【完結】自称“ヒロイン”の妹によると、私の婚約者は呪われているらしい ~婚約破棄される“悪役令嬢”だと言われました!~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
6 / 26

6. 妹の頭の中を覗いてみたい

しおりを挟む

  あぁ、ドクドクと心臓が凄い早鐘を打っているわ。
  破裂しそう!

  (お願いだからリオーナが良いなんて言わないで!)


「先程……君の妹が俺を訪ねて教室にやって来た」
「え!」

  “パーティーには、君ではなくリオーナ嬢と行きたい”

  なんて言われるのを勝手に想像してしまっていたせいで、思わず拍子抜けしてしまう。

  (リオーナに感化され過ぎたわ……)

  そうよ……冷静に考えたらそんな話のはずが無いのに。
  だって、リオーナの言うところの“恋に落ちる”出会いは失敗しているんだもの。
  ならば今のところ、リオーナに交代する理由はどこにも無い。

「そ、それは、すみません。リオーナ……妹はいったい何の話を……?」
「……」

  私の質問にアシュヴィン様が、はぁ……とため息をつく。

「……王太子殿下の誕生日パーティーに自分も参加したい、と。姉である君ではなくパートナーを交代して自分を連れて行って欲しいと言いに来た」
「!!」


  私は驚きで息を呑む。
  ──あの子は何をしているの!

  リオーナは、まさかの直談判という実力行使に出ていた。

「ア、アシュヴィン様は……それで、何と……」

  私の声が震える。
 
「?  もちろん断ったが?」
「あ……」

  当たり前の事なのに、私は安堵していた。
  私は本当にリオーナの言う事を真に受け過ぎていたみたい。

「妹が、リオーナが本当に申し訳ございません。ご迷惑をおかけしました」
「……」
「妹はどうしても、パーティーに行きたかったようです……」

  凄い執念だ……なんて恐ろしい。
  だけど、まさか直談判するなんてあの子の思考回路はどうなっているの?

「てっきり…………んだ」
「はい?」

  アシュヴィン様がちょっと暗い顔をして小声で何かを言った。

「いや……俺は……君がパーティーに行くのが嫌で……頼んだのかと……」
「まぁ!  確かに私が殿下の誕生日パーティーに参加だなんて恐れ多い話ですけど、嫌だなんて事は……」
「そうではなくて!」
「?」

  珍しくアシュヴィン様がちょっと声を荒らげた。
  何なら顔もちょっと赤い。興奮しているから?
  そして、何と……?
  私が首を傾げていたら、アシュヴィン様はちょっと声を大きくして言った。

「き、君がとして参加するのが嫌だと言ったのかと思ったんだ!」
「へ?」

  そして一瞬だけ目が合ったけど、すぐに逸らされた。
  あぁ、もう! 何でよ!  どうしてそこで目を逸らすの!?

「アシュヴィン様っ!」
「……!?」

  私はちょっと強引にアシュヴィン様の両頬を掴んで強引に私の方へ向かせた。
  アシュヴィン様の目が大きく見開き、驚きで一杯の表情になっている。
  なんなら赤みも増したかも。

  (ふふ、アシュヴィン様ったらこんな顔も出来るのね?)

「いいですか?  私は、たとえ嫌だと思っても妹に頼むとかそんな事はしません!」
「……」
「それから、私はアシュヴィン様のパートナーが嫌だなんて思っていませんから、勝手に誤解しないで下さい!」
「……!」
「どうして勝手に決めつけたのですか?」
「……あ」

  アシュヴィン様は、よほど気まずかったのかまた目を逸らそうとするので、私は両頬を掴んだままもう一度叱り飛ばす。

「アシュヴィン様!  お願いですから逃げないでちゃんと私の目を見て答えて下さい!」
「す……すまない」

  アシュヴィン様の目が泳ぐ。

「……」
「リオーナ嬢が……本当は君が俺とパーティーに行くのを嫌がっている……そんな事を匂わせた発言をしていたから……信じてしまった……」
「!!」

  リオーナ!  あの子はそんな事まで……

「……その、いつも俺の君にしている態度は……そう思われても……仕方が無い……と思った……」
「え!  自覚がおありだったのですか?」
「……」

  アシュヴィン様がシュンと項垂れる。

  (か、可愛い……)

  リオーナが余計な発言をしていた事よりも、今、目の前の子犬みたいに項垂れたアシュヴィン様が可愛く見えて仕方ない。

  (アシュヴィン様って……)

  新たな面を知って思わず胸がときめく。

  もしかして、素っ気無いのも単なる不器用だからなのでは……?
  そんな気持ちがムクムクと湧いてくる。

  (あ……でも、違うわ。それだと顔合わせ以降の変化の説明にはならない。あの日は普通に会話をしていたもの)

  結局、素っ気無くなった理由はよく分からない。
  だけど──

「アシュヴィン様」
「……」
「イヤリングとネックレス、ありがとうございました」
「……!  あ、あれは……」

  えぇい!  まだ目を逸らそうとするのね!?
  私はまたまた強引にアシュヴィン様の顔を私に向けさせる。

「嬉しかったです!」
「!」

  だって、あなたのその瞳の色なのよ。
  偶然なのか敢えて選んでくれたのかは分からないけれど……私は嬉しかったの。

「あれらを身につけてパーティーに参加するのを私はとても楽しみにしているのです」
「…………っ!」

  私が微笑んでそう言ったら、アシュヴィン様は驚きの表情を浮かべた。
  そして小さくだけど「ありがとう」と言って頷いてくれた。

「……」

  ちょっと強引に迫った気はするけれど嫌がられなかったわ。
  やっぱりちゃんと話す事は大事ね!
  改めてそう思った。


  (そして、嫌われている……のは、私の思い込みだったのかも)

  
  何だかそう思えてしまって自然と口元が緩みそうになった。



◇◇◇




「リオーナ。どういう事か説明して!」
「……」
「黙っていないで、何とか言ったらどうなの?」

  そしてその日、帰宅して私はまずリオーナの部屋に向かい、リオーナのした事を問い詰める。
  アシュヴィン様の可愛い一面が見れて、嫌われていないかもという希望が見えたけれど、あんな風に迷惑をかけた事はどうしても許せない。

「だって、お姉様は今日までやっぱり元気なままで……このままじゃ、私はやっぱりパーティーに行けない」
「呼ばれていないのだから行けなくて当然でしょう?」
「そんなぁ……」

  私の言葉にリオーナが項垂れる。

「それなら、イベントはどうなるの?  王太子殿下に口説かれてアシュヴィン様に嫉妬されるという大事なイベントなのに!!」
「は?」
 
  王太子殿下に口説かれる?  

「リオーナ。さすがにそんな事は妄想でも言ってはいけないわ」
「妄想では無いわ!  本当に起きるのよ!  乙女の夢がつまったイベントよ?  お姉様にはそんな乙女心が分からないの?」
「……」

  不可抗力とはいえ、人の婚約者とパーティーに参加し、これまた婚約者持ちの王太子殿下に口説かれる事を乙女の夢がつまっていると言ってのけるとは!
  リオーナ。あなたの頭の中を覗いて見たいわ。

「そんな事を言うあなたをますます、パーティーに近付けるわけにはいかない」
「お姉様……酷い!」

  酷いのはどっち?  王太子殿下まで巻き込もうとしているなんて!




  ──ん?  ちょっと待って?




「…………ねぇ、リオーナ」
「なぁに?  お姉様」
「まさかとは思うけれど……王太子殿下までアシュヴィン様のように“呪われている”とか言わないわよね?」
「……」
  
  私は今になって思い出した。
  あの日、リオーナがおかしな言動を始めた日。
  確かにリオーナは言っていた。


  ──素敵な男性達と恋に落ちるの!

  と。
  男性達……あれは複数だった。

  まさか、その中に王太子殿下が含まれていたり…………

「そうよ、さすがお姉様。察しがいいのね!  王太子殿下もアシュヴィン様のように呪いにかかっているのよ!  そして私と恋に落ちるはずだった1人よ」

  私の質問にリオーナはにっこりと笑って答えた。



しおりを挟む
感想 242

あなたにおすすめの小説

王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。

window
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。 「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」 もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。 先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。 結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。 するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。 ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。

言いたいことは、それだけかしら?

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【彼のもう一つの顔を知るのは、婚約者であるこの私だけ……】 ある日突然、幼馴染でもあり婚約者の彼が訪ねて来た。そして「すまない、婚約解消してもらえないか?」と告げてきた。理由を聞いて納得したものの、どうにも気持ちが収まらない。そこで、私はある行動に出ることにした。私だけが知っている、彼の本性を暴くため―― * 短編です。あっさり終わります * 他サイトでも投稿中

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

あなたが幸せになるために

月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

処理中です...