【完結】自称“ヒロイン”の妹によると、私の婚約者は呪われているらしい ~婚約破棄される“悪役令嬢”だと言われました!~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
22 / 26

17. 呪いという呪縛が解ける時

しおりを挟む

「お、お姉様!  何してるの!!」

  呆然としていたリオーナがハッとして叫ぶ。
  その顔は真っ青で身体も震えていた。

「何って……」

  ──呪いを解くため……ううん、違うわね。もちろん、それもあるけれどー……

「アシュヴィン様の事が好きだからよ」

  好きだからこうして触れたい、触れて欲しい。
  決しておかしな事じゃないわよね?

「そ、そうじゃなくて!  アシュヴィン様の気持ちも聞いていないのに!  お姉様からだなんて……!  頬とは言え……な、なんて事を……!」
「……」

  リオーナの焦る様子から、キスは呪いを解く方法なのかしら?  とも一瞬思ったけれどこの焦り方は多分違うわね……
  私からアシュヴィン様にキスをした、という事に驚いている。

  (……リオーナって意外と純情?)

  人の婚約者を奪い取ろうと企んでいるわりにこの反応……
  本当によく分からない子になってしまったわ。
  私は心の中でため息を吐いた。

「あら、リオーナ。そうは言うけれど、アシュヴィン様の気持ちはー……」

  そこまで言いかけて私は目の前で真っ赤な顔になったアシュヴィン様を見る。

  (……自惚れでは無いわよね?  そんな顔をするんだもの。アシュヴィン様は……)

「……アシュヴィン様。アシュヴィン様は…………私の事を好きですか?」

   私はアシュヴィン様が呪いを解けていないのなら答えられないであろう事を分かった上でそう尋ねた。
   案の定、アシュヴィン様は明らかに動揺した。

「っ!  そ、それは……っ……」

  アシュヴィン様がまた言葉に詰まる。

  (やっぱり口に出来ないのね……そして、やっぱり呪いはまだ解けていない)

  告白をしてもダメ、頬にだけどキスをしてもダメ……
  呪いの解呪の基準とは何なのかしら?  
  まだ、私の愛が足りない??


「……分かっています、アシュヴィン様」
「ルファナ?」

  私はアシュヴィン様の両頬に手を伸ばしていつかのように固定する。
  ふふ、目も顔も逸らさせないわよ!
  私はしっかり彼の目を見つめて口を開く。

「私はアシュヴィン様が大好きです」
「ル、ルファナ……」
「アシュヴィン様が答えを口に出来ない事は……分かっています。それがあなたの“呪い”ですよね?」
「え……」

  驚くアシュヴィン様の瞳は揺れている。
  そんなアシュヴィン様すらも愛しく思えて私は微笑みながら続けた。

にする事が難しいのなら……の方法でアシュヴィン様の気持ちを教えて下さい」
「……言葉以外で?」
「えぇ、言葉以外で。もちろん言葉に出来る事が一番ですけれど、気持ちを伝える方法って言葉以外にもあるじゃないですか」
「それは……そうだが……」

  アシュヴィン様の呪いは気持ちを口に出来ない……のだと思う。
  でも、これまで手を繋いだり抱き締めたりする事は出来た。
  だから、態度で気持ちを示せないわけでは……無いはず。
  そう思ってのお願い。

「大丈夫です!  そんな顔をしないで下さい。アシュヴィン様にされて嫌な事など一つもありませんし、
「……ルファナ」

  アシュヴィン様が、私を抱き締める腕に力がこもる。
  その温もりからは間違えようの無い愛情が伝わって来る。

「ルファナ、俺は……俺もずっと君の事が………………っ」

  アシュヴィン様がそこまで言うと、そっと顔を近付けて来た。

  (え?  あれ!?)

  私はちょっと混乱した。

  (アシュヴィン様の事だからてっきり、もっとギューッと強く抱き締めてくれるくらいの態度を想像していたのに!?)

  そんな私の混乱など知る由もないアシュヴィン様と私の唇が重なる。



   ──あぁ、優しくて甘くて……
  初めて触れ合った唇はとっても幸せな味がする。




「ひぎゃっ!  ちょっ……ちょっと何して!  え、何で……待って……やめてぇ!?」

  まるで、このムードを壊すようなリオーナの悲鳴が聞こえた気がしたけれど、アシュヴィン様とのキスに酔いしれていた私はちっとも気にならなかった。








「……」
「……」



   ──おかしい。
  さっきから、アシュヴィン様がキスをやめる気配が全く無い。

「……っ、アシュ……」
「ん……ごめん……もっと」
「!」

  抱き締める力も一向に緩まないし、キスも止まらない。
  ちょっと苦しいけどそれを上回るくらいの嬉しさと幸せが込み上げてくる。


  (これがアシュヴィン様の私に対する気持ちの答えだと言うのなら)


  ──間違えようも無い。
  私は、アシュヴィン様に愛されている────……




「────好きだ」



  (え?)

  ようやく唇を離してくれたアシュヴィン様の声が聞こえた。

「……俺も、俺もずっと君が……ルファナの事が好きだった……」
「ア、アシュヴィン……様?」

  私が震える声で名前を呼ぶとアシュヴィン様が優しく微笑んだ。

「……ずっとルファナの事を想っていたよ…………何をどうしても口にする事が出来なかったけど」
「アシュ……アシュ、ヴィン様……」

  私の目から涙が溢れる。

「……ありがとう。俺の……こんな呪いを解こうとしてくれて」
「……」
「そして、やっぱりルファナ……君が解いてくれた……」

  涙が出すぎて声が出ない。
  そんな私をアシュヴィン様が愛しい目で見つめて、優しく涙を拭う。
  そして、涙の跡にキスを落としながら言った。

「ルファナはかっこいいのに、こういう所は可愛くて可愛くて……もう堪らない」
「……!?」
「君の全てが……愛しいよ、ルファナ」

  そう言ってアシュヴィン様はもう一度、私の唇にキスをする。



「…………夢を見ているみたいだ」

  アシュヴィン様が小さく呟いた。
 
「夢ではないです、夢になんてしないでください……」
「そうだな……」

  互いの温もりが夢ではないのだと教えてくれている。

「ルファナ」
「はい」
「…………これからは、今まで言えなかった分を、全部、全部君に伝えていく」
「はい……」
「だから、愛が重い!  なんて言って逃げないで欲しい」
「はい?」

  私が顔を上げるとアシュヴィン様と目が合った。
  
  ……もう、目は逸らされなかった。
  ちょっと不安そうだったけれど。

「……アシュヴィン様」
「…………うん」
「そんなの、望むところです!!」

  私が笑ってそう口にしたら、アシュヴィン様は一瞬、驚いた顔をしたけどやがて破顔した。

「……ルファナのそういう所も、その笑顔も…………大好きだ」
「私もです!」

  私達は互いにそう笑い合った。






「……はぁ?  どういう事よ……何なのこれ。違う……違う。おかしい……」

  
  その場には、お互いしか目の入らなくなった私達に唖然呆然とするリオーナがへたり込んでいた。


しおりを挟む
感想 242

あなたにおすすめの小説

王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。

window
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。 「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」 もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。 先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。 結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。 するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。 ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。

言いたいことは、それだけかしら?

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【彼のもう一つの顔を知るのは、婚約者であるこの私だけ……】 ある日突然、幼馴染でもあり婚約者の彼が訪ねて来た。そして「すまない、婚約解消してもらえないか?」と告げてきた。理由を聞いて納得したものの、どうにも気持ちが収まらない。そこで、私はある行動に出ることにした。私だけが知っている、彼の本性を暴くため―― * 短編です。あっさり終わります * 他サイトでも投稿中

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

あなたが幸せになるために

月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】乙女ゲームの男爵令嬢に転生したと思ったけれど勘違いでした

野々宮なつの
恋愛
男爵令嬢のエジェは幸運にも王都にある学院に通う機会を得る。 登校初日に前世を思い出し、既視感から乙女ゲームの世界では?と思い込んでしまう。 前世を思い出したきっかけは祖母の形見のブローチだと思ったエジェは、大学で魔道具の研究をしているライムントに助力を頼み込む。 前世、乙女ゲーム。 そんな理由からブローチを調べ始めたエジェだったが、調べていくうちにブローチには魔術がかかっていること。そして他国のハレムの妃の持ち物だったと知るのだがーー。 田舎で育った男爵令嬢が都会の暗黙のルールが分からず注意されたりしながらも、後輩の為にできることを頑張ったり自分の夢を見つけたり、そして恋もしたりするお話です。 婚約破棄されるけれど、ざまぁはありません。 ゆるふわファンタジー

婚約破棄させてください!

佐崎咲
恋愛
「ユージーン=エスライト! あなたとは婚約破棄させてもらうわ!」 「断る」 「なんでよ! 婚約破棄させてよ! お願いだから!」 伯爵令嬢の私、メイシアはユージーンとの婚約破棄を願い出たものの、即座に却下され戸惑っていた。 どうして? 彼は他に好きな人がいるはずなのに。 だから身を引こうと思ったのに。 意地っ張りで、かわいくない私となんて、結婚したくなんかないだろうと思ったのに。 ============ 第1~4話 メイシア視点 第5~9話 ユージーン視点  エピローグ ユージーンが好きすぎていつも逃げてしまうメイシアと、 その裏のユージーンの葛藤(答え合わせ的な)です。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

処理中です...