【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

文字の大きさ
17 / 25

17. 浄化の力を持った人

しおりを挟む


  の姿を見て最初に思ったのは、
  思っていたより元気そうで良かった……だった。

  ───そう。
  ジェームスさんがうっかり零した独り言によると、私達と同じ学院にいて“浄化”のスキルを持っている人物とは……

「いや、こちらこそ急に訪ねてすまない。身体の具合は大丈夫だろうか、リシェリエ嬢」

  リシェリエ様の事だった。

「そんな事は構わなくてよ。あの後、お父様からじっくり話を聞きましたわ。あなた達2人が私を助けてくれたのだと。本当にありがとう」
「……その件に関して俺は何の役にもたっていない。礼を言うならフィーリーに言ってくれ」

  ルシアンはそう言いながらチラリと私を見る。
  いや、そんな形でこっちにふられても困るんですけど!

「フィーリーさん……」

  ルシアンの言葉でリシェリエ様が私に向き合う。

「え、いや、そのリシェリエ様」
「フィーリーさん。いつもあなたにキツく当たっていた私を、見捨てるどころか助けてくださった事を感謝しています。本当にありがとう」
「!」

  そう言ってリシェリエ様は私に頭を下げた。
  いや、貴族の……いや、大貴族の公爵家のお嬢様が平民の私に頭を下げてしまっているじゃないの!
  これにはさすがに私も慌てる。

「か、顔を上げて下さい。リシェリエ様!  本当にお礼なんて良いですから」
「ですけど……」
「本当に!!」
「……」

   リシェリエ様は納得いかない顔をしながらも渋々した様子で頭を上げてくれた。その後も頭を下げる事はしなかったので、私はようやくホッと一息つく事が出来た。

「ルシアン様にも本当に申し訳なく思っていますわ」
「……何をだ?」
「私がフィーリーさんを度々呼び出しては、小言を申し上げていた事はご存知でしょう?  あなたも私に対して良い感情は持っていなかったはずですわ」
「……」

  ルシアンは何故か否定せず黙り込む。
  え?  もしかして、図星……?  私が攻撃されていたから?

  トクンッ

  (ま、また胸が……!)

  そんなルシアンの様子に怯む事なくリシェリエ様は続ける。

「お詫びとお礼と言っては何ですが……いずれ来る、ルシアン様が向かえるであろう困難な局面。“その時”が来た時は、我がラモニーグ公爵家、全面的にルシアン様を支持しお助けする事をここに誓いますわ」

  (何の話?)

  リシェリエ様がルシアンにとても重々しい発言をしていた。
  しかも、ルシアンに向けて言っているはずなのに何故か私の方にも視線を向けて来る。

「…………俺はまだ何も表明していないが?」
「……そうですわね。でも、決められたのでしょう?  そのお顔を見れば分かります。違いますか?」
「そうだな」
「ふふふ、それでは誓わせていただきますわ」

  (…………?)

  本当に2人は何の話をしているのかしら?
  さっぱり分からず首を傾げていると、それに気付いたルシアンが私に言った。

「フィーリーは知らなくていい……今は」
「え?」

  (今は?)

「……その話は今は置いておこうリシェリエ嬢。今日、こうして俺達が訪ねて来たのは別の頼みがあったからだ」
「頼み?  私に?」
「はっ!  そうでした。実は、リシェリエ様の力が必要なのです」
「はい?  私の力?」

  何事かと目を丸くしているリシェリエ様に、私達はエリィ様の魅了と思われるスキルの話から始めた。
  リシェリエ様は早いうちにエリィ様によって眠らされていたので今の状況を殆ど知らない。





「…………つまり、殿下や他の方々の様子がおかしくなったのは、あの方の魅了によるものだと仰るの?」
「俺達はそう思ってる」
「……!  なんて事を……」

  さすがにリシェリエ様も驚きが隠せないようだ。
  動揺している所に悪いけれど私達も確認しておかないといけない事がある。

「お聞きしたいのですが、リシェリエ様が眠りについていたのは魔力返しのせいでした。その魔力返しをして来た相手ってエリィ様ですよね?  あの日、お二人の間に何があったのですか?」
「!」
「何故、そんな事になったのですか?」
「……」

  私の質問にリシェリエ様は、苦痛そうな表情を浮かべて黙り込む。
  それでもゆっくりだけど口を開いてくれた。

「私は普段から身分も弁えずに学院で振る舞うエリィ様が許せず、何度か呼び出して注意をしておりましたわ」

  話し出したリシェリエ様の目は悲しそうだった。

「ですが、殿下を始めとして、彼女を慕う人が日に日に増えていきました。殿下と私はもともと、仲睦まじくしていたわけではありませんでしたが、私がずっと共に過ごし見て来た彼は、いくら何でもあんな暴言を吐く方ではありません。おかしいなと思っていたら……」
「エリィ様が、公爵家に訪ねて来たのですか?」

  リシェリエ様はコクリと頷く。

「彼女は私を挑発して来ました。殿下に愛されているのは私なのよ、と。愛されてもいない名ばかりの婚約者だなんてとっても可哀想ね……と」
「!」

  そう語るリシェリエ様の目には、涙が浮かび口惜しそうに唇を噛む。

「私、思わずカッとなってしまって、黙らせたくて闇の力で攻撃してしまいました。ですが、彼女は……」
「そのタイミングで魔力返しをして来た?」
「ええ……まるで待っていたかのようなタイミングでした」
「!」

  私とルシアンは顔を見合わせる。

「魔力返しをされたと分かった時、確かに彼女は笑っていましたわ」
「……え?」
「そうね、今思えば彼女は私が攻撃する事をのかもしれない。そしてまんまとそれに乗った私を嘲笑うかのような笑みだったわ」

  リシェリエ様はその時の事を思い出したのか身体が震えている。

「リシェリエ様、すみません」
「いいのよ」

  つまり、エリィ様はわざとリシェリエ様に攻撃するよう仕向けて、跳ね返させた?

「……あの女はリシェリエ嬢を眠らせたかったのか」
「ルシアン?」
「2人の属性は光と闇。反属性同士だ。やりにくい事も多い。だから、魔力の高い闇の使い手であるリシェリエ嬢の事が邪魔だったんじゃないか?」

  ルシアンが考え込みながらそう口にする。確かにそれは、一理ある。
  だけど、リシェリエ様を魅了して、仲間にするのではなくわざわざ眠らせたかったのは何故なの?
  魅了して自分の元に取り込んでしまった方が何かと便利なはず。
  そうしなかったのは何故?
  リシェリエ様が邪魔だったその理由は───

  はっ!

  そこまで考えて今日ここに来た目的を思い出す。

  二人が反しているのは属性だけじゃない。
  リシェリエ様は、エリィ様のスキルをも相殺出来る可能性を秘めている!

「ねぇ、ルシアン。もしかしてだけれど、エリィ様がリシェリエ様を眠らせたのは属性のせいではなくて、スキルのせいかもしれない」
「あ!」
「スキル?」

  私の言葉にリシェリエ様は意味が分からなくて首を傾げているけれど、ルシアンは思い当たったようだ。

「エリィ様は、どこで知ったかは分からないけれど、リシェリエ様のスキルを知っていたのかも。だから、リシェリエ様が邪魔で眠らせたかった」

  (むしろ、二度と目覚め無くてもいいと思っていた気もする)

「……自分の力を消せる力を持った人間を、例え魅了出来たとしても側に置いておきたくは無い……という事か」
「おそらく」

  うっかりどこかで力を使われて解除されたら大変だもの。
  私とルシアンはお互い顔を見合わせ頷き合う。

「いったいなんの話ですの?」

  話についていけていないリシェリエ様に私はもう一度伝える。

「……リシェリエ様。あなたの力……スキルが必要なんです。どうか私達に協力していただけませんか?」

 
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。  婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。しかしその虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。  虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!? 【この作品は、別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

待鳥園子
恋愛
若き侯爵ジョサイアは結婚式直前、愛し合っていたはずの婚約者に駆け落ちされてしまった。 急遽の結婚相手にと縁談がきた伯爵令嬢レニエラは、以前夜会中に婚約破棄されてしまった曰く付きの令嬢として知られていた。 間に合わせで自分と結婚することになった彼に同情したレニエラは「私を愛して欲しいなどと、大それたことは望んでおりません」とキッパリと宣言。 元々結婚せずに一人生きていくため実業家になろうとしていたので、これは一年間だけの契約結婚にしようとジョサイアに持ち掛ける。 愛していないはずの契約妻なのに、異様な熱量でレニエラを大事にしてくれる夫ジョサイア。それは、彼の元婚約者が何かおかしかったのではないかと、次第にレニエラは疑い出すのだが……。 また傷付くのが怖くて先回りして強がりを言ってしまう意地っ張り妻が、元婚約者に妙な常識を植え付けられ愛し方が完全におかしい夫に溺愛される物語。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚

奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]  努力をしてきたつもりでした。  でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。  できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。  でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。  私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。  諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。  田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。  大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ! 完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。 崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド 元婚家の自業自得ざまぁ有りです。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位 2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位 2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位 2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位 2022/09/28……連載開始

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...