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勘違い女も突き進む ─ミリアンヌ─
しおりを挟む「そういう事だ……リーツェ、行こう」
「あ、フォレックス様」
そう言って連れ立って去って行くフォレックス様と悪役令嬢。
取り残された私とスチュアート様はその場に呆然と立ち尽くしていた。
…………はぁ?
今の何? 何でこんな事になってるの??
どういう事よ!
ちゃんと上手くいってたじゃないの。
なのに……どうしてこうなるの?
お祭りデートが失敗した私は、アレ……匂いを嗅いだ人を魅了する事が出来る香水の香りを強める事にした。
この香水は私の手作り。
ヒロインはどうやらそんな趣味を持っていた設定で、ゲームをプレイしている時は、そんな設定いる??
とか疑問に思ったわけだけど、実はこれが攻略を簡単にするチートアイテムだった。
ちなみに、医務室から拝借したのは無水エタノール。
足りなくなっちゃったのよね。
今のところ、誰からも何も言われてないからバレてないのだと思う!
(さすが私! こんな所でもゲーム補正が効いてるわ)
そうして、魅了の香水の香りを強めて使い始めた私は……もちろんスチュアート様に接近。
そしたらこれよ。
──ふふふ、やっぱりスチュアート様はチョロいわ。
頭、大丈夫? って聞きたいくらいの早さで変わってくれたわ。
もう好感度爆上がりじゃないの。さすがチートアイテム!
これ作った私も天才!
私に魅了されたスチュアート様はついに人前でも愛の言葉を囁いてくれるようになったし。
なんて順調なのかしら!
(これで、フォレックス様ルートも開放よ!)
そろそろフォレックス様も、兄が婚約者に見向きもしなくなり、代わりに想いを寄せる私が気になって気になって仕方がない頃。
さぁ、どうやって接近しようかしらと思っていたら、スチュアート様に口説かれている最中、ちょうどおあつらえ向きに悪役令嬢とフォレックス様が居たので、悪役令嬢を利用して可哀想な私を見てもらおうと試みた。
(悪役令嬢から私への虐めにもなるし、一石二鳥~)
──その結果がコレ。
意味不明! 何で私が足滑らせた事にされてんの?
いえ、もちろん転んだのはワザとよ?? でもね……
「スチュアート様、あの私」
「何なんだ、フォレックスの奴!」
とりあえず、スチュアート様に声をかけるも、フォレックス様の行動に憤っていて私の声は届いていないようだった。
こういう時は私を慰めなさいよ! ちょっと女心疎いのよね……この王子。
(そうよ、野次馬達は……)
そう思って辺りを見回すも、どうも皆よそよそしい。
分かりやすく目も逸らされた。
(あぁ、駄目だわ。これは早々に周囲も魅了していかないと……私の立場が悪くなる)
前回の人生では悪役令嬢を処刑に持っていく時に香水は大量に使ったけれど、今回はどうやらこんな所でも必要となるみたい。
追加が必要かしら?
そんな風に色々考えていたら、スチュアート様に声をかけられた。
「ミリアンヌ、ちょっといいか?」
「どうしました? スチュアート様」
フォレックス様への怒りは収まったみたいね。
それにしても、真面目な顔してどうしたのかしら?
「ミリアンヌ、俺は君が好きだ」
「……! ス、スチュアート様……」
(やったわ! このタイミングでの告白!)
あぁ、私はその告白に困っているフリをしなくてはね。
でも、私はこっそり隠れて拳を握る。
そう。このタイミングでの告白は、フォレックス様ルートが開放された事を示すの。
三角関係の始まりよ!
「もう、この気持ちは抑えられない」
「スチュアート様……ですがあなたには婚約者が……」
フォレックス様ルートに入るためにもここで頷くわけにはいかないのが、惜しい所よね。
「婚約者……リーツェの事か?」
「……えぇ」
私は悲しげに目を伏せる。この角度は大事!
「スチュアート様……リーツェ様がいる限り、私はお気持ちには答えられません……」
「リーツェの事は心配するな」
「ですが……」
「俺はどうしてもミリアンヌがいいんだ!」
んー、前回の人生はそれで良かったけど、今回はフォレックス様ルートに行くつもりだからね……
ごめんなさいね? スチュアート様。今回は頷くわけにはいかないの。
なので、ここの選択肢の正解は──保留、一択よ!
「少し時間を下さい……」
「ミリアンヌ! 俺は本気だ! 気持ちが固まるのを待ってるぞ!」
そう言ってスチュアート様が私の手を取る。
「ミリアンヌ、リーツェには気を付けろ」
「え? どうしてです?」
スチュアート様の言いたい事は分かっているけど、私は分からないフリをして首を傾げる。
「リーツェは俺にベタ惚れだからな。俺の気持ちがお前に向いていると知れば……何をしてくるか。さっきのがいい例だ」
「まぁ!」
「さっきは、フォレックスが邪魔をしたからあんな事になったが、その……本当はリーツェに突き飛ばされたのだろう?」
「……」
あはは! さすが単純な人ね~チョロいだけあるわ!
でも、嘘をつくと後々、厄介になるかもしれないのでここは濁すに限る。
「それは……言えません……」
「あぁ、ミリアンヌ! なんて心優しいんだ。君は」
「いえ……そんな事はありません」
「いいか、ミリアンヌ! リーツェに何かされたらどんな些細な事でも構わない。必ず俺に報告してくれ!」
スチュアート様が私の両肩を掴んでそう言う。
えぇ、そうね。知ってるわ。
あなたは、どんな些細な事でも大きな罪に変えてくれるものね!
「わ、分かりました」
「よし!」
私の返事にスチュアート様は満足そうな笑顔を浮かべた。
(けどね、悪役令嬢はさっさと排除しておきたいわね)
シナリオに無い展開のせいで今、フォレックス様は悪役令嬢の傍にいるみたいだし。
確実にこれからの私の攻略の邪魔になると思うのよね。
(あぁ、悪役令嬢だから仕方ないけど……本当に邪魔……)
まぁ、あの悪役令嬢はフォレックス様を無理やり従えているみたいだからね。
さっさと悪役令嬢から解放させてフォレックス様を救ってあげなくちゃ!
きっと、それがヒロインである私の役目。
香水と私の魅力で最短攻略を目指すわよ!!
よーし! まずはフォレックス様に接近ね。
待っててね、フォレックス様!!
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