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───そこからの騒ぎは凄かった。
ローゼ様自身の処罰は、最も厳しい所という噂の極寒の地にある修道院行きとなったのだけど、世の中を騒がせたのは、エイドリアンさんが書いた記事の方だった。
エイドリアンさんはかなり容赦なく細かい事まで記事にした為、あの日のヴォクシー伯爵家のパーティー参加者達も大きなダメージを負っていた。
記事が発売になって数日後。
夜、寝室で軽く、スリフニという名のイチャイチャをした後、ジョシュアが「そう言えば……」と、語り出した。
フニフニ……
「エンディン殿が言うには王女殿下が大変ショックを受けているとか」
「あぁ……そうよね」
いくら他人に口で言われても、ローゼ様の事を信じてなかなか納得出来なかったけれど、実際に処罰を受けている事や記事にまでなっている事でようやく自覚したという事かしら?
「王女殿下の様子があまりにもおかしかったから、普段は放任している陛下達もさすがに気になったようで、この記事は陛下達の知る所になったよ」
ジョシュアはあっさりした様子でそう口にするけれど、私は思う。
(絶対、それ計算のうちよね?)
ジョシュアはこうなる事を分かっていて、記事を書かせたとしか思えない。
もちろん記事にはお茶会の件も書かれていて、ローゼ様を止めなかった王女殿下の行動には当然批判が集まっている。
「陛下達は、この件を重く受け止めていて、王女は暫く謹慎。まぁ、当然だけどローゼとの接触は永遠に禁止。エンディン殿との結婚も早まるかもって話。そうなったら多分、もう公の場に出てくる事は無いかもね」
「あれ? ……婚約破棄にはならないの?」
こういう場合、結婚話も流れそうな気がするけれど……
「王女自身がエンディン殿との結婚を渋っていたからね。あわよくば解消したがっていた」
「……つまり、ある意味、一番のお仕置?」
「降嫁した後も大変だと思うよ。元王女なんて肩書きを気にしないくらい厳しい人達が公爵家では待っている。あの家は厳しいよ」
「……」
王女の行く末はあまり幸せとは言えなそうだわ。
「……後は侯爵家だね」
「……」
「まぁ、知っての通り、ローゼの処分発表と共に降爵は決定していたわけだけど、父上達が大変激怒していてね」
ローゼ様が従兄妹でもある公爵令息のとその妻に冤罪をきせようとした事。それは看過できるものでは無い。
お義父様にあたるハワード公爵家当主は身内と言えど庇う事は一切せず、むしろ一族からの追放を決めていた。
(子爵家への格下げ、何よりハワード公爵家に睨まれたら今後貴族社会で生きていくのは難しい)
ローゼ様は一人娘だったので、後継ぎは親戚の中から養子をとる事になっていた。でも、その話も当然すべて流れた。後継のいなくなった侯爵家の行く末は……一つしかない。
「……これで、全部片付いた?」
「そうだね。少なくとも確実に未来は変わった」
スリスリ……チュッ!
ジョシュアが私の頬をスリスリしたと思ったらフニフニではなく口付けが開始された。
「…………んんっ」
そのまま、ジョシュアは私のガウンをそっと脱がしていく。
ジョシュアが私を求めない日は無いので、毎晩の事なのに未だにドキドキが止まらない。
そして、相変わらずのスッケスケの夜着姿の私に頬を赤く染めながら、ジョシュアは言う。
「ユイフェ」
「……?」
「僕達に悲しい未来はもう訪れない」
チュッ……
「だから、これからは幸せな未来を信じて共に歩んで行こう?」
「幸せな未来……」
チュッ、チュッ……
ジョシュアからたくさんの口付けが降ってくる。
「そうだ、まずは……こうして新しい家族を増やす……とか?」
「!!」
そう言ったジョシュアの不埒な手が私の身体に侵入し触れていく……
(あぁ、今夜も眠れない……)
でも、それは巻戻り前のショックを悪夢として見るせいで眠れなかった時とは違う。
(幸せな寝不足──……)
「ジョシュア……大好き。愛してるわ」
「ん……僕もだよ。ユイフェを愛してる……」
チュッ、チュッと甘い口付けと、私の身体に触れる優しい手。
これから訪れる幸せな未来を夢見て、甘い甘い時間を過ごした。
───とにかく愛は望まないから未来を変える為に“契約結婚”さえ出来れば良かっただけなのに。
(このやり直しは、運命を狂わされ理不尽に命を奪われた私達への神様からのプレゼントだったのかしら?)
お互いをずっとずっと大好きだった私達。でも、きっとこんな奇跡は二度と起きない。
(もう、後悔するのはごめんよ!)
これから先は、愛し愛され大好きなジョシュアと共に生きて行く───
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ありがとうございました!
これで、完結です。
ここまで、お付き合い下さり本当にありがとうございます。
ついつい、魔が差してしまいまして、
某作品達から、スリスリやフニフニ、更にナデナデをお借りしてしまいました。
特に、フニフニは輸出されてる設定……
本場の某作品よりは控えめにしたつもりですが、苦手だった方は申し訳ございません。
巻戻りは難しいですね。
初投稿作の“私を裏切った前世の婚約者~”
これは巻戻りではなく、前世の記憶を持った生まれ変わりなんですけども、ざまぁ対象に過去の罪を問えないのが難しいなと思った覚えがあります。
今回もそうですね……
そんな話でしたが、最後までお読み下さりありがとうございました!
二人を幸せにしてあげられて良かったです!
そのうち、こちらにも子供が生まれてスリフニが受け継がれていく……
そんな妄想が 笑
あと、また感想コメント返信が追い付かなくなっておりますが全部読んでいます!
いつも、本当にありがとうございます。
新作、
『役立たずになったので身を引こうとしましたが、溺愛王子様から逃げられません』
も、開始しています。
もし、ご興味があれば……ですが、またお付き合い下されば嬉しいです。
お読み下さりありがとうございました~
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