【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~

Rohdea

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21. 王子様の病気

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  これから私が滞在する事になるという部屋に案内された私は、少しぼんやりした頭で呟いた。
  クォン様が調べて持ってきた情報は私にとって驚くべきものだった。


「知らなかったわ……まさか、あの人達が勝手に落ちぶれていっていたなんて……」

  (よくよく考えたらあれだけ傍若無人に振舞っていたんだもの、ある意味当然なのかも……)

「それに、私があんなにあっさりと抜け出せるくらい、信頼関係は築かれていなかったしね。既に兆候は現れていたのね……」

  あの人達は今、どんな顔をして過ごしているのかしら……?
  ちょっと見てみたかったわ、なんて思う私もなかなか性格が悪いのかもしれない。

  (いえ、前回はあの人達に殺されているんだもの!  こう思う事は悪くなんてないはずよ!)

  そう思い直した時だった。
  私の部屋の扉がノックされる。

「あら?  誰かしら?」

  アレクとクォン様は公務がある……と行ってしまったし。
  どこぞの令嬢とも名乗れない私だけれど、世話役をつけてくれたのかしら?

「どちら様ですか?」

  王宮内だしと思いつつも不審者だったら、と思って扉を開ける前に一声かけると……

「ローラ様!  私です」
「……クォン様?」

  先程別れたはずのクォン様の声だった。そして、何故かその声はどこか切羽詰まった様子。

「あ……あの?  何があったので」

  尋常ではないその様子に私が慌てて扉を開けると、そこには青白い顔をしたクォン様が立っていた。
 
「ローラ様!  主が…………アレクサンドル殿下が倒れました」

  (────え?  アレク……が?)

  その言葉に一瞬、自分の目の前が真っ暗になった。




───



  今は眠っていると言うアレクの元へと駆けつけながら、クォン様は言う。

「ローラ様と別れた後、公務に向かおうとしたのですが……」
「……」
「急に咳き込んだ後、倒れ込みまして」
「!!」

  アレクはずっと無理をしていた?
  何で私はそれに気付かなかったの??
  前に私の前で様子がおかしかった時は熱があったけれど、さっきまでアレクと密着していても彼に熱があったようには思えなかったのに。

「……主は、向こうでローラ様といる時も発作を?」
「いえ、一度だけです。そこからは私の知る限り、咳き込んだり熱を出している様子はありませんでした」

  クォン様が「そうですか……」と何か考え込む。

  (アレク……無事でいて!)

  いったい、アレクは何の病気なの?
  医者に診せてもよくならないって何!?

  そんな事を思いながらアレクの寝かされている部屋へと入った。


「アレク……」

  アレクは青白い顔のまま眠っていた。
  呆然と彼を見つめる事しか出来ない私にクォン様は言う。

「鎮静剤を打ったそうなので今は眠っているそうです」
「……」
「ご存知かもしれませんが、殿下の発作は普通の人の病気とは違うそうなので薬もありません」

  (つまり、治療法も治療薬も無い、という事)

  アレクの眠っているベッドの傍らに座ると私はそっとアレクの手を握る。

「ローラ様はこの話を殿下からは説明をされましたか?」
「……いえ。特殊な病気とだけ」

  私は首を横に振って答える。

「そうですか。では少し補足すると、この特殊な病気は王族のみ、それも直系の王族に現れるものです」
「王族のみ……?」
「はい、王族の直系は必ず特殊能力のような物を授かるそうです。その力の代償だと言われています」
「……!」
「ちなみに、私は殿下の“力”が何かは知りません」

  特殊能力?  のせいだなんてそんなのどうしようも無いじゃないの!  と悲しくなる。

「ですが、全ての王族が皆このような様子だったわけではありません。アレクサンドル殿下の力は歴代の中でも最も強いそうで……」
「アレク……あなたって人は……」

  私はギュッと彼の手を握る。
  アレクがどんな力を持っていてもいい。とにかく無事に目を覚まして欲しい。
  私が願うのはそれだけ。

「ローラ様は“サスビリティ公爵家”のお役目の話をご両親から聞いていませんね?」
「……お役目……ですか?」
「そんな特殊な“力”を持った王族を唯一癒せるのがサスビリティ公爵家の直系の人間です」
「…………え?」
「と言っても、これまで力のせいで倒れた人はアレクサンドル殿下以外いないそうなのですが」

  そんなの初耳だった。

「私が生まれて間もない頃にアレクの婚約者に選ばれたのは……」

  ただただ、公爵令嬢という身分故ではなく……

「本来はサスビリティ公爵家と縁組はしないそうですが、アレクサンドル殿下があまりにも強大な力を持っていたからだそうですよ」
「……」
「前、公爵がご存命の頃は、身体の弱いアレクサンドル殿下を癒すそのお役目は公爵閣下が担ってくれておりました」
「お父様が……」

  (あぁ、だからお父様が亡くなった後は……!  癒す人がいなかったからアレクはずっと……)

「あ!  ローラ様。誤解しないで欲しいのですが、アレク様も“サスビリティ公爵家”のお役目を知ったのはかなり後です!  そんな事を知らずに幼かった主はローラ様に恋を……」

  (───ん?  幼かった?)

  クォン様の発言に引っかかりを覚えたその時、

「…………随分と、余計な事をペラペラと喋っているな?  クォン」
「ひっ!?」
「アレク!!」

  青白い顔で眠っていたはずのアレクが目を覚ました。
  
  (顔色……悪くない)

「あ、殿下……すみません……」
「……まぁ、いいよ。近いうちに話さなくてはいけない事だったんだからね」

  そう言ってアレクはそっと身体を起こす。
  大丈夫なの!?  とヒヤヒヤするもアレクはいつもの笑顔で微笑んだ。

「大丈夫だよ…………ローラのおかげでね」
「あ……」
「クォンがペラペラと話したみたいだけど、僕から補足させてくれる?」
「え?」

  何故かアレクが苦々しい顔をしている。何故……?
  そして、アレクはそのまま私の両手をギュッと握りしめながら言った。

「だって、このままでは、何だかまるで僕がローラの身体と力目当てで近付いた下衆な男みたいに聞こえるじゃないか」
「……か、身体目当て……!?」
「ローラ、違うから!  僕はローラがローラだから好きなんだ!」
「ア、アレク……」

  アレクの二度目の告白(?)が始まった。


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