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第1章 アルストロメリア編

第9話 アルの胸の内

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「痛いですよ。アル様。」

イケメンの男性はそういいながら腹部を抑えている。

(明らかにクリーンヒットしていましたが、大丈夫でしょうか?)

アリスがその男性を心配していると、アルの突き刺さるような視線がアリスを貫く。

(あれ、なんかすごく睨まれているんだけど、私何かしましたか?)

「それで、あなたは何物なんですか?」

アリスは身分不明の相手よりは、どこのだれかわかったほうが対策も立てられると考える。

「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕の名前はレイナルド・ヴァンフォール。ヴァンフォール公爵家長男だよ。年齢は18歳。アリスも次期女王なんだから気軽にレイって呼んでね。」


「レイ君ですか。よろしくお願いします。」

アリスは2歳年下のレイを呼び捨てにし、愛称で呼んでしまう。
これにはアルも眉を寄せて、アリスを睨む。
だが、アリスはアルの視線に気が付かない。

(またもや権力者です。この流れだと、なぜかいろいろとまずい気がします。どうにか、距離を取った関係を築かなければ。)

アルの時は、盛大にミスしてしまったが今回のアリスは違うのだ。

アリスは何かを言おうとするが、それはアルに遮られる。

「レイ、アリスに触れるならば婚約をしてからにしろ。」

(んっ? そこは、俺の女に触れるなとかじゃなくて? ん~ん、あんまり納得できないですね。この人は、こんなんだから私が好きかどうか迷うんですよ)

ここは私が、何か一言と考えていたアリスだったが、またもやアルの行動に妨げられる。

アルは急にアリスを抱きかかえる
これにはレイも疑問を浮かべる。

(あれアル様、なぜ私を抱きかかえるのですか。というか、片手で後頭部を抑えられているのですが……えっ? ちょっと何を? あれ、まさかこの展開は?)

アルはアリスを抱き上げ後頭部を掴み、そのふっくらとした唇に自らの唇を重ね合わせる。
それは優しく相手に思いを伝えるキスだった。

アルも好きな女を独り占めしたい、しかしこの国を思うと、そういう私情だけでは生きてはいけない。

この国のためにアルは、アリスが多くの夫を持つことを許したのだ。

しかし、それでも思いを抑えられなかった。
このままでは、ひと目惚れをした女に誰かが手を付けてしまうかもしれない。

そう思ったら、身体が無意識のうちに動いてしまったのだ。

アリスのファーストキスだけは自分のものにしたい。
その欲望がアルをこのような行動へと移らせたのだ。

キスは一瞬だったが、アリスは顔を真っ赤にし、鯉のように口をパクパクし、声のない悲鳴を上げる。

アリスも、まさかいきなりファーストキスを奪われるとは、思ってもいなかったのだ。

「なぁ…なにするんですかぁあああ!!!」

アリスはアルの腕の仲で抗議をするが、アルは真剣なまなざしでアリスの目を見つめる。

「俺は、お前が好きだ。そして、この国が好きだ。だから、この国のためにお前は多くの夫を迎え入れなければならない。」

アリスはアルの真剣な表情に少し冷静になって、
話を聞こうという気持ちになる。

(なんなんですか、この人は。それに胸がドキドキして苦しいです。これは、好きだからなのでしょうか。
それとも、キスをされたからなのでしょうか。何度も何度も考えるがドキドキで頭が回らず答えがわかりません)

アルもアリスが真剣な眼差しに答えるかのように、まっすぐアリスの目を見つめ返す。

「だが、他の男がお前に近づくと苦しいんだ。胸が締め付けられて気が狂いそうになる。だから、約束してくれ。俺の前では、俺だけを見てくれ」

アルは苦しそうに、心の叫びを伝えるかのようにアリスに胸の内を吐露する。

(あぁ、この人にこんな一面があったのですか。この胸が苦しいなぜでしょう。私はアルの思いから逃げていただけなのでしょう。前世でも好きな人からの告白を断り、再度、思いを伝えようとしたら病でなくなっていました。
もう、そんな思いは嫌です。実は独り身でいいなんて本音ではありません建前です。だけど、人を愛するのが怖いのです。好きな相手を失うのが怖いです。でも、一緒になれないのも怖い……)

だから私は言葉でなく行動で答えようそう思うアリス。


そしてアリスは、その答えとしてアルの唇に自らの唇を重ねるのだった。
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