31 / 39
第28話
しおりを挟む
「セシリナ! 綺麗だよ、とても似合っている」
「エリオス殿下……」
「可愛い……本当に可愛い。どうしよう……誰にも見せないで閉じ込めておきたい」
王太子殿下の婚約を祝うパーティー当日。
私を迎えにやって来たエリオス殿下は私の装いを見るなり褒めだした。
「な、何を言っているのですか……?」
「だって今日は一目で僕のパートナーだと分かる装いとなっているんだよ? 可愛くて似合ってるなんて最高だ!」
婚約発表を控えている今日の私達はペアになる装いとなっていて何だか照れくささと嬉しさが入り交じったような気持ちだった。
《でも、複雑なんだよ。セシリナはこんなにも綺麗で可愛い! と皆に自慢もしたいけど、知ってるのは自分だけにしておきたいなんて気持ちもあるんだ》
《セシリナによこしまな気待ちを抱く奴だって出てくるかもしれないし》
私の肩に手を回したエリオス殿下から聞こえてくる心の声も相変わらずだった。
「……エ、エリオス殿下は本当に私の事が好きなんですね」
「そうだよ? まだ伝え足りない?」
《どうしたのかな? 》
《そうだなぁ……ならいっその事、身体でもっと愛をー……》
「いえいえいえ! 充分ですから!!」
「そう? 残念だな」
《あぁ、今すぐセシリナを抱き締めたい》
《化粧が落ちなければキスだってしたいのに》
「……!!」
私のうっかり発言のせいでエリオス殿下が本気で迫って来そうで……困った。
そんな中、パーティーは和やかに開催されていた。
ギルディス殿下がエンジューラ様に惚れ込んでいるのは有名だったらしく、みんな無事に結ばれてよかったね、と言った祝福の声ばかりが飛び交っていた。
「あぁ、エリオス殿下! そちらが……」
「そう。僕の婚約者、セシリナ・バルトーク伯爵令嬢だ」
「セシリナ・バルトークと申します。よろしくお願い致します」
エリオス殿下に挨拶に来る人も多いのでその度に私は婚約者として挨拶をしていく。
「いやー……恋人だと公言されていた時から、このままもしや……とは思いましたが婚約されるとは」
「奔放な王子がねぇ……1人に絞れるんですかね?」
「噂の絶えない二人だ、どうなる事やら……」
恋人として振舞っていたおかげで、婚約相手が私である事の驚きは無さそうだけど、最初から上手くいかないだろうって目で見られるのはちょっとだけ堪える。
(でも、こればっかりは仕方ないもの)
長年、薄気味悪い令嬢と言われて来たのだから、すぐに払拭出来るなんて私も思っていない。
だから、これからの私を見てもらうのよ!
そう改めて決心する。
「ご心配どうも。ですが僕は彼女に惚れ込んでいるので、もう他の女性はいりません。真実の愛ってあるんですね」
エリオス殿下はようやく見つけた真実の愛とやらを売りにしていく方向にしたらしい。
「彼女の可愛さは僕だけが知っていればいいと思っていますからね」
奔放な殿下らしく軽い口調で言っているから周りには分からないでしょうけど……この言葉が嘘では無いから凄いわ。
エリオス殿下の有無を言わせない圧力で嫌味を言っていた人達も次々と黙り込む。
「全く何を堂々と惚気けているのだ」
ちょうどその時、後ろからそんな声が聞こえたので慌てて振り返ると、そこには本日の主役でもあるギルディス殿下と婚約者のエンジューラ様がいた。
「……エリオス。鼻の下が伸びてるぞ。デレデレではないか……まぁ、気持ちは分かるが」
「兄上!」
「こんなに浮かれたお前が見られるとはな」
「……浮かれてる?」
「無自覚か!」
エリオス殿下の反応に、ギルディス殿下がやれやれと呆れた声で呟いたのが聞こえた。
エリオス殿下とギルディス殿下は何やら込み入った話があるのか、そのまま何やら話を始めてしまった。
取り残された私は殿下の隣にいた令嬢……エンジューラ様が気になってしまい、そちらに視線を向けるとバッチリと目が合った。
実は、私がギルディス殿下の婚約者であるエンジューラ様にお会いするのは今日が初めてだった。
「初めまして、かしら? エンジューラ・アドレイドです」
「はい、初めまして……セシリナ・バルトークです。婚約おめでとうございます」
「ありがとう。でも、それはセシリナ様も同じでしょう? おめでとう」
「ありがとうございます」
(すっごい美人! ギルディス殿下が惚れ込んでいたと言うのも分かるわ……!)
と言うよりお姉様とは真逆なタイプだわ。
……お姉様が選ばれなかったのは性格云々より、そもそも外見もギルディス殿下のタイプでは無かったのでは……
なんてついつい思ってしまった。
「だけど会えて嬉しいわ。ずっと会ってみたいと思っていたの」
「私に……ですか?」
「えぇ、だって……」
エンジューラ様はふふふ、と微笑んで言った。そんな仕草も美しい。
「エリオス殿下がベタ惚れだという話なんですもの」
「ベタ……惚れ」
思わず顔が赤くなる。
どうしてもこういうのは慣れなくて困るわ。
「まぁ、可愛い! セシリナ様ったら可愛い反応!」
「え!?」
「エリオス殿下もこういう所に惚れ込んでいるのかしらね」
エンジューラ様はそんな事を言いながらギルディス殿下と話し込んでるエリオス殿下をチラリと見る。
「エリオス殿下の婚約の話を聞いてギル様、とても嬉しそうだったの。知ってるかしら? あの方ってね、ああ見えて弟バカなのよ」
なんてクスクスと笑いながら口にするエンジューラ様もギルディス殿下の事を愛しそうに想っている顔をしていた。
心の声を聞かなくても分かるわ。
(お似合いの二人だわ……やっぱり王太子殿下とエンジューラ様の間に入ろうなんて無謀な事なのよ)
ふとお姉様の顔が私の頭の中に浮かんだ。
そう言えば、お姉様は大人しくしているかしら……
「……マリアン様」
「え?」
「セシリナ様ってマリアン様の妹さんなのよね?」
「は、はい」
まさに丁度、お姉様の事を考えていたから驚いた。
そうよ……お姉様は、エンジューラ様に対して酷い事をしていたはず。
良い印象は無いわよね。
「ねぇ? 私、マリアン様は今日招待されていないとギル様から聞いていたのだけれど」
「え……あ、はい。そうです」
確かに…… 今日の招待状にお姉様の名前は無かった。
お父様は「謹慎させている事が伝わっているのだろうか?」と、首を傾げていたけれど。
(王太子殿下が拒否したからだと思っていたけれど、やっぱりそうだったんだわ)
冷静に考えればそんなの当たり前。
殿下の立場にたって考えたら、自分が病んでしまうくらいの事をする人間を呼んでパーティーをぶち壊されたら冗談じゃないもの。
それに、お姉様が謹慎中な事もエリオス殿下から聞いていたのかもしれない。
「そうよね……なら、あれは誰かしら? 他人の空似……では無いわよね?」
「?」
エンジューラ様の様子がおかしいので、その視線の先を辿る。
「!!」
私は自分の目を疑った。
(嘘でしょう!? どうして……!)
私達が向けたその視線の先で、ちょうど会場に入って来たのは……
どこからどう見ても、家で謹慎しているはずの私のお姉様にしか見えない令嬢だった。
「エリオス殿下……」
「可愛い……本当に可愛い。どうしよう……誰にも見せないで閉じ込めておきたい」
王太子殿下の婚約を祝うパーティー当日。
私を迎えにやって来たエリオス殿下は私の装いを見るなり褒めだした。
「な、何を言っているのですか……?」
「だって今日は一目で僕のパートナーだと分かる装いとなっているんだよ? 可愛くて似合ってるなんて最高だ!」
婚約発表を控えている今日の私達はペアになる装いとなっていて何だか照れくささと嬉しさが入り交じったような気持ちだった。
《でも、複雑なんだよ。セシリナはこんなにも綺麗で可愛い! と皆に自慢もしたいけど、知ってるのは自分だけにしておきたいなんて気持ちもあるんだ》
《セシリナによこしまな気待ちを抱く奴だって出てくるかもしれないし》
私の肩に手を回したエリオス殿下から聞こえてくる心の声も相変わらずだった。
「……エ、エリオス殿下は本当に私の事が好きなんですね」
「そうだよ? まだ伝え足りない?」
《どうしたのかな? 》
《そうだなぁ……ならいっその事、身体でもっと愛をー……》
「いえいえいえ! 充分ですから!!」
「そう? 残念だな」
《あぁ、今すぐセシリナを抱き締めたい》
《化粧が落ちなければキスだってしたいのに》
「……!!」
私のうっかり発言のせいでエリオス殿下が本気で迫って来そうで……困った。
そんな中、パーティーは和やかに開催されていた。
ギルディス殿下がエンジューラ様に惚れ込んでいるのは有名だったらしく、みんな無事に結ばれてよかったね、と言った祝福の声ばかりが飛び交っていた。
「あぁ、エリオス殿下! そちらが……」
「そう。僕の婚約者、セシリナ・バルトーク伯爵令嬢だ」
「セシリナ・バルトークと申します。よろしくお願い致します」
エリオス殿下に挨拶に来る人も多いのでその度に私は婚約者として挨拶をしていく。
「いやー……恋人だと公言されていた時から、このままもしや……とは思いましたが婚約されるとは」
「奔放な王子がねぇ……1人に絞れるんですかね?」
「噂の絶えない二人だ、どうなる事やら……」
恋人として振舞っていたおかげで、婚約相手が私である事の驚きは無さそうだけど、最初から上手くいかないだろうって目で見られるのはちょっとだけ堪える。
(でも、こればっかりは仕方ないもの)
長年、薄気味悪い令嬢と言われて来たのだから、すぐに払拭出来るなんて私も思っていない。
だから、これからの私を見てもらうのよ!
そう改めて決心する。
「ご心配どうも。ですが僕は彼女に惚れ込んでいるので、もう他の女性はいりません。真実の愛ってあるんですね」
エリオス殿下はようやく見つけた真実の愛とやらを売りにしていく方向にしたらしい。
「彼女の可愛さは僕だけが知っていればいいと思っていますからね」
奔放な殿下らしく軽い口調で言っているから周りには分からないでしょうけど……この言葉が嘘では無いから凄いわ。
エリオス殿下の有無を言わせない圧力で嫌味を言っていた人達も次々と黙り込む。
「全く何を堂々と惚気けているのだ」
ちょうどその時、後ろからそんな声が聞こえたので慌てて振り返ると、そこには本日の主役でもあるギルディス殿下と婚約者のエンジューラ様がいた。
「……エリオス。鼻の下が伸びてるぞ。デレデレではないか……まぁ、気持ちは分かるが」
「兄上!」
「こんなに浮かれたお前が見られるとはな」
「……浮かれてる?」
「無自覚か!」
エリオス殿下の反応に、ギルディス殿下がやれやれと呆れた声で呟いたのが聞こえた。
エリオス殿下とギルディス殿下は何やら込み入った話があるのか、そのまま何やら話を始めてしまった。
取り残された私は殿下の隣にいた令嬢……エンジューラ様が気になってしまい、そちらに視線を向けるとバッチリと目が合った。
実は、私がギルディス殿下の婚約者であるエンジューラ様にお会いするのは今日が初めてだった。
「初めまして、かしら? エンジューラ・アドレイドです」
「はい、初めまして……セシリナ・バルトークです。婚約おめでとうございます」
「ありがとう。でも、それはセシリナ様も同じでしょう? おめでとう」
「ありがとうございます」
(すっごい美人! ギルディス殿下が惚れ込んでいたと言うのも分かるわ……!)
と言うよりお姉様とは真逆なタイプだわ。
……お姉様が選ばれなかったのは性格云々より、そもそも外見もギルディス殿下のタイプでは無かったのでは……
なんてついつい思ってしまった。
「だけど会えて嬉しいわ。ずっと会ってみたいと思っていたの」
「私に……ですか?」
「えぇ、だって……」
エンジューラ様はふふふ、と微笑んで言った。そんな仕草も美しい。
「エリオス殿下がベタ惚れだという話なんですもの」
「ベタ……惚れ」
思わず顔が赤くなる。
どうしてもこういうのは慣れなくて困るわ。
「まぁ、可愛い! セシリナ様ったら可愛い反応!」
「え!?」
「エリオス殿下もこういう所に惚れ込んでいるのかしらね」
エンジューラ様はそんな事を言いながらギルディス殿下と話し込んでるエリオス殿下をチラリと見る。
「エリオス殿下の婚約の話を聞いてギル様、とても嬉しそうだったの。知ってるかしら? あの方ってね、ああ見えて弟バカなのよ」
なんてクスクスと笑いながら口にするエンジューラ様もギルディス殿下の事を愛しそうに想っている顔をしていた。
心の声を聞かなくても分かるわ。
(お似合いの二人だわ……やっぱり王太子殿下とエンジューラ様の間に入ろうなんて無謀な事なのよ)
ふとお姉様の顔が私の頭の中に浮かんだ。
そう言えば、お姉様は大人しくしているかしら……
「……マリアン様」
「え?」
「セシリナ様ってマリアン様の妹さんなのよね?」
「は、はい」
まさに丁度、お姉様の事を考えていたから驚いた。
そうよ……お姉様は、エンジューラ様に対して酷い事をしていたはず。
良い印象は無いわよね。
「ねぇ? 私、マリアン様は今日招待されていないとギル様から聞いていたのだけれど」
「え……あ、はい。そうです」
確かに…… 今日の招待状にお姉様の名前は無かった。
お父様は「謹慎させている事が伝わっているのだろうか?」と、首を傾げていたけれど。
(王太子殿下が拒否したからだと思っていたけれど、やっぱりそうだったんだわ)
冷静に考えればそんなの当たり前。
殿下の立場にたって考えたら、自分が病んでしまうくらいの事をする人間を呼んでパーティーをぶち壊されたら冗談じゃないもの。
それに、お姉様が謹慎中な事もエリオス殿下から聞いていたのかもしれない。
「そうよね……なら、あれは誰かしら? 他人の空似……では無いわよね?」
「?」
エンジューラ様の様子がおかしいので、その視線の先を辿る。
「!!」
私は自分の目を疑った。
(嘘でしょう!? どうして……!)
私達が向けたその視線の先で、ちょうど会場に入って来たのは……
どこからどう見ても、家で謹慎しているはずの私のお姉様にしか見えない令嬢だった。
52
お気に入りに追加
4,811
あなたにおすすめの小説
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる