8 / 29
2/7章 出会い
第2/7話 僕たちの刀と仮面の暗殺の失敗
しおりを挟む
「任務………完了」
僕は荒い呼吸で、刀を鞘に押し込む。
刀が鞘から抜けだそうともがく。
その間、黒い霧のような塊があふれ、僕を取り込むように体に纏わりついてくる。
さらに刀は、僕の思考に憎悪を注ぎ込んでくる。
父からもらった仮面が、それを抑える。
シュウゥゥゥと大きな音を立て、光っている。
暴走するわけにはいかないという意識はあったが、僕の中の悪が膨張して、早く発散したいという衝動が、その意識を凌駕していた。
すべてをぶちまけてしまいたい。
破壊してしまいたい。
そうすれば報われるという期待がある。
しかし仮面も抵抗する。
ここで暴れてはいけない、破壊してはいけない。
彼女の死体を追ってはいけない。
任務は終わった。
「うっぐぅ、苦しい…!、気持ち悪い…。」
僕の内臓はせりあがりながらも、僕の頭は痺れているような、浮かんでいるような感覚だった。
「坊ちゃま!」
痛覚ではない痛みにも襲われていた。僕の内側が、僕に攻撃する。
人を殺した後の刀は、狂暴だった。
刀も、仮面も、僕を乗っ取ろうと、対立している。
器である僕を超えて膨張する。僕は抑えるのに必死だった。
僕は泉の近くで転がりながら、体の内側から噴出しようとするマグマを抑え込む作業を繰り返していた。
その間、凜は声をかけ続けてくれた。
そのおかげで、意識を保ち、暴走せずにいられた。
数分間、その状態だった。
僕は落ち着き、仮面の浮遊感を感じてきた後、仮面を外し、地面に置いた。
そしてあおむけになった。
見上げた空は美しかった。
「坊ちゃま…お疲れ様です…。」
僕の横にある仮面からの声は、涙ぐんでいた。
「………お疲れさま。ありがとう。」
「坊ちゃま…その、こんな時ですが…、いえ、今だからこそ。 この仕事を、終わりにしませんか。」
「凜、何回も言ってるけど、僕には無理だ。今日わかったよ、僕は父にはかなわない。逃げることもできない。もし、そんなことはあり得ないけど、そうするとしても、どうやって父と戦うか、どうやって逃げて、どう生活していけばいいかわからないんだ。わからない。そんな僕と、君を一緒にはいさせられない。」
「坊ちゃまにはできます。戦闘の実力は…互角だと思います。BOSSは最近、年を取られました。能力は下がっているものと思われます。証拠に…土人たちの動きに変化があります。BOSSの魔法の効果が薄れているのかと…。」
土人の変化には僕も気づいていたが、凜も気づいていたのは驚きだった。
しかし彼女は、僕より組織と近かった。
凜はこの組織の情報を僕よりも持っている。
「だけど…それでも、いや、僕は…」
「それならやはり逃げましょう!私は自分で自分の身を守れます。この組織内で坊ちゃまに勝てる相手などいません。BOSSが自ら出向くことは…」
「いや、父が自ら出向くことはある。一度、僕を、そして母を追っている。」
「っ………。」
僕の過去を知っているため、凜は黙ってしまった。
ぱしゃっ
泉から音が聞こえた。
僕は跳ね起き、水辺から距離をとる。
僕は音の方を注視した。
「坊ちゃま…?」
と凜の声。
水辺には、這い上がろうとするガラスのような手が見えた。
僕は刀を鞘に納めたまま、構えた。
仮面をしていないことに気づき、地面からもぎ取って装着した。
腕が泉から、這い上がってきた後、縦半分のティアラが見えた。
ターゲットで間違いなかった。
濡れて艶を増した金色の髪、純白の破れたドレス、その片膝からでた細い脚。
這い出てくる度に美しいものが現れた。
全身が出たことを確認し、僕は距離を詰めた。
そして刀を振り下ろしす。
ターゲットは、刀を肩の肉で受け止めた。
僕は硬直した。
「いたい! ちょっとあんた!素人!?ちゃんと人殺したことある!?」
僕は荒い呼吸で、刀を鞘に押し込む。
刀が鞘から抜けだそうともがく。
その間、黒い霧のような塊があふれ、僕を取り込むように体に纏わりついてくる。
さらに刀は、僕の思考に憎悪を注ぎ込んでくる。
父からもらった仮面が、それを抑える。
シュウゥゥゥと大きな音を立て、光っている。
暴走するわけにはいかないという意識はあったが、僕の中の悪が膨張して、早く発散したいという衝動が、その意識を凌駕していた。
すべてをぶちまけてしまいたい。
破壊してしまいたい。
そうすれば報われるという期待がある。
しかし仮面も抵抗する。
ここで暴れてはいけない、破壊してはいけない。
彼女の死体を追ってはいけない。
任務は終わった。
「うっぐぅ、苦しい…!、気持ち悪い…。」
僕の内臓はせりあがりながらも、僕の頭は痺れているような、浮かんでいるような感覚だった。
「坊ちゃま!」
痛覚ではない痛みにも襲われていた。僕の内側が、僕に攻撃する。
人を殺した後の刀は、狂暴だった。
刀も、仮面も、僕を乗っ取ろうと、対立している。
器である僕を超えて膨張する。僕は抑えるのに必死だった。
僕は泉の近くで転がりながら、体の内側から噴出しようとするマグマを抑え込む作業を繰り返していた。
その間、凜は声をかけ続けてくれた。
そのおかげで、意識を保ち、暴走せずにいられた。
数分間、その状態だった。
僕は落ち着き、仮面の浮遊感を感じてきた後、仮面を外し、地面に置いた。
そしてあおむけになった。
見上げた空は美しかった。
「坊ちゃま…お疲れ様です…。」
僕の横にある仮面からの声は、涙ぐんでいた。
「………お疲れさま。ありがとう。」
「坊ちゃま…その、こんな時ですが…、いえ、今だからこそ。 この仕事を、終わりにしませんか。」
「凜、何回も言ってるけど、僕には無理だ。今日わかったよ、僕は父にはかなわない。逃げることもできない。もし、そんなことはあり得ないけど、そうするとしても、どうやって父と戦うか、どうやって逃げて、どう生活していけばいいかわからないんだ。わからない。そんな僕と、君を一緒にはいさせられない。」
「坊ちゃまにはできます。戦闘の実力は…互角だと思います。BOSSは最近、年を取られました。能力は下がっているものと思われます。証拠に…土人たちの動きに変化があります。BOSSの魔法の効果が薄れているのかと…。」
土人の変化には僕も気づいていたが、凜も気づいていたのは驚きだった。
しかし彼女は、僕より組織と近かった。
凜はこの組織の情報を僕よりも持っている。
「だけど…それでも、いや、僕は…」
「それならやはり逃げましょう!私は自分で自分の身を守れます。この組織内で坊ちゃまに勝てる相手などいません。BOSSが自ら出向くことは…」
「いや、父が自ら出向くことはある。一度、僕を、そして母を追っている。」
「っ………。」
僕の過去を知っているため、凜は黙ってしまった。
ぱしゃっ
泉から音が聞こえた。
僕は跳ね起き、水辺から距離をとる。
僕は音の方を注視した。
「坊ちゃま…?」
と凜の声。
水辺には、這い上がろうとするガラスのような手が見えた。
僕は刀を鞘に納めたまま、構えた。
仮面をしていないことに気づき、地面からもぎ取って装着した。
腕が泉から、這い上がってきた後、縦半分のティアラが見えた。
ターゲットで間違いなかった。
濡れて艶を増した金色の髪、純白の破れたドレス、その片膝からでた細い脚。
這い出てくる度に美しいものが現れた。
全身が出たことを確認し、僕は距離を詰めた。
そして刀を振り下ろしす。
ターゲットは、刀を肩の肉で受け止めた。
僕は硬直した。
「いたい! ちょっとあんた!素人!?ちゃんと人殺したことある!?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
形而上の愛
羽衣石ゐお
ライト文芸
『高専共通システムに登録されているパスワードの有効期限が近づいています。パスワードを変更してください。』
そんなメールを無視し続けていたある日、高専生の東雲秀一は結瀬山を散歩していると驟雨に遭い、通りかかった四阿で雨止みを待っていると、ひとりの女性に出会う。
「私を……見たことはありませんか」
そんな奇怪なことを言い出した女性の美貌に、東雲は心を確かに惹かれてゆく。しかしそれが原因で、彼が持ち前の虚言癖によって遁走してきたものたちと、再び向かい合うことになるのだった。
ある梅雨を境に始まった物語は、無事エンドロールに向かうのだろうか。心苦しい、ひと夏の青春文学。
余命-24h
安崎依代@『絶華の契り』1/31発売決定
ライト文芸
【書籍化しました! 好評発売中!!】
『砂状病(さじょうびょう)』もしくは『失踪病』。
致死率100パーセント、病に気付くのは死んだ後。
罹患した人間に自覚症状はなく、ある日突然、体が砂のように崩れて消える。
検体が残らず自覚症状のある患者も発見されないため、感染ルートの特定も、特効薬の開発もされていない。
全世界で症例が報告されているが、何分死体が残らないため、正確な症例数は特定されていない。
世界はこの病にじわじわと確実に侵食されつつあったが、現実味のない話を受け止めきれない人々は、知識はあるがどこか遠い話としてこの病気を受け入れつつあった。
この病には、罹患した人間とその周囲だけが知っている、ある大きな特徴があった。
『発症して体が崩れたのち、24時間だけ、生前と同じ姿で、己が望んだ場所で行動することができる』
あなたは、人生が終わってしまった後に残された24時間で、誰と、どこで、何を成しますか?
砂になって消えた人々が、余命『マイナス』24時間で紡ぐ、最期の最後の物語。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる