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幕間② ─ミリアンヌ─
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まさかの、デートイベントが失敗した。
信じられない。こんな事ある?
どうしてこんな事になったのか、本当に意味が分からない。
スチュアート様との平民街でのお祭りデート。
これは、もちろん攻略必須イベントよ。
ゲーム内での会話で成功、失敗の可能性はあれど……そもそも攻略キャラがやって来ないで失敗ってどういう事よ!?
こんな失敗の仕方は聞いてない!
「お祭り?」
「そうです。スチュアート様もご存知かと思いますが、平民街で今度お祭りがあるんですよ!」
「行った事は無いな」
(そうでしょうよ……王子様なんだから)
「では、私とこっそり行きませんか?」
「こっそり?」
「そうです、お忍びです……楽しそうでしょう?」
「……!」
スチュアート様の目の色が行きたいと言っているような様子に変わったので、よし! と私は小さく拳を握り締めた。
そうして、スチュアート様とのお忍びデートが無事に今回も決定。
ここで、私は暴動事件に巻き込まれて人質になってしまうの。
スチュアート様に助けられるんだけど、負傷させてしまい……そのせいでお忍びデートが発覚。
それで、婚約者の自分を差し置いてデートしていた事に怒り狂った悪役令嬢の虐めが本格的に開始するってわけよ!
まぁ、ちょっと物騒なイベントだけど必ず起きてもらわなくては困るの。
このイベントでスチュアート様は“私を失いたくない大切な人”だって自覚するからね!
そんなスチュアート様の攻略は、今のところ、アレを使わなくても何とかなってるわ。
順調、順調~
そう思っていたのに。
待てど待てどもスチュアート様はやって来ない!
完全なる待ちぼうけ。
(どういう事よ、時間過ぎてるわよ!? これでは事件の時間になっちゃうじゃないの!)
スチュアート様がいなくて誰が私を助けてくれるというの!?
そんな焦りを覚えた時、悲鳴が聞こえた。
あぁ、ついに暴動が──……
と思ったのに。
「えぇ!? あっさり収束してるんだけど!?」
何故か私が人質に捕らわれることも無く、どこからともなく現れた大量の警備によって私の目の前であっさりと事件は沈静化し解決してしまった。
「はぁぁ? 有り得ない!」
(って、おかしいわね。こんなに警備っていたかしら……?)
こうして、スチュアート様は現れず暴動事件もあっさり終わりを迎え……まさかのイベントは失敗に終わった。
翌日、スチュアート様に問い質すと「仕事が……」と言われた。
誰よ、仕事なんて割り振ったのは!!
と、怒鳴りそうになってしまったわ。
(これでは、スチュアート様ルートの攻略が失敗するかもしれないじゃない!!)
本命としたフォレックス様ルートに辿り着くことなく、スチュアート様ルートで失敗なんて有り得ないわ!
それに、このままでは“悪役令嬢の嫉妬”が起こらないじゃないの!
悪役令嬢は私に嫉妬して私を虐めなくてはいけないのよ。
それが後に大きな罪となって処分されるのだから!
「仕方ないわね、念の為にスチュアート様にアレを使おうかしら」
アレ……そのアイテムは無事に作成出来たわ。
攻略をスムーズに進める為のゲーム内での必須アイテム。
これを作成するために私は入学式の日に足りなかった材料を手に入れる為、こっそり医務室に忍び込んだ。
その材料は医務室にもあったはずだと思い出したから。
そして、さらに医務室の先生は入学式に参加していたから、部屋が無人になる事を思い出し今しかないと思いこっそり拝借した。
(泥棒……かもしれないけど、ちょっと分けてもらっただけだもん!)
「最難関のフォレックス様の方でがっつり使おうと思ってたけど仕方ないわ」
ここでスチュアート様の攻略を失敗すればフォレックス様に辿り着けない。
それに、ただでさえフォレックス様はゲームと違う行動している。攻略は未知数だ。
「そもそも何で……フォレックス様は留学していないのかしら」
どうしてよ?
隠し攻略キャラの第2王子、フォレックス様はメインヒーローであるスチュアート様の双子の弟。
彼の攻略が最難関なのは、留学しているからだ。
乙女ゲームの攻略対象のくせに、ヒロインの側にいないキャラ。
スチュアート様との仲を深めていくと、海外の文化や歴史に興味があるヒロインに、スチュアート様がフォレックス様の留学している国へと連れて行ってくれる。
そこで出会ったヒロインとフォレックス様は一目で恋に落ちるの。
スチュアート様からも寄せられる想いと芽生えてしまったフォレックス様への想いに悩みながらも、フォレックス様と短い時間で愛を育んでいく、という時間も期間も限定的なフォレックス様ルート!
だけど。
そんなフォレックス様は何故か留学せずにこの国にいる。
おかげで、普通にスチュアート様から紹介されるというゲームにない出会いをしちゃったのよ。
まぁ、海外の文化にも歴史にも興味の無い“私”からすれば、スチュアート様の蘊蓄を聞かなくてすむから有り難かったけれど!
シナリオはめちゃくちゃだけど、スチュアート様を攻略すれば自ずとフォレックス様への道は開けるはず。
攻略方法の分からないフォレックス様はアレを使って私に夢中にさせて……ふふふ、完璧ね!
そうして今度こそ幸せになるのよ、私は!
信じられない。こんな事ある?
どうしてこんな事になったのか、本当に意味が分からない。
スチュアート様との平民街でのお祭りデート。
これは、もちろん攻略必須イベントよ。
ゲーム内での会話で成功、失敗の可能性はあれど……そもそも攻略キャラがやって来ないで失敗ってどういう事よ!?
こんな失敗の仕方は聞いてない!
「お祭り?」
「そうです。スチュアート様もご存知かと思いますが、平民街で今度お祭りがあるんですよ!」
「行った事は無いな」
(そうでしょうよ……王子様なんだから)
「では、私とこっそり行きませんか?」
「こっそり?」
「そうです、お忍びです……楽しそうでしょう?」
「……!」
スチュアート様の目の色が行きたいと言っているような様子に変わったので、よし! と私は小さく拳を握り締めた。
そうして、スチュアート様とのお忍びデートが無事に今回も決定。
ここで、私は暴動事件に巻き込まれて人質になってしまうの。
スチュアート様に助けられるんだけど、負傷させてしまい……そのせいでお忍びデートが発覚。
それで、婚約者の自分を差し置いてデートしていた事に怒り狂った悪役令嬢の虐めが本格的に開始するってわけよ!
まぁ、ちょっと物騒なイベントだけど必ず起きてもらわなくては困るの。
このイベントでスチュアート様は“私を失いたくない大切な人”だって自覚するからね!
そんなスチュアート様の攻略は、今のところ、アレを使わなくても何とかなってるわ。
順調、順調~
そう思っていたのに。
待てど待てどもスチュアート様はやって来ない!
完全なる待ちぼうけ。
(どういう事よ、時間過ぎてるわよ!? これでは事件の時間になっちゃうじゃないの!)
スチュアート様がいなくて誰が私を助けてくれるというの!?
そんな焦りを覚えた時、悲鳴が聞こえた。
あぁ、ついに暴動が──……
と思ったのに。
「えぇ!? あっさり収束してるんだけど!?」
何故か私が人質に捕らわれることも無く、どこからともなく現れた大量の警備によって私の目の前であっさりと事件は沈静化し解決してしまった。
「はぁぁ? 有り得ない!」
(って、おかしいわね。こんなに警備っていたかしら……?)
こうして、スチュアート様は現れず暴動事件もあっさり終わりを迎え……まさかのイベントは失敗に終わった。
翌日、スチュアート様に問い質すと「仕事が……」と言われた。
誰よ、仕事なんて割り振ったのは!!
と、怒鳴りそうになってしまったわ。
(これでは、スチュアート様ルートの攻略が失敗するかもしれないじゃない!!)
本命としたフォレックス様ルートに辿り着くことなく、スチュアート様ルートで失敗なんて有り得ないわ!
それに、このままでは“悪役令嬢の嫉妬”が起こらないじゃないの!
悪役令嬢は私に嫉妬して私を虐めなくてはいけないのよ。
それが後に大きな罪となって処分されるのだから!
「仕方ないわね、念の為にスチュアート様にアレを使おうかしら」
アレ……そのアイテムは無事に作成出来たわ。
攻略をスムーズに進める為のゲーム内での必須アイテム。
これを作成するために私は入学式の日に足りなかった材料を手に入れる為、こっそり医務室に忍び込んだ。
その材料は医務室にもあったはずだと思い出したから。
そして、さらに医務室の先生は入学式に参加していたから、部屋が無人になる事を思い出し今しかないと思いこっそり拝借した。
(泥棒……かもしれないけど、ちょっと分けてもらっただけだもん!)
「最難関のフォレックス様の方でがっつり使おうと思ってたけど仕方ないわ」
ここでスチュアート様の攻略を失敗すればフォレックス様に辿り着けない。
それに、ただでさえフォレックス様はゲームと違う行動している。攻略は未知数だ。
「そもそも何で……フォレックス様は留学していないのかしら」
どうしてよ?
隠し攻略キャラの第2王子、フォレックス様はメインヒーローであるスチュアート様の双子の弟。
彼の攻略が最難関なのは、留学しているからだ。
乙女ゲームの攻略対象のくせに、ヒロインの側にいないキャラ。
スチュアート様との仲を深めていくと、海外の文化や歴史に興味があるヒロインに、スチュアート様がフォレックス様の留学している国へと連れて行ってくれる。
そこで出会ったヒロインとフォレックス様は一目で恋に落ちるの。
スチュアート様からも寄せられる想いと芽生えてしまったフォレックス様への想いに悩みながらも、フォレックス様と短い時間で愛を育んでいく、という時間も期間も限定的なフォレックス様ルート!
だけど。
そんなフォレックス様は何故か留学せずにこの国にいる。
おかげで、普通にスチュアート様から紹介されるというゲームにない出会いをしちゃったのよ。
まぁ、海外の文化にも歴史にも興味の無い“私”からすれば、スチュアート様の蘊蓄を聞かなくてすむから有り難かったけれど!
シナリオはめちゃくちゃだけど、スチュアート様を攻略すれば自ずとフォレックス様への道は開けるはず。
攻略方法の分からないフォレックス様はアレを使って私に夢中にさせて……ふふふ、完璧ね!
そうして今度こそ幸せになるのよ、私は!
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