【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません

Rohdea

文字の大きさ
18 / 29

18. 私の記憶

しおりを挟む


  そうして、日にちは流れあっという間にお祭りの前日になった。
  お祭りの日が近付くにつれて、人々の話題も祭りの事ばかりになり、王宮の人達もどこかソワソワしていて、街も随分と活気づいているのが分かる。

  (こうも盛り上がるのは開催されるのが毎年ではないからかしら?)

  祭りそのものは三日間行われるので、開催期間中に仕事がある人も周囲と相談して調整し、どこか一日でも参加出来る日を捻出したりするらしい。
  また、この期間は屋台もたくさん出て珍しい食べ物にも出会えるとか。
  私もワクワクする気持ちと不安な気持ちとが入り交じっていた。

  そして、渦中のドゥルモンテ国王夫妻は最終日にこっそりやって来る。
  
  (何も無ければ良いのだけど……)
  
「王宮の皆さん、ソワソワされていますね」
「もう明日ですからね……ああ、ユディット様は今回、花祭りに初めて参加されるとか」 
「そうなんです。実は……お祭りの事も今回、初めて知りました」

  講義の合間、リヴィン先生と明日からの花祭りについての話になった。
  王宮全体が浮かれた様子だから仕方がない。

「あぁ、そうですよね……ユディット様はこれまでは身体が弱かったから……」
「はい。どうやら周囲が私のことを気遣ってくれて黙っていたようなのです」

  きっと家族の皆は私に気を使って、今までのお祭りは思いっきり満喫出来なかったのかもしれない。
  だから、今回こそは心から楽しんで参加してくれたらいいな、と思った。

「そう言えば、何故“花祭り”なのですか?」

  私が先生に訊ねると説明してくれた。

「ちょうど気温が暖かくなるこの時期は、多くの花が咲く季節ですからね」
「ああ……」

  メインイベントとして、事前エントリー制で各自が育てた自慢の花をお披露目する品評会が行われるというのは聞いた。
  期間中の参加者の投票で一番を決めるらしい。

「一位のお花は王室に献上されるのですよね?」
「王室に……というよりは王妃様にですね」
「王妃様に……?」

  なので、王妃様がうっかり好きな花を公言していると、品評会に提出される花は同じものばかりになってしまうとか。

「ですので、ユディット様が王妃になられる際は、好きな花の種類は聞かれても黙っておく方が、後々お祭りは楽しめると思いますよ?」
「え!」

  (……私が王妃になる時……)
 
  それは、まだまだ先のことだけれど、何だかその響きが擽ったく感じた。

  (───バーナード様のために……ずっと彼の側にいられるように頑張るわ!)

  他にも祭りの期間は男女の出会いの場としても広く活用されていて、意中の異性に花を贈り見事カップルになるとそのお揃いの花を身に付けて一緒に祭りを楽しむ、とか。
  また、恋人募集中の人は白い花を身につけてお相手探しをする人もいるとか……
 
  (貴族はまだまだ政略結婚も多いので、お相手探しは平民に多いらしいけれど)

「ユディット様、花祭りの期間はお妃教育もお休みです。殿下とゆっくりお過ごしください」
「はい!」

  私は笑顔で頷いた。 


❋❋❋❋



「ユディット、お祭りが楽しみなんだね」
「……え?」
 
  今日も帰宅前だった私の所へ顔を出したバーナード様が突然そんなことを言い出した。
  しかも、何故か笑いを堪えている。
  もちろん、お祭りは楽しみではあるけれど顔には出さないようにしていたのに、どうして? と思った。

「ユディット、必死に顔に出さないようにしているよね?」
「うっ……」

  やっぱり、バーナード様には何でも見透かされてしまう。

「そういう時のユディットって必死で隠そうとしていて更に可愛いんだよね」
「バーナード様……」
「好きなものを好きだと、はっきり口にしてキラキラした顔で笑う君も好きだけど、照れくさくなって必死に隠そうとする君も好きだよ」
「も、もう!  バーナード様ったら…………あれ?」

  (好きなものを好きだとはっきり口にして───?)

「……」

  ───私ね、こんな身体だからいつもお父様とお母様やお兄様に心配かけてばかりなの。
  ───それなら私はお転婆すぎていつも皆に心配かけているわね!
  ───ふふふ、好きなものを好きだとはっきり口に出来て、行動出来るあなたが羨ましいわ。
  ───なら、一日でも早く元気になって私とたくさん遊びましょう?  私ね、元気になったユディにたくさん紹介して連れ回したい場所があるのよ!

「……」

  (え?  これ、誰と誰の会話?)

  ユディ……ユディット?  私……?

  ───ありがとう、ジュディス様!  楽しみにしているわ!  私、病気に負けたりしない!

  (……見ていてね?  私は絶対に元気になってみせる!  だから約束よ、ジュディス様…………って、ええっ?)

  ……ジュディス……様って言った?  
  もしかして、私が忘れているだけでユディットとジュディス王女は……知り合い?

  急に頭の中にそんな会話が流れ込んで来た。

  (そうよ。前に見た、私がジュディス王女になっていた夢でも“ユディ”という名前が出て来ていたじゃない……)
 
「……」
「ユディット?  急に黙り込んでしまったけれど、どうしたの?」

  バーナード様が心配そうに私の顔を覗き込む。

「……バーナード様……一つ、聞いてもいいです、か?」
「うん?」

  前の私なら、ジュディス王女の話題は、バーナード様を傷付けてしまうかもとか何とか言い訳をしてこのまま躊躇って聞くことはしなかったように思う。
  でも、今なら聞いてみてもいいような気がした。
  だから、私は顔を上げて、しっかりバーナード様の目を見つめて訊ねる。

「バーナード様。ユディットわたし、実はジュディス王女と面識……ありますか?」
「え?」

  バーナード様の顔が驚きでいっぱいになる。

「……ユディット?  どうしてそう思った……の?」

  そう聞き返すバーナード様の声が少し震えている気がする。
  それだけで何となく答えは分かった気がした。

「実は少し前から夢を……見たり、していました」
「夢?」

  バーナード様は少し怪訝そう。

「ですが、今は夢でなくて頭の中で会話が───」
「会話……?」
「……ジュディス様、ユディ……そう呼びあっている会話……が私の頭の中に」
「!」

  そのバーナード様の顔を見て、やっぱりそうなのだと確信する。
  そうなると……
  私はもう一つ、確認しなくてはいけない。

「バーナード様。もしかして、私には何か失くしている記憶がありますか?」
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

わかったわ、私が代役になればいいのね?[完]

風龍佳乃
恋愛
ブェールズ侯爵家に生まれたリディー。 しかしリディーは 「双子が産まれると家門が分裂する」 そんな言い伝えがありブェールズ夫婦は 妹のリディーをすぐにシュエル伯爵家の 養女として送り出したのだった。 リディーは13歳の時 姉のリディアーナが病に倒れたと 聞かされ初めて自分の生い立ちを知る。 そしてリディアーナは皇太子殿下の 婚約者候補だと知らされて葛藤する。 リディーは皇太子殿下からの依頼を 受けて姉に成り代わり 身代わりとしてリディアーナを演じる 事を選んだリディーに試練が待っていた。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

聖女になる道を選んだので 自分で幸せを見つけますね[完]

風龍佳乃
恋愛
公爵令嬢リディアは政略結婚で ハワードと一緒になったのだが 恋人であるケイティを優先させて リディアに屈辱的な態度を取っていた ハワードの子を宿したリディアだったが 彼の態度は相変わらずだ そして苦しんだリディアは決意する リディアは自ら薬を飲み 黄泉の世界で女神に出会った 神力を持っていた母そして アーリの神力を受け取り リディアは現聖女サーシャの助けを 借りながら新聖女として生きていく のだった

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

運命の秘薬 〜100年の時を超えて〜 [完]

風龍佳乃
恋愛
シャルパド王国に育った アリーリアはこの国の皇太子である エドアルドとの結婚式を終えたが 自分を蔑ろにした エドアルドを許す事が出来ず 自ら命をたってしまったのだった アリーリアの魂は彷徨い続けながら 100年後に蘇ったのだが… 再び出会ってしまったエドアルドの 生まれ変わり 彼も又、前世の記憶を持っていた。 アリーリアはエドアルドから離れようと するが運命は2人を離さなかったのだ 戸惑いながら生きるアリーリアは 生まれ変わった理由を知り驚いた そして今の自分を受け入れて 幸せを見つけたのだった。 ※ は前世の出来事(回想)です

【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね

祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」 婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。 ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。 その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。 「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」  ***** 全18話。 過剰なざまぁはありません。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

処理中です...