17 / 119
ガーネットの狙い ②
しおりを挟む『フレリアぁ、シよう。』
「何をですか…って、《剣精サマ》ではないですか。ご無沙汰しております。」
『そう、そう、それや。わいの惚れたんは、その笑顔や!』
フレリアはわいの言葉に首を傾げる。
かわいい! 好きだ!! いつか抱きたい!!!
わいは前世の記憶を振り返った。
わいの前世での記憶は、高3の夏までやった。
それ以降は受験勉強やら部活引退やら諸々あって、記憶の濃度が薄い気ぃがするんや。
それが、たった11ヶ月しか違わない癖にまだ高2で青春真っ盛りな弟がやっていたゲームで、わいの記憶はバラ色になった。
恋をしたのだ。
ゲームのヒロイン、フレリアに。
フレリアは、最終的には登場人物の男という男に抱かれる。
ロマンチックだったのは僅かで、酷かったり、激しかったり、変態チックだったり、性奴隷のようだったり、いろいろな方法でヤられ、喘いでいた。
でも、わいが好きになったのはエロシーンやない。その前の、相手役の男達と恋に落ちて、だんだんその気持ちを意識し、告白するまでの期間の、恋するフレリアに恋をしたんや。
それで、わいの成績は大変なことになった。
高3の夏休み直前、希望していた5番目の学校まで全てが圏外になった。
でもわいには、後悔などなかった。
フレリアの恋を見守ることだけが、わいの生きる希望やったからや。
でも、思えば《見守り方》があかんかったんやろう。
わいは、弟がプレイする画面の中のフレリアに恋をしていたから…
ある日、弟が言った。
わいのことを《キモい》と。
そんなに気になるなら、自分でゲームを買ってプレイしろと。
その日は朝からクーラーの調子が悪くて、室内は室外と同じくらい暑かった。
やから、たぶん弟もイラついていたんやろう。
どこからかナイフを取り出すとわいの胸をぷすりと刺し、そのまま引き抜いた。
弟は、あんなに震える手ではナイフを掴んでいられなかったのだろう。
その場にナイフを落とし、奇声を発しながら玄関を飛び出した。
わいは、その場で膝をつき、そのまま横に倒れた。
目の前には、わいの血の付いたナイフ。
もうダメだと思ったその時、わいの頭に走馬灯のように駆けたのは、フレリアと、一番応援していた《剣聖》と呼ばれていた攻略対象の騎士のスチル。
「生まれ変わったら、フレリアのいる世界に行きたい。《剣聖》と呼ばれる強い男になって、フレリアをあいつらから守りたい!」
『よし、その願い、儂が叶えてやろう。』
目が覚めたら、フレリアのいる世界で《剣精》になっていた。
──神様よ、《ケンセイ》違いやろうが!!!
わいがこの世界で最初に叫んだのは、この言葉だった。
で、それからウン100年…
わいはとうとう、フレリアに出おうた。
それにフレリアは、わいにキッスもしてくれた。
わいは《剣精サマ》の持つ様々な力を使って、フレリアを守った。
ケド、やっぱり実体をもっとらんのは不利や!
結局、将来の《剣聖》にフレリアを取られてもうた。
『フレリア、好きやで!』
「《剣精サマ》、まさか今日でお別れですの? フラグ立ってません?」
『わいは消えん! フレリアをイかすまでは!!』
「はぁ。でも《剣精サマ》、私をイかせてしまえば消えてしまうかもしれませんわ。でもそれは嫌。いつまでも、愉快な話し相手になってくださいませんと。」
『フレリア~! わかった。わいはフレリアをイかせん!』
「はい、言質、頂戴致しました!!」
『なんやと? でもイかせんでも、キスくらいはしたる!』
チュッ
「…んっ……あんっ! どこにキスしてるの!」
『あ・な』
「いやぁ~んっ!!!」
バシッ
『あう~っ』
フレリアのビンタは、今日も強烈だった。
1,576
お気に入りに追加
2,947
あなたにおすすめの小説

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

結婚が決まったそうです
ざっく
恋愛
お茶会で、「結婚が決まったそうですわね」と話しかけられて、全く身に覚えがないながらに、にっこりと笑ってごまかした。
文句を言うために父に会いに行った先で、婚約者……?な人に会う。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる