【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

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22. 王子様の秘密

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  私の元へと駆け寄って来るエリィ様の顔付きが尋常では無かったので、これは確実に危害を加えられそうだわ……
  何てぼんやり考えた瞬間、

「きゃぁ!?」

  突然、何かに弾かれたかのようにエリィ様が転んだ。

「痛っ……!」
「……え?」

   ザワッ

  私も周囲も唖然とした。
  何で、エリィ様この人いきなり転んだの?

「くっ!  本当にアンタ、何なのよっ!!  ふざけないでよ!!」

  そう言いながらエリィ様は再び起き上がり、私に近付こうとするも……

  バシンッ
  
「きゃぁ!」

  またもや弾かれる。
  ドサッという音と共にエリィ様は再び尻もちを着く。

「な、何で、近付けないのよ!?  アンタ私に何をしたのよっ!」
「いや、私は何も……」

  私は首を振りながら答える。

「エリィ様が一人で勝手にすっ転んでいるだけですが?」
「なっ!」

  ……ぷっ!
  ……クスクス

  私の言葉に魅了の力の解けた周囲の人は笑いを堪え、当のエリィ様は屈辱で顔を真っ赤にして震え始めた。

  (だけど、どうして?)

  私は魔術に対して無効化の力は施しているけど、エリィ様自身を弾く力は持っていない──……

「あ!」

  そこで私は思い出した。
  そうよ!  私は今“アレ”を持っている。

  ───前に授業でルシアンから貰った“守護”の力が込められた魔石。

  私はそっと隠し持っていた魔石を取り出す。
  ルシアンへの気持ちを自覚してからは持ち歩くようにしていた。

  (そうだった。この石に込められた力は物理攻撃専用だった)

  あの時は何で物理?  と思ったものだけど……まさか、こんな形で助けられるなんて!

  (ルシアンに助けられたわ……)

  ───俺が絶対にお前を守るから

  ───魔術に関して俺はきっとお前の力には敵わない。それでも俺はどんな事からもお前を守りたいと思ってる

  ルシアンに言われた言葉が私の頭の中で甦る。
  すぐに駆けつける事が出来なくてもルシアンはこうして、私を守ってくれる。守ろうとしてくれるのだと思ったら胸が温かくなった。

  (ルシアン……)

「……離してよ!!  私が何をしたと言うのよっ!!」

  叫ぶようなエリィ様の声で、ハッと意識を元に戻す。
  そうだった。今は甘い想いに浸っている場合では無かった。
  そう思い直して、声のした方に顔を向けると、

  (捕まってる!)

  どうやら、エリィ様は三度目に私に向かおうと突進し、また弾かれ転んだ所をアレンディス殿下に捕らえられたようだった。

「これ以上、君の好き勝手にさせるわけにはいかないんでね」
「ひっ!?」
「君には色々と話を聞かなくてはいけないみたいだ」
「嫌、離して!」

  そう言い放つアレンディス殿下の瞳は今までに見た事が無いくらいとても冷たい。

「フィーリー!!」
「ルシアン!」

  そんな私の元にルシアンが駆け寄って来る。
  そして、そのまますごい力で抱きしめられた。

  (えぇぇ!?)

  きゃーー!?  なんて、黄色い悲鳴が会場内から上がるけれど、それどころじゃない。
  私の頭の中も大混乱中だ。

  ……ギュッ!
  ルシアンは強く強く私を抱きしめる。そして、その身体は少し震えているようにも感じた。

「すまない。まさかあの女がフィーリーに対して実力行使に出るとは思わなくて、完全に油断していた」

  そう口にするルシアンの声には悔しさが滲んでいる。

「大丈夫。でも、どうやらエリィ様、魅了の力をかけられなくなったのは、私の所為だと気付いたみたい」
「……無駄に勘だけはいいんだな」

  ルシアンはそう吐き捨てる。

「私は何とも無いわ。だって、守ってくれたんだもの…………あなたが」
「ん?  何か言ったか?」

  私の最後の言葉はとてもとても小さな声で言ったから、ルシアンには聞こえなかったみたい。
  ……恥ずかしいからそれでいい。

「そうだ、フィーリー。無効化の力を解いてくれ」
「え?  いいの?」
「大丈夫だ。あの女を連行する為に、アレンディスがスキルを使うから」
「殿下が?」

  ──そう言えば私、アレンディス殿下のスキルを知らないわ。

  よく分からないけど、ルシアンが大丈夫と言うのなら大丈夫なのだろうと判断し、私は会場内にかけていた無効化の力を解く。

「……うっ」
「フィーリー?」
「ルシアン、お願い。もう少し……このまま」
「……分かった。お疲れ、フィーリー」
「ん……」

  どっと力が抜けた私はそのままルシアンに身を任せる。
  ルシアンはそんな私を優しく抱きしめてくれた。

  (温かい……ホッとする)

  私が大丈夫そうだと分かったルシアンは、アレンディス殿下に向かって声をかける。

「アレンディス、大丈夫だ」
「分かった、ありがとう」

  ルシアンの声でアレンディス殿下は、エリィ様に向かって力を使った。

「え?  ちょっと何するの……!?  や、何これ、嘘……」

  エリィ様の困惑した声が聞こえて来たけど、何が起きたのか私にはよく分からない。

「これは秘密なんだが、アレンディスのスキルは“魔力封じ”なんだよ」
「え?」

  ルシアンが私の耳元でこっそりそう呟いた。

「……魔力封じって、精神干渉系の力と同じくらい危険視されている……」
「そうだ。だから、アレンディスのスキルは世間に公表されていないし、勝手に力を使う事も許されていない」
「え?」

  (ならば、今の状況は?)

「さらに付け加えると、その力のせいでアレンディスは普段から魔力制御の力をかけられて過ごしている」
「え!?」

  そんな事、知らなかった!
  って、世間に隠されていた秘密なのだから当然ではあるけれど……

「王族なだけあって力の強いアレンディスは魔力、スキル共に子供の頃が特に不安定でな。よく力を暴走させていた。そのせいで取られた措置なんだ」
「……殿下が王族なのにエリィ様の魅了の力にあっさりかかってしまったのは……」
「魔力制御のせいで、人並みの力しか使えなかったからだろうな」

  私はチラリとアレンディス殿下の方を見る。
  殿下は今も暴れるエリィ様を押さえ付けながら力をかけていた。

「さっき、殿下は勝手に力を使う事は許されていないって言っていたけれど、今は?」
「……」

  ルシアンが無言で首を横に振る。
  それはつまり、許可を得ていない事を表している。

「っ!」
「アレンディスは、この後どんな処分でも受けるという覚悟で力を使うと言い出した。俺にはその決意を止められなかった。実際、アレンディスの力を使う事がこの事態を早くに収束出来る事は確かだ……」
「……ルシアン」

  ──リシェリエ様!
  そうよ!  リシェリエ様はこの事態をどう受け止めているの?

  そう思ってリシェリエ様の方を見ると、覚悟を決めたような表情で殿下の事を見守っていた。
  何もかも分かっているそんな表情。

「離してぇーー、何で?  魔術も使えないぃぃ」

  エリィ様の泣き叫ぶような声が聞こえる。

「私の力がぁぁ……せっかく、せっかく魅了の力を手に入れたのにぃぃ……」

  (何を言っているのかしら?)

  アレンディス殿下によって魔力を封じられたエリィ様が連行されて行く。

「さて、俺達に出来る事はここまでだな」
「そうね」

  ルシアンの言葉に私が頷いていると、

「フィーリーさん、ルシアン様」
「リシェリエ様!」

  私達の元にリシェリエ様が近付いて来た。

「フィーリーさん、大丈夫?」
「大丈夫です、リシェリエ様も……」
「私も大丈夫よ」

  そう答えるリシェリエ様には少し疲労が見えるけど、確かに大丈夫そうだ。

「無事に浄化出来たみたいでホッとしているわ」
「リシェリエ様のお陰です!  本当にありがとうございました!」

  会場を見渡しながら安堵の表情を浮かべるリシェリエ様にお礼を伝えたら、首を横に振られた。

「お礼を言うのは私の方よ。あなた達がいてくれたから、こうして皆を元に戻す事が出来たのだもの」

  そう言って微笑むリシェリエ様の目線の先にはエリィ様を連行しているアレンディス殿下の姿。

「……私ね、本当にホッとしたの」
「え?」
「心のどこかで、殿下は魅了の力なんか関係なくエリィ様に惹かれているのかも、なんて思ってしまっていたから」
「リシェリエ様……」
「だから、目が覚めた後の殿下の行動に安心してしまったのよ。罰を受けるのは殿下なのにね……でも、私はこの先、殿下がどうなろうとも彼に着いて行くわ。そう決めたの」

  リシェリエ様は、ふふっと笑って、

「さて、もう行かなくちゃ。私も説明を求められているの、またね」

  と、だけ言って殿下の元へと向かって行く。

  ルシアンや私のした事は全てこっそり影で行った事。
  表向きはリシェリエ様が浄化を行ったとしか思われていないので、何故浄化の力を使ったのか説明する必要があるという事らしい。

「とは言っても、俺達もアレンディスには後で説明に行かないといけないな」
「そうね。殿下には私の無効化の力の事も話さないと」
「面倒だな」
「同感」

  私の力のせいで殿下はエリィ様を捕らえた時、すぐ魔力封じを行おうとしても出来なかったはず。
  ルシアンが私に無効化の力を解くようにと言ったのは殿下の命だったのだろう。

  何はともあれ、皆にかけられていた魅了は解くことが出来た。今回の件で拗れた人間関係をどうするのかはそれぞれの人達が行う事だ。

「フィーリー、お疲れ」
「……ルシアンも」

  とりあえず、私達は互いに健闘を讃えあった。

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