王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

Rohdea

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101. 元気いっぱいの大親友

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(今日のお茶会はすごいわ!)

 何でも知っているアニエス様に、美しくて強くてかっこいいオリアンヌお姉様に、鍛え抜かれた強い身体を隠し持ったニコレット様……
 とにかく、すごい人たちが勢揃いよ!!

 そんなことを考えながらアニエス様をお茶会の行われる部屋へと案内する。
 その部屋では既にオリアンヌお姉様とニコレット様が待っている。

「あ、そうですわ、アニエス様」

 廊下を歩きながら、途中で伝えておかないといけないことがあったので私は振り返った。
 アニエス様がじとっとした目で私を見る。

「……な、なんですか!」

 あら?  
 お茶会はこれからだというのにアニエス様ったらもう息切れを起こしているわ。
 そんなに興奮するほど今日のお茶会を楽しみにしてくれていたのなら嬉しい。

「いえ、今日のお茶会はお菓子もお茶もたくさんの種類を用意しましたので、ぜひ、楽しんでいってくださいね!」
「は……?  たくさん?」
「たくさんです。あ、着きました!  この部屋です」

 眉をひそめて怪訝そうにしているアニエス様を見ながら、私はゆっくり微笑むとそのまま部屋の中へと案内した。



「ぅ多っ!  ───なっ、なんでこんなに!?」

 アニエス様は部屋に入るなり、テーブルに並べられたお菓子を見て大きな声を上げた。

(あら、やっぱり驚いているわ)

 準備をしていたらお父様とお兄様は胸焼けするって、顔をしかめていたのよね。
 お母様とオリアンヌ様は、あれも好き、美味しいわよね、これも食べたいと一緒にはしゃいでくれたのだけれど。
 後から到着したニコレット様は……
「この量……私の胃袋と対決ということね!?」
 なんて闘志を燃やしてくれていたけれど。

「先ほど説明しましたが、たくさん用意しましたわ!」
「こんなの、き、聞いていた以上ではありませんか!  限度というものがあるでしょう?  どうしてこんなにたくさん───え?  あれ?」

 またしても興奮していたアニエス様の目がとあるお菓子の山の一画に釘付けになる。
 そして、あれ?  と戸惑い始めた。

(ふふふ、どうやら気付いてもらえたようね!!)

 私がニコニコしていると、すごい勢いでアニエス様が後ろを振り返った。
 ばちっと私たちの目が合う。

「───フ、フルール様!  ここここれは、どういうことですか!」
「はい!  そこにはアニエス様のお好きなお菓子を集めてみましたわ!!」
「……なっ!」

 えっへんと胸を張って答えたら、アニエス様が私を凝視したまま固まった。
 どうやらかなり驚いてくれたみたい。
 私はアニエス様の為にテーブルの上のお菓子を説明していく。

「あちらのお皿の上に乗っているのは、アニエス様のお好きな焼き菓子ですわ!  そしてこちらもアニエス様のお好きなクリームたっぷりの……」
「待っ!  ……待って待って待って!  待ちなさーーい!」
「?」

 慌てた様子のアニエス様がすごい勢いで止めに入ってくる。

「どうしました?」
「な、なんで……ど、し、わたし、好き……」

 息を切らしているアニエス様の言葉が聞きづらく、なんと言っているのか分からなくて私は首を傾げた。

(あ!  自分だけ好きな物を用意してもらって申し訳ないと言っているのかも!)

 そう解釈した私は、安心して欲しくて優しく微笑む。

「ご安心ください。アニエス様だけじゃないですよ?  オリアンヌ様とニコレット様のお好きなお菓子もばっちり揃えていますわ!」

 私が二人の方を見ながらそう説明すると、二人も大きく頷いてくれた。
 特にお姉様は早く食べたそうにウズウズしていて目を輝かせている。
 その様子にアニエス様はパチパチと目を瞬かせた。

「違っ……だから、な、んで……」
「せっかくこうして皆で集まって楽しくわいわい過ごすのですから、それぞれ好きな物があったら嬉しいかなと思いました!」

 私は満面の笑みで答える。

 そうして、三人のお好きなお菓子を出来るだけ多く取り入れようとしたら……増えた増えた。
 食べ切れるかしらと心配するかもしれないけれど私のお腹なら大丈夫。
 決して無駄にはしません!

「───そ、そ、そうではなくて!」

 アニエス様がすごい勢いで首を横に振っている。

「?」
「わ、わたしは!  フルール様に好きなお菓子の話なんてした覚えがないと言っているの!!」
「あら?  そうでしたっけ?」

 そう言われて話をしたことがあるか思い出そうとしたけれど、よく分からない。

「そうなの! な、なのに!  なぜわたしの好きなお菓子がこんなに並んで───……」
「だってアニエス様、昔から好きなお菓子を前にした時、可愛らしく微笑まれるんですもの」
「……え?」
「ですから、見ていればお好きな物は分かりますわ」 
「…………え?」

 アニエス様と目が合ったので、私はにっこり微笑む。

「アニエス様はお好きなお菓子を見つけると微笑みを浮かべて──周囲をコソッと見回して皆様の目を盗んで嬉しそうに頬張っ……」
「いーやー、フルール様ーーーー!」
「!?」

 ものすごい勢いでアニエス様が私に向かって突進して来た。

「なっ……!  どっ……!」
「えっと……なんで!  どうしてそれを!  ……ですか?」

 コクコクコクとすごい勢いで頷くアニエス様。
 首がもげないか心配だわ。

「一番最初に見かけた時は偶然でしたけど、その後もよく見かけたので──」
「……っっ!」

 アニエス様の顔が赤くなる。
 究極の照れ屋さんだから照れてしまったのかも。

「…………ど、どうして……そんなに私を見ていたの……よ!!」
「え?  それはこの間も言ったでしょう?」 
「は?  この間……?」

 私はもう一度どーんと胸を大きく張って笑顔で答える。

「アニエス様は私の大親友ですもの!」 
「───っ!」
「やはり、アニエス様の親友を語るなら、これくらいのことは理解しておかないといけません!」
「……し、ししし……」
「アニエス様?」

 突然、挙動不審になってしまったアニエス様。
 大親友という響きに照れてしまっているのね?  分かるわ!

「───と、いうことですから、さあ!  お茶会を始めましょう!」
「ちょっ……」

 オリアンヌお姉様とニコレット様が私たちの様子を楽しそうに見守ってくれる中、アニエス様にはやや強引に着席してもらった。



 その後は、それぞれの挨拶を終えて一息つく。

「では、挨拶も終わりましたのでお茶を───」
「……はっ!  フ、フルール様!」

 運ばれてくるお茶を見たアニエス様が突然、震え出した。

「あの?  大丈夫ですか、アニエス様?  もしかして寒いですか?」
「違うわよーー!  そうではなく……ま、まさかとは思いますが……そのお茶に使われている茶葉……」
「!」

 私はニンマリ笑う。
 さすが、アニエス様!  鋭いわ!

「もちろん!  こちらはアニエス様のお好きな……」
「ひぃぃ、や、やっぱりーーーー!」

 まだまだお茶会は始まったばかりなのに、アニエス様は最初からとっても元気だった。
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