6 / 45
幕間 ─ミリアンヌ─
しおりを挟む「巻き戻ってる!? どういう事よ……!」
目が覚めた私は思わず叫び声をあげていた。
ここはかつて住んでた家で私の部屋だったところ。
(私はスチュアート様の計らいで王宮に部屋を与えられたはずなのに!)
何を好き好んで、またこんなあばら家に住まなくてはならないのよ!
「……だけど……本当に何で? 意味が分かんない」
混乱した私は頭を抱えた。
私、ミリアンヌはこの世界とは違う所で生きた記憶がある。
いわゆる、転生ってやつだ。
そして、転生先は乙女ゲームのヒロイン!
記憶が戻った時、自分が死ぬ直前までプレイしていたゲームのヒロイン転生って本当にあるのねと感動した。
だけど、ヒロイン転生だからって素直に喜んでるわけにもいかない。
これまたよくある話の中では、ヒロインは悪役令嬢にざまぁされてしまうパターンもあるからだ。
(このゲームの悪役令嬢と言えば、リーツェ・ミゼット公爵令嬢)
万が一、彼女も私と同じ記憶持ちだったら……と心配してしばらく観察してみたけれど、悪役令嬢は私と同じ転生者ではなさそうだった。
(イける! これは私が幸せになる物語!)
そう確信した私は、順調に物語を進めてメインヒーローの王子を落として、悪役令嬢のリーツェを断罪する事が出来たわ。
(やっぱりここは私の知ってるゲームの世界! そう思ったわ)
そんな悪役令嬢だった、リーツェ・ミゼットは、ゲームほど激しい動きをしてくれなかった。
現実はやはり違うのかも……と思い、いくつかの罪をでっち上げてやったわ。
一方で王子は面白いほど簡単に私に落ちてくれたし、全て上手くいったはずだった……
「そして、ラストはもちろんハッピーエンド。そのはずだったのに」
──ハッピーエンドになるはずだった私は何故かバッドエンドを迎えた。
「どうして私とスチュアート様が破滅に追いやられなくてはならなかったのよ!!」
今、思い出しても腹が立つ!
ちゃんとゲームのシナリオ通りに進んでいたはずなのに。
たった一人、ゲームと違う動きをしたあの男のせいで全てが崩れた。
「リーツェを返せ……そう言ってたけど何だったの。悪役令嬢とどんな関係だったのよ……」
シナリオには無い展開だった。
悪役令嬢を処分して何が悪かったの? ゲーム通りだったのよ??
最後に手を下したのはスチュアート様だったけど、あの処分を決めたのはちゃんと承認された事だったはずなのに。
悪役令嬢が死んだ後、あの男が動き出したらまるで皆、夢から覚めたかのように私達を糾弾し始めた。
「やっぱりあれって解けちゃったのよね……? どうしてかしら?」
スチュアート様もそう。
あんなに私を愛してくれてたのに……
おかげで、シナリオはめちゃくちゃになったわ。
「あぁぁ、もう!」
そして、気が付いたら1年前……そう、ゲームの開始前に巻き戻っていたわ。
「でも……これは、もう一度私にやり直しさせてくれるって事よね?」
今度こそ私にハッピーエンドを迎えさせてあげようって事に違いない。
なんて私に優しい世界なのかしら。
攻略している時に思ったけれど、この世界は主人公補正が強かったわ。
だから、きっと今回も……いえ、今回こそは上手く行く!
(前回の記憶もあるしね)
ふふふ、と笑いが込み上げてくる。
「だけど、今度は誰を攻略しようかしら」
メインヒーローが一番幸せになれる気がしたからスチュアート様に狙いを定めたけど、案外チョロくてつまらなかった。
「そうね、どうせなら最難関の隠しキャラの彼を狙うのもいいかもしれない」
そもそも、隠しキャラのあの男がおかしな事を言い出したから、シナリオが狂ったんだもの。
それなら、今世では彼を私の虜にしておけば邪魔はしないはず。
「スチュアート様を落とせばルートは開放されるから……スチュアート様をさっさと落としてルートに入ってしまえば……安泰よね」
もちろん、邪魔な悪役令嬢には当然今世も消えてもらう。
“虐められる可哀想な私”の為には必要な存在だけど、用が済んだらいらない。
「決めたわ! スチュアート様と隠しキャラ……フォレックス様を今世は狙う事にする!」
そうと決まったら、準備しないとね。
攻略キャラを落とすのに必須なアレも用意しておかないと。
あると無しでは攻略にかかる時間も違ってくる。
入学式まで、あと数日────
「あぁ、入学の日が楽しみだわ」
43
お気に入りに追加
4,681
あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか
れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。
婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。
両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。
バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。
*今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる