【完結】ついでに婚約破棄される事がお役目のモブ令嬢に転生したはずでしたのに ~あなたなんて要りません!~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
41 / 43

第39話 目が覚めたら

しおりを挟む


  グレイ様と長い長いキスをたくさんしていたら、頭の中がぼうっとしてきて……
  何となくそこから先の記憶は曖昧。
 
  ───ふっかふかのベッドが気持ちいい~
  ───それから温かくて幸せ~

  フワフワした気持ちでそんな事をぼんやり考えていた。

『──好きだよ、クロエ』

  さらに、そんな愛しのグレイ様の声までもが耳元で聞こえてきて、もう胸がいっぱい!
  “とってもとっても幸せ”
  そう思いながら、グレイ様が大好きですって私も応えた────




「…………え?  寝ちゃっていた!?」

   パチッと目を覚ました私は、慌てて起き上がる。
   夢と現実が頭の中でごちゃごちゃになっていた。

「えっと?  グレイ様に部屋に連れ込まれた後は、話をして気持ちを通わせて……」

  頭の中にある出来事を一つ一つ整理しようと口に出していってみる。
  
「その後は、グレイ様から長くて甘~いキスをされて、離れたと思ったらまた、キスをして、それからもキスをして……キスをして、キスをして、キスを、して…………?  あれ?」

  困った事にその後の記憶が“キスをして”しかないわ。
  これはどういう事かしら?  
  でも、さすがに回数が多すぎるからきっと一部は私の願望……夢よね!  と思うことにした。
  でも、もしかしてそんなにも私は欲求不満で飢えていたの?  そう思うと少し恥ずかしい……

  そんな事を考えながら、私はそっと自分の唇に指で触れる。

  (初めてのキスの相手が“好きな人”で良かった……)

  グレイ様の顔を思い浮かべて嬉しくて微笑んだその時、ようやく目の前の存在に気付いた。

「……!?  グ、グレイ様?」
「……」

  …………いつからそこにいたのか。
  グレイ様は私の前で石像のように固まっていた。そして、その顔は赤い。真っ赤だった。

  (何で無言でそこにいるのーー!?)

  ずっと見ていたの?  とか、何で真っ赤なの?  とか、色々疑問が浮かぶけれど、最大の疑問は“何で動かないの?”  

「グレイ様?」
「……」
「グーレーイー様ー?」
「……」

  駄目ね。ピクリとも反応しないわ。
  悩んだ私は、せっかくなので普段だったら口に出来ない事を言ってみようかしらと思った。

「グレイ様ーー」
「……」

  やっぱり、呼びかけても反応は無い。では、いくわよ!  私は息を思いっきり吸う。

「……グレイソン!」
「──はっ!」
「え?  ……きゃっ!?」
「───クロエ!?」

  グレイ様が急に動いたからビックリしてベットから落ちそうになってしまった。
  そこをすかさず目を覚ました(と思われる)グレイ様が支えてくれた。

「だ、大丈夫か?」
「は、はい……ありがとう、ございます……」

  そのままギュッと私を抱き込むグレイ様。

「……ビックリした。愛しのクロエの可愛い声で“グレイソン”って呼ばれたかと思ってハッとしたらクロエがベッドから落ちそうになっていた」
「えっと……」
  
  なんだか間抜けすぎて笑って誤魔化すことしか出来ない。
  そんな私に向かってグレイ様はまた甘く微笑む。そして、どことなく嬉しそう。

「愛称で呼ばれるのもいいけど、呼び捨てにされるのもいいね。特別感が増す」
「え?  で、ですが、ふ、不敬では……?」
「まさか!  クロエは特別だ。これからも、気にせずどんどん呼んでくれて構わない」

  私だけ特別……
  その言葉に頬が熱を持ち、また胸がキュンとする。

「…………また!  私の前でなんて可愛い顔をするんだ」
「え?」
「ダメだ。こんなの……また、止まらなくなる……」
「グ、グレイ……さ」

  そう言って、再びギラギラした目になったグレイ様に唇を塞がれ、そのまま私はベッドに押し倒された。

「クロエ……愛している。私の花嫁になってくれ」
「……あ」
  
  グレイ様はそう言って唇だけじゃなく、頬に額にとたくさんのキスを落とす。
  その一つ一つから“愛”が伝わって来る。

「でも、クロエは、貴族ではなくなり平民になった自分では私の妃になれない……そう思っている」
「は、はい……」

  だって、この国の決まりで王族の元に平民が輿入れする事は許されていない。
  かろうじて、(当主の許しがあれば)貴族との結婚が許されるかどうか……だ。
  まぁ、それも子爵や男爵くらいまでだけど。

「君をどこぞの家の養子にして私の妻……妃とする事は可能だ」
「……あ!  そ、れは……」

  私が言葉を返そうとすると、グレイ様はそっと優しく私の口を塞ぐ。

「私はクロエの言いたい気持ちは分かっているつもりだよ」
「……っ」
「だって、クロエは“道具”なんかじゃないからね。クロエは私が愛する、とびっきり可愛くて賢くて強くて……でも、ちょっと鈍い女性だから」
「グレイ……さま」

  ちょっと鈍いって何だろうと思いつつ、今はまずその先が聞きたい。
  目が合ったグレイ様は優しく笑った。

「クロエは貴族の養子になってまた、道具のように扱われるのは嫌……なのだろう?」
「!」

  (……本当に本当にこの方は……)

  怖いくらいに私の気持ちを汲み取ってくれる。

  それは図星だった。
  さんざん、元お父様あの人に道具扱いされて来た私は、いくら愛する人の元に嫁ぐためにという理由でもどこかの家に養子になることにはどうしても抵抗感がある。

「だからね、クロエ。私はずっと前から……君が自由を手に入れ、私の気持ちを受け入れてくれて、もし共にこの先の未来を歩んでくれるなら……と考えていた事がある」
「……え?」

  ──チュッ

「これからも、私はどんな事からも君を全力で守るよ。だから、私の“花嫁”になってくれ、クロエ」
「グレイ……様」

  二度目のプロポーズで気付いた。
  グレイ様は“妃”になってくれとは一言も言っていない、と。
  それは、つまり……

「ま、待ってください!  み、未練は……無い、のですか?」
「未練?  まさか!  もともとこうなるはずだったんだ」

  グレイ様はそう言って屈託なく笑う。
  その笑顔を見て思った。いえ、思い出した……
  この方は、弟と婚約者の幸せの為にあんな形で身を引こうとした人だった、と。
  私はそっと手を伸ばしてグレイ様の頬に触れる。

「クロエ……?」
「わ、私は……あなたが王子であっても……王子でなくても……いえ、どんな身分だったとしても……」
「うん?」

  グレイ様が不思議そうに小首を傾げた。

「グレイ様は私のヒーローで、私の一番大好きな人です……!」
「クロ……」
「グレイ様は、いつだって誰かのために……国のためにと自分の事を二の次にと考えているのかもしれないですけど……私の一番はあなたなんです!」
「……」
   
  グレイ様の驚いたまん丸の目が私に向けられている。
  私はグレイ様が好き!  だから、もっと自分を大切にして欲しい───

「だから、絶対に私があなたを幸せにしたい。いえ、して見せます!  ───グレイソン」

  私は力強い声でそう伝えた。
しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

処理中です...