仮面と刀の暗殺者

雨野じゃく

文字の大きさ
上 下
23 / 29
6/7章 再開

第1/3話 僕たちの進化と父の部屋

しおりを挟む
〈再開〉 

「さぁ行こう、杏。」 
「ええ!」 
僕たちは父の部屋へ向かう。 

凜の洗脳を止める。 

決着だ。
僕は父と対峙する。 

僕は杏を抱えた。 

「きゃ!」杏は驚いた。 

僕は床を踏みつけた。
レンガでできた床全体に、ヒビがはいる。 

「父の部屋はこの城の一番下にある。最短で行くよ!」 

床が崩れ始める。 

僕は杏を抱えたまま跳び、床が崩れ落ちるのを眺め、全て落ちた後、下の階に着地した。 

「あなた、本当にすごいのね。」 

「これくらいは。」 

僕は高揚していた。 
今の僕になら、できるかもしれない。父と、やり取りができるかもしれない。 

僕は扉の前に行き、蹴り破った。 
しかしそこには土人がいた。 

簡単には進めないか。 

僕は杏を下ろし、自分の背後に移動させた。
土人は三体、カイラクの仮面をつけている。手にはマシンガンを持っていた。 

「杏、伏せて」 

僕は刀を構える。
闇が僕をとらえる。 
しかし、もう、苦しくない。 

僕は斬撃を土人の足元に飛ばした。 

闇を帯びた斬撃は彼らの前ではじけ、砂ぼこりが舞いあがる。 

僕は彼らに跳んでいき、一体ずつ仮面に峰を入れる。彼らの仮面は割れ、土人は倒れた。 

「杏、もう大丈夫だよ」 

僕は伏せていた杏のもとへ移動し、手を差し伸べた。 

「一瞬ね…。」
杏は倒れた土人を見て言った。 
 


僕たちは先へ進んだ。 
目の前から足音が聞こえてくる。 

10体はいるな… 

「こっち。」 

僕は杏の手を引き、右側の壁を蹴り崩した。 

隣の部屋には何もなかった。
僕たちは部屋の中心に走り、僕は杏を抱え、床をけり崩した。 

下の階には医療的な道具が置いてあり、どれも古びていた。 

それをわき目に、僕たちは扉を開ける。 

しかし土人がいた。

四体。 

何回繰り返しになるかわからない。
僕はどうすればいい。
早く父のもとへ、凜のもとへ行かなければ。 

そう考えているうちにも、上から響く足音は大きくなっている。 

今は、移動するしかない。 

「杏、走るよ!」 

杏を下ろし、手を引く。
しかし彼女は動かない。 
「杏?」 

「湊、私を置いていって。」 

「そんなことできないよ、一緒に行こう。」 

「私がいると遅くなるわ、あの人を助けてるには、あなたは速くいった方がいいんでしょ?」
「そうだけど、君が狙われる可能性もある、それに君はもう不死身じゃない。」 

杏は僕を見つめている。 

「………そうね、ごめんなさい。時間をとらせてしまったわ。行きましょう。でも、もう少し 私を雑に扱ってちょうだい。できるだけでいいから。」 

「…うん、分かった。」 

僕は杏を背中に抱え、走り出した。 
杏は僕の背にしがみついている。 

僕は壁や床を壊したり、扉を突き破ったりしながら、下へと進んでいった。あるときは階段を下ったり、土人と交戦したり、トラップをよけたりした。 

移動を続けていると、部屋に出た。 

その部屋には、見覚えのあるベッドがあった。 
この部屋は… 

そこは母と暮らした部屋だった。そして初めて父と出会った部屋だ。 

次の部屋に移動しなければならなかったが、僕にはこの部屋を壊すことにためらいがあった。
この部屋を壊すことは、自分の肉体を自分で傷つけるような感覚だった。 

僕は懐かしさのおかげで、周囲に気を配れた。 

杏の力が弱くなっていた。 

「杏、大丈夫かい?」 

「…だい、大丈夫よ。」
杏は息を切らしながら微笑んだ。 

杏は、暴れまわる猛牛にしがみついていたようなものだった。いやそれよりも酷い。 

僕が歩き出そうとすると、僕にかかった杏の腕が、力強く、僕を絞めた。
 
「湊、ありがとう。でも私は大丈夫だから、急ぎましょう!」 

僕に決意を訴えるように、杏の心臓が僕を叩く。 
僕の心臓も速い。 

僕は部屋を眺めた。 

…ごめん。…ありがとう。 

僕はその部屋の床を壊した。 
 
部屋が崩れて下の階に移動すると廊下に降りた。
正面は壁で行き止まりだった。
しかし、見覚えのある光景だった。ここは3か月前、ホホエミの土人と一緒に来た場所だった。 

僕は壁を蹴り壊そうとしたが、やめて、正式に扉を開けることにした。 

なぜかはわからない。
父にまだ怯えているのか、逆に相手を怯えさせたくないのか、それ以外かもしれなかった。 

僕は、土人が押していた通りに、レンガを押し込んでいく。
押し込み終わると、やがて壁が、扉のように開いた。 

「杏、立てる?」 

「…えぇ。」

僕は杏を背中から降ろした。 

彼女は大丈夫だ、というような表情をしていたが、かえって強がっていることを強調させた。 

「君にはここで待っていてほしい。」 

この先に父がいる。
彼と戦闘になるかもしれなかった。 

杏は何も言わず、うなずいた。 

扉の先に、黒い扉が見える。 

僕は先へ進んだ。 
 
扉の前に、土人はいなかった。 
扉を開けて、部屋に入る。 
部屋の中央の階段の頂上に、人影が見えた。 



















その人影は、メイド服を着ているようだった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

行くゼ! 音弧野高校声優部

涼紀龍太朗
ライト文芸
 流介と太一の通う私立音弧野高校は勝利と男気を志向するという、時代を三周程遅れたマッチョな男子校。  そんな音弧野高で声優部を作ろうとする流介だったが、基本的にはスポーツ以外の部活は認められていない。しかし流介は、校長に声優部発足を直談判した!  同じ一年生にしてフィギュアスケートの国民的スター・氷堂を巻き込みつつ、果たして太一と流介は声優部を作ることができるのか否か?!

冀望島

クランキー
ホラー
この世の楽園とされるものの、良い噂と悪い噂が混在する正体不明の島「冀望島(きぼうじま)」。 そんな奇異な存在に興味を持った新人記者が、冀望島の正体を探るために潜入取材を試みるが・・・。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori
ライト文芸
 ――人は生きる限り、生き続ける限り、過去の幻を背負い歩いていく ※当作品は長い構想を経て生まれた”青春群像劇×近未来歴史ファンタジー”長編シリーズ小説です。 イントロダクション 西暦2059年 生き別れになった三つ子の魂が、18年の時を経て、今、巡り合う。 それは数奇な運命に導かれた、少年少女たちの長い一年のほんの始まりだった。 凛翔学園三年生、幼馴染三人組の一人、樋坂浩二(ひさかこうじ)、生き別れとなった三つ子の長女、稗田知枝(ひえだちえ)のダブル主人公で繰り広げられる、隠された厄災の真実に迫る一大青春群像劇。 EP2~震災のピアニスト~ ~あらすじ~ 凛翔学園(りんしょうがくえん)では各クラス毎に一つの部活動を行う。 樋坂浩二や稗田知枝のクラスの仲間入りをしたクラス委員長の八重塚羽月(やえづかはづき)はほとんどのクラスメイトが前年度、演劇クラスとして活動していることを知っていた。 クラスメイトの総意により、今年も演劇クラスとして部活申請を行った羽月のクラスであったが、同じ演劇クラスを希望したのが他に二クラスあることから、合同演劇発表会で一クラスを選ぶ三つ巴の発表会に発展する。 かつて樋坂浩二と恋仲であったクラス委員長の羽月は演劇のための脚本を仕上げるため、再び浩二と同じ時を過ごすことになる。 新たな転校生、複数の顔を持つ黒沢研二(くろさわけんじ)を加えて 演劇の舞台の準備が進んでいく中、語られる浩二と羽月の恋愛の思い出 羽月が脚本化した演劇“震災のピアニスト” 主役に任命された転校生の”稗田知枝”と”黒沢研二” 演劇クラスを巡って立ち塞がる他クラスの存在 交錯するそれぞれの想いが、一つの演劇の中でかつてない最高の舞台を作り上げる。 ※エピソード2開始です!近未来の世界観で巻き起こる、エピソード1よりさらに濃密になった青春ドラマをお楽しみください! 表紙イラスト:麻mia様 タイトルロゴ:ささきと様

後宮の下賜姫様

四宮 あか
ライト文芸
薬屋では、国試という国を挙げての祭りにちっともうまみがない。 商魂たくましい母方の血を強く譲り受けたリンメイは、得意の饅頭を使い金を稼ぐことを思いついた。 試験に悩み胃が痛む若者には胃腸にいい薬を練りこんだものを。 クマがひどい若者には、よく眠れる薬草を練りこんだものを。 饅頭を売るだけではなく、薬屋としてもちゃんとやれることはやったから、流石に文句のつけようもないでしょう。 これで、薬屋の跡取りは私で決まったな!と思ったときに。 リンメイのもとに、後宮に上がるようにお達しがきたからさぁ大変。好きな男を市井において、一年どうか待っていてとリンメイは後宮に入った。 今日から毎日20時更新します。 予約ミスで29話とんでおりましたすみません。

フリー台本と短編小説置き場

きなこ
ライト文芸
自作のフリー台本を思いつきで綴って行こうと思います。 短編小説としても楽しんで頂けたらと思います。 ご使用の際は、作品のどこかに"リンク"か、"作者きなこ"と入れていただけると幸いです。

処理中です...