしているんですか。ここは、もう少し王様らしくしないのですか。明らかに女王様の尻に敷かれてないですか?)
女王は50歳、王は46歳であり、年上の女王に対して王は時々逆らえないのだ。
情けない状況ではあるが、この関係で20年以上愛し合ってきたのだから、バランスはしっかりと取れているのだ。
「はい義姉上、恥ずかしながら我が息子のレイナルドが、アリス様に一目惚れしてしまったのです。これは私の公爵としての地位を賭けることができるくらいの真実ですので信用していただけませんか?」
女王はユルゲンの目を見て目、真意を探る。
その鋭い目に、彼と王は冷や汗を流す。
「どうやら、嘘ではないようですね。アリスさんあなたはそれでいいですか」
(どうでしょうか。レイくんの思いも受け止めることができるのでしょうか。レイ君の見た目や、性格も申し分ないです。多少強引な性格も意外と悪くないのかも知れない。しかし、それだけで決めてしまっていいのでしょうか。こんな簡単に人生の大切なことを決めるなんて、本当にできるのでしょうか。優柔不断な自分が嫌になります。しかし、ここで決めなければレイ君を傷つけることになります)。
アリスは頭の中で何度も何度も考えるが答えはでない。
愛するということは簡単なことではないのだ。
「アリス、レイのことを嫌いか。そこまで深く考えるな。貴族の婚約は、第一印象で決めて一年くらいお互いの相性を確認するものだ。だから、お前はレイに合って嫌いだと思ったか」
アルは優しくアリスの耳元でアドバイスをする。
アルはアリスが自分のことで気を使っているのを知っている。
しかし、この国のためにはこうする他ないのだ。
アリスを独り占めしたいのは本音だ。
しかし、アリスも大切だが、
この国もそれだけ大切だ。
だからアルは、自分を押し殺すのだ。
この国の未来を憂いる者として――
「それで、どうなのですかアリスさん」
女王は再度、アリスに答えを問う。
そう、アリスの気持ちは決まっている。
「私はレイ君との婚約をー―」
その答えにアルは優しく微笑むのだった。
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