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1. 婚約破棄されて処刑されました
しおりを挟む「リーツェ! お前は、ここにいるミリアンヌを平民だからと言う理由で不当に虐め陥れたと言うじゃないか! もう我慢ならん! お前とは婚約破棄だ! 俺は真実の恋を見つけたんだ!! その相手はお前では無い!!」
とあるパーティーの最中、この国の第1王子である、スチュアート様が大事な話があると言って皆を集めさせると突然声を張り上げこう言った。
(──え? どうして私がこんな事を言われているの……?)
突然のその言葉に、今まさに名指しされた私、リーツェは混乱した。
意味が分からないわ。
頭の中の混乱は酷かったものの私は前に進み出てこう答える。
「……お言葉ですが。まず、私はそこのミリアンヌさんを不当に虐めたなどという事実はございません」
その言葉にスチュアート殿下が眉間に皺を寄せる。
「何だと!?」
「確かに、彼女が平民であるが故に、貴族社会の事情に疎かった為、苦言を呈した事は一度や二度ではありません。ですが、それはあくまでも常識の範囲で……の事」
「何?」
「ち、違います!! そんな優しいものではありませんでした。私は本当に……嫌がらせを受けました……」
「ミリアンヌがそう言ってるではないか!! 彼女は勇気を持って俺にそう話してくれたんだぞ!!」
ミリアンヌさんは、私の言葉にえーんと殿下に泣きついた。
「……」
(これは何? 何が起きているの? そして今、目の前で私を責めたてているのは本当にスチュアート様なの?)
私の知っているスチュアート様はこんな事を言う人では無かったのに……
怒りなのか悲しみなのかよく分からない感情が私の中を駆け巡る。
だって、苦言の一つや二つくらい言いたくもなるじゃない?
ミリアンヌさんは、私という正式な婚約者のいるスチュアート様に人目もはばからず近寄ってはベタベタと触れて……
平民ならその距離感は普通なのかもしれないけれど、貴族社会は違うのよ?
「スチュアート様、本当に私は嫌がらせなど行っていないのです」
「では、ミリアンヌが嘘をついていると?」
「そう……ですわ」
私のその言葉に殿下は「リーツェにはがっかりだよ」そう言った。
(がっかり?)
「素直に自分の罪を認めれば、情状酌量の余地はあったものの……」
「……?」
「リーツェ、お前がミリアンヌにした事は虐めの範疇を超えて殺人未遂と言っても過言では無い!」
「さ、殺人!? ですから私は……」
「ミリアンヌが階段から突き落とされ大怪我をした所は俺も立ち会ったからな」
「!」
確かに数ヶ月前に彼女は階段から落下したと言って怪我をしていた。
(スチュアート様は、何故か彼女は怪我をして大変そうだからな、とか何とか言って寄り添っていた……)
「その突き落とした犯人はお前だろう!」
「言いがかりです! だってその日の私は……」
「あぁ、リーツェ。確かにお前は実行犯では無い。それは別にいる。だがな、その者を捕まえて尋問したところ白状したよ、全てお前の命令だったとな!」
私の命令?
いったい私がいつそんな事を───……
「その他にも証拠はたくさんあるぞ! お前は公爵令嬢という恵まれた立場を使ってー……」
……あぁ、何だか更に色々言われているけれどもう全ての言葉が遠くに聞こえる。
反論する気力を無くした私はその場に崩れ落ちた。
「お前の処分は追って伝える。それまでは牢屋で反省し頭を冷やすんだな」
──ただただ混乱し何が何だかよく分からないまま、私は牢屋に繋がれ尋問を受けた。
何も答える事の出来ない私には厳しい毎日だった。
(このまま公爵家からも勘当されて修道院に入れられるか国外追放……かしら?)
どちらにせよ、貴族令嬢として生きていく事はもう叶わない。
牢屋に来てからよく分かる。
今までの当たり前の生活がいかに贅沢三昧だったか。
……キレイなドレスを着て美味しいものを食べて、友人とお茶会を開きお喋りに花を咲かす……
そんな事を考えていたらスチュアート様がやって来た。
ミリアンヌさんも一緒だった。
(嫌な組み合わせ……)
「リーツェ」
「スチュアート様」
「お前の処分が決定したよ」
「!」
修道院行きでも国外追放でも、ここから出られるならもう何でもいい!
……だけど、そんな私の希望は殿下に差し出された物によって儚くも打ち砕かれる。
「こ、これは?」
声が震える。
(ど、どうして?)
「見て分からないか? 毒杯だよ」
「……っ!」
外に出られるどころか……私に……死んで償え……そう言うの?
あるのか無いのかも分からない罪なのに!?
殿下は公爵家もこの事に合意している事や何故、この処分なのかをつらつら述べていたけれど、もう私の耳には全く入って来なかった。
(きっと、私の存在が邪魔なだけ……だから消される……そういう事なんだわ)
悔しいのか悲しいのか分からない気持ちだけが残った。
そうして、意識が朦朧として事切れる寸前に聞こえた言葉は……
「なぁ、リーツェ。知ってたか? ミリアンヌによるとお前のような女は“悪役令嬢”と言うそうだ」
「そうよ、悪事を働く令嬢で、“悪役令嬢”よ」
「……」
「さようなら、悪役令嬢さん!」
どこか嬉しそうなミリアンヌさんの声……
「あぁ、まさにピッタリな呼び名だな……お前のような奴はまさに悪役令嬢だ!」
───最期に聞いた言葉はスチュアート様のこんな言葉だった。
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