【完結】その溺愛は聞いてない! ~やり直しの二度目の人生は悪役令嬢なんてごめんです~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
4 / 45

4. 第2王子に会いに行く

しおりを挟む


  ──夢を見た。
  懐かしい、とても懐かしいまだ子供だった頃の夢……

  3人で無邪気にはしゃいでたあの頃の───


『ねぇ、リーツェ』
『なぁに?  フォレックスさま』
『リーツェは僕とスチュアートどっちが好き?』

  私は思ったわ。
  フォレックス様ったらなんて難しい質問をするのかしらって。

『2人とも好き。比べる事なんて出来ないもん』
『そっか……』

  そう答えた私にフォレックス様はちょっと悲しそうな顔をして俯いてしまったのよね……
  でも、フォレックス様はすぐに顔を上げて私の目を見て言った。

『なら、リーツェ。もしも僕が……』



─────……


「ん……眩しっ…………て、朝ね」

  朝の光で目が覚めた。
  牢屋生活の暗い所で過ごしていたせいか朝の光を浴びると目が覚めてしまう。
  ベッドから起き上がって少し身体を動かす。

「んー……懐かしい夢を見た気がする」

  3人で遊んでいる時にフォレックス様がちょっとだけ真面目な顔をして話しかけて来た……

「…………あれ?  あの後、フォレックス様はなんて言ったんだっけ……?」

  どうしてかしら? 
  記憶にモヤがかかったみたいに思い出せない。

  (すごくすごく大切な事を言っていたような気がするのに)




  そんな事を考えていたら扉がノックされる音が聞こえた。
  きっとシイラだわ。

  (ふふん、今日も私の方が先に起きたわ!  きっと驚くわね!)

  時が戻ってからの私は早起きなのよ!

「おはようございます、お嬢様。起きー……」
「おはよう、シイラ!」
「お、お嬢様……!  まさか、今日も起きていらっしゃる!?」
「えぇ、起こされる前に起きたわ!」

  どうよ?
  と、得意げな顔をして私はシイラを見る。
  そんなシイラは、

「あぁ、本当にこんな日が来るなんて……神様に感謝致します……」

  と、神様に感謝を述べ始めてしまった。

  (そ、そんなに!?)

  ちょっとだけ複雑な気持ちにさせられた。

  だけど、……これほど嬉しい事は無い。この事に関しては時を遡れた事に素直に感謝出来る。
  何故ならシイラは……もうすぐ……

  そこまで考えてハッと気付く。

  (ちょっと待って?  のは、自分の事だけでなくてもいいはずよね?  私が動いたら変わる?)

「お嬢様も成長するものなんですねぇ」
「!」

  シイラがそう言いながら心から嬉しそうに笑う。
  
  (前の人生全てを振り返っても初めて見たかもしれないわ……シイラのこんな笑顔)

  こんな風に笑う人だったのね……

「……い、いいから、さっさと朝の支度をして頂戴!」
「えぇ、勿論ですとも!」

  何だか気恥ずかしくて高飛車な物言いになってしまった気がするのにシイラは嬉しそうに支度を始めた。

  そんなシイラの手によって朝の支度をされながら、私は頭の中で過去の記憶を必死に探る。

  (私、今ならシイラを救えるかもしれない)





***




  シイラの事は、まだもう少しだけ時間があるので対策を練る必要があるとして……今一番の問題は……

 (フォレックス様には……話を聞くだけよ。それだけ……)

  そう心に決めて学園に着くと馬車を降りる。
  そして校舎へと向かって歩き出す。

「おはようございます、リーツェ様」
「えぇ、おはよう」
「今日もお綺麗ですね」
「ありがとう」

  そんなお決まりの会話を繰り広げながら、私はある場所へと向かう。

  (普段、教室にはあまりいないのだと前の人生で聞いた事がある)

  何となくにいる気がするのよね。
  そんな事を考えながら、私は目的の場所に辿り着きそっと扉を開ける。

  ───いた!  

  間違いない。フォレックス様だわ。
  屋上ここにいると思ったのよ。だってフォレックス様は空を見るのが好きだから。

  フォレックス様は寝っ転がって空を見ていた。
  スチュアート様と同じ金色の髪が日に透けてキラキラと輝いていて思わず見惚れた。

「……」

  寝そべっているなんて……王子様が何をしているのですか!
  本来ならそう言うべき所なのでしょうけど、この方の場合は何故か許せてしまうのよね……

  (スチュアート様なら絶対にやらないわね。むしろフォレックス様を叱りそう)

  双子なのに随分と違う二人なのよね。
  そんな事を考えつつ私は深呼吸を一つしてから、そっと声をかけた。

「フォレックス様」

  その声にフォレックス様がピクリと反応を示す。
  そして声の主を確かめる様にゆっくりと起き上がり私の方に顔を向けた。

「……リーツェ」

  そう呟くフォレックス様と目が合った。

「……」
「……」

  (すごく久しぶりに顔を見た気がするわ)

  フォレックス様の顔をこんなまじまじと見るのはいつ以来かしら?
  前の人生では、彼は留学していたから最期の時も会えなかった。

「珍しい事もあるんだな……何の用だ?」
「……突然、ごめんなさい。聞きたい事がありましてお邪魔させてもらいました」
「俺に?」
「はい」
「……」

  フォレックス様が無言で身体を動かしたので、これは座れの合図だと思い私は隣にハンカチを敷いてそっと腰かけた。

「……」
「……」

  そして、沈黙。
  私達はいつもこう。うまく話せない。
  からフォレックス様は私に対してよそよそしくなって、私達はうまく話せなくなってしまった。

  昔みたいな笑顔は見せてくれない。
  多分、私はあの日、彼に嫌われてしまった……そんな気がしている。

  (そんな気持ちがあるから彼と話をする時には緊張するようになってしまったのよね……)

  だから会うのを躊躇ってしまった。

  (留学のお供は私だけでは無いからそれでも構わないと思ったけれど、フォレックス様からすれば迷惑だっただろうから取り止めで良かったのかも)


「…………それで?  俺に聞きたい事とは?」

  沈黙を破ったのはフォレックス様だった。

「あ、はい。その……父からフォレックス様が留学を取り止めたと聞きました」
「……」
「そ、それで、わ、私はどうしてもその取り止めた理由が気になってしまって……」

  しどろもどろになりながらもどうにか伝える。

「何でそんな事が知りたい?」

  そりゃそう思うわよね……本来なら私には関係無い話だもの。

「えっと、出来れば私も一緒に留学したかったからです」
「えっ!?」

  フォレックス様の声が裏返った。
  これは相当驚いて、いる……?

  (あぁ、私なんかが本気で留学して勉強する気なのか?  って驚き……いえ、お前なんかに着いてこられたら迷惑だった……の驚きという可能性も……)

「リーツェ、分かってて言ってるのか?  それはの留学だったんだぞ?」
  
  (ほら!  やっぱり……)

「……もちろん分かっていますよ」
「俺はスチュアートじゃない」

  (ん??  あれ?  思ってたのと違う?)

「……?  当たり前じゃないですか」
「…………!」

  フォレックス様は何を言ってるのかしら。
  首を傾げながらした私のその返事を聞いたフォレックス様は、驚きと何故かどこか泣きそうな……そんな表情を浮かべた。


しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

嫌われ者の悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

深月カナメ
恋愛
婚約者のオルフレット殿下とメアリスさんが 抱き合う姿を目撃して倒れた後から。 私ことロレッテは殿下の心の声が聞こえる様になりました。 のんびり更新。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

処理中です...