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1/7章 始まり
第5話 僕たちの暗殺の始まり
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父に命令を言い渡された後、僕は部屋を出た。
父は僕に何も言わず、なでるのをやめた。
行け、という事だと僕は解釈し、膝立ちに戻り、頭を下げた。
そして部屋を出た。
そこから記憶はなく、気が付いたら目の前に、凜が立っていた。
「おかえりなさいませ、坊ちゃま。」
凜はお辞儀をし、何も言わず、僕にほほえんだ。
「ただいま」
僕はそうつぶやくと、任務に向かうために部屋を見渡した。しかし、凜が準備を終わらせていた。
「坊ちゃま、これから任務に向かっていただきます。………私が言うまでもないと思いますが、この刀はぎりぎりまで抜かないでおいてください。回を増すごとに強力になっていると思われますので。」
凜は刀を片手に持って僕に近づき、もう片方の手で僕の首筋そして頬に、布を当ててくれた。
僕は自分の首から血が流れていることを忘れていた。
「わかった。ありがとう。」
そう言って僕は、凜から刀を受け取り、腰に装着した。
僕が外界の扉の正面に歩いていくと、凜は扉を開けた。
扉の外は夜で、冷たい風が吹き荒れていた。風が僕の部屋に入り込んでくる。
空を見上げると、星々が無数に煌めいていた。
この城は、山脈の頂上にあり、この部屋は城の頂上にあった。街からは、およそ3400メートル、地上からは800メートルの高さがある。
見下ろすと、樹林が一面に輝く。僕は普段この景色を眺めると、心が癒された。
しかし今は癒しではなく、高揚している。
もし………コートを広げなければ…。
僕は想像する。
僕の口角は上がっていった。
見上げると、星々が煌めいている。なぜだろう、僕は彼らに、呼ばれているのではないか。
「坊ちゃま、私がサポートしますので、仮面をお付けになってください。」
凜の言葉に、僕ははっとする。
強風が部屋にねじり込んでくるため、彼女の声は大きく、白銀の髪が乱れていた。
僕は殺しに行かなくては。
僕は仮面をつけ、コートを身にまとった。
僕が仮面をあてがうと、それは淡い青色に光り、シュウゥと音を立てた。
仮面には、父によって魔法がかけられている。興奮した時や、何か不快になったときに着けると、落ち着ついた。頭が冴え、浮遊感を感じる。
そのとき仮面は、薄く光り、音を立てる。その反応は魔法が働いた証拠だった。
刀による浸食も、これで抑えていた。
普段、目的地へ飛ぶとき、まずコートを体に密着させて扉を降り、落ちながら風の流れをつかむ。
そして腕に纏ったコートをを水かきのように広げてから、風に乗って飛行する。
僕たちはこの外套を重宝していた。この装備の色は暗く、闇に紛れることが可能で、音はなく、高速で移動できる。
「ケーキを用意して待っております。…ご武運をお祈りしております。」
凜は頭を下げた。
僕は反応に困ってしまう。何を言ったらいいのか。
「ありがとう。」
僕はつぶやいた。
「じゃあ行ってくるよ」
僕は外と扉の境界部に足をかけ、凜の方を見た。
「行ってらっしゃいませ。」
凜は僕を見つめていた。
僕は仮面越しに、目だけで笑って返した。
そして空へと飛びこんだ。
父は僕に何も言わず、なでるのをやめた。
行け、という事だと僕は解釈し、膝立ちに戻り、頭を下げた。
そして部屋を出た。
そこから記憶はなく、気が付いたら目の前に、凜が立っていた。
「おかえりなさいませ、坊ちゃま。」
凜はお辞儀をし、何も言わず、僕にほほえんだ。
「ただいま」
僕はそうつぶやくと、任務に向かうために部屋を見渡した。しかし、凜が準備を終わらせていた。
「坊ちゃま、これから任務に向かっていただきます。………私が言うまでもないと思いますが、この刀はぎりぎりまで抜かないでおいてください。回を増すごとに強力になっていると思われますので。」
凜は刀を片手に持って僕に近づき、もう片方の手で僕の首筋そして頬に、布を当ててくれた。
僕は自分の首から血が流れていることを忘れていた。
「わかった。ありがとう。」
そう言って僕は、凜から刀を受け取り、腰に装着した。
僕が外界の扉の正面に歩いていくと、凜は扉を開けた。
扉の外は夜で、冷たい風が吹き荒れていた。風が僕の部屋に入り込んでくる。
空を見上げると、星々が無数に煌めいていた。
この城は、山脈の頂上にあり、この部屋は城の頂上にあった。街からは、およそ3400メートル、地上からは800メートルの高さがある。
見下ろすと、樹林が一面に輝く。僕は普段この景色を眺めると、心が癒された。
しかし今は癒しではなく、高揚している。
もし………コートを広げなければ…。
僕は想像する。
僕の口角は上がっていった。
見上げると、星々が煌めいている。なぜだろう、僕は彼らに、呼ばれているのではないか。
「坊ちゃま、私がサポートしますので、仮面をお付けになってください。」
凜の言葉に、僕ははっとする。
強風が部屋にねじり込んでくるため、彼女の声は大きく、白銀の髪が乱れていた。
僕は殺しに行かなくては。
僕は仮面をつけ、コートを身にまとった。
僕が仮面をあてがうと、それは淡い青色に光り、シュウゥと音を立てた。
仮面には、父によって魔法がかけられている。興奮した時や、何か不快になったときに着けると、落ち着ついた。頭が冴え、浮遊感を感じる。
そのとき仮面は、薄く光り、音を立てる。その反応は魔法が働いた証拠だった。
刀による浸食も、これで抑えていた。
普段、目的地へ飛ぶとき、まずコートを体に密着させて扉を降り、落ちながら風の流れをつかむ。
そして腕に纏ったコートをを水かきのように広げてから、風に乗って飛行する。
僕たちはこの外套を重宝していた。この装備の色は暗く、闇に紛れることが可能で、音はなく、高速で移動できる。
「ケーキを用意して待っております。…ご武運をお祈りしております。」
凜は頭を下げた。
僕は反応に困ってしまう。何を言ったらいいのか。
「ありがとう。」
僕はつぶやいた。
「じゃあ行ってくるよ」
僕は外と扉の境界部に足をかけ、凜の方を見た。
「行ってらっしゃいませ。」
凜は僕を見つめていた。
僕は仮面越しに、目だけで笑って返した。
そして空へと飛びこんだ。
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