【完結】“可愛げがない女”と蔑まれ続けた能面令嬢、逃げ出した先で幸せを見つけます ~今更、後悔ですか?~

Rohdea

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第48話 愛しい妻(レイノルド視点)

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  その日、私は夢を見た。


─────……


 《───お父様、お母様へ。
  私は今、マーギュリー侯爵家の屋敷でお世話になっています。(略)マーギュリー侯爵家のカイン様はとてもとても私に優しくて───……》


  が、驚きの内容の手紙を送って来た。

『リア!  大変だ!  リーファが!  私達の可愛い娘が……!』
『あらあら……リーファったら』

  慌ててリアに手紙を見せると、愛しいリアは最初の方こそ心配そうな顔で手紙を読んでいたのに、最後の方に差し掛かると何故か嬉しそうに微笑んでいた。
  ───あぁ、私の妻は今日も美しい!  美しいが……

『リア?  いったいこの手紙のどこに微笑ましい要素があるんだ?』
『あら?  分からないですか?』

  私達の可愛い娘が、内緒でこっそり交際していた男……小僧に暴行を受けて何故か、別の男……侯爵に拾われているんだぞ!?

『リーファったら助けてくれたというマーギュリー侯爵様に惹かれているみたいなんだもの』
『な、なんだと!?』

  ひ、惹かれている……だと!? 
  私の手紙を持つ手がブルブルと震える。

『確か、最近“隣国”に留学していた所から戻って来て爵位を継いだばかりの方なのよねぇ……』
『リリリリーファに、ここここ恋はまだ早い!』

  動揺している私の発言がおかしな事になっている。
  いや、いつもの事か……

『何を言っているんですか!  あの子もそんなお年頃ですよ?』
『だだだだが!』
『マーギュリー侯爵様…………ムキムキだったりするかしら?』
『リア……そんなうっとりした顔で……』

  今日も愛しの妻はぶれない。


─────……


「────という夢を見たのだ」
「……レ、レイさん!?」
「あまりにも現実のようで錯覚を起こしかけたよ」

  そんな夢を見て目覚めた朝、真っ先に愛しのリアに報告をした。
  話を聞いたリアが真っ赤になっている。

  (今日も可愛いなぁ……)

「わ、私達の子供が出てくる夢……ですか!?」
「ああ、娘だった!  リアに似てさぞかし可愛い娘に違いない!」
「こここここ子供……」

  むっ?  リアの顔がどんどん赤くなっていくな。頬を両手で抑えてはいるが赤くなっているのが丸分かりだ!
  やはり、まだ熱が下がらないのか……と心配になる。

  (色々な事があったからな……)

  隣国から必死に逃げて来て……(店主夫妻に聞いたが)リアは力尽きて空腹で倒れていたという。そして店主達に助けられてあの食堂で働くことになり……
  リアの事だから私と出会う前もきっちりしっかり働いていたに違いない。
  それは疲れもする……

「リア……」

  私はそっと愛しいリアを抱き寄せた。

「レイさん、ごめんなさい」
「むっ?  なんの謝罪だ?」

  リアに謝罪されるようなことをされた覚えは無いのだが?
  私は内心で首を傾げる。
  そんな私に、リアは目を伏せながら口を開く。

「まだ私……レイさんに妻らしいこと、何も出来ていません……」
「リア……」
「ここここ子供だって……!  レイさんに申し訳なくて……」
「!」

  (まさか、リアは初夜がお預けになっている事を気にして……?)

  あぁ、なんて可愛いんだ!  リア!
  私はギュッと力を入れてリアを抱きしめる。

「レイさん?」
「気にしなくていい。ほ、本音は……コホッ……は、早くリアと結ばれたい……が、そそそれはリアが元気になってからだ!」

  私は少し身体を離してリアの目を見つめる。
  そして、そっと顔を近付けて、リアの額にキスを落とした。

  (今、リアの唇に触れたらペラッペラの理性がどこかに飛んでいってしまう!  が、我慢だ!)

  体調が万全でないリアにがっつくわけにはいかん!

「リアはもう私の愛する妻だ!  それは揺るがん」
「は、はい、レイさん!」

  リアの笑顔が眩しすぎてクラクラする。
  きっと夢で見た子も───

「名前は“リーファ”と呼ばれていた」
「わ、私達の娘、の名前ですか?」
「ああ」
「リーファ……」

  リアが大事そうに……何かを噛み締めるようにその名前を呟く。

「まぁ、ただの夢だ。だが……」
「だが?」
「もし、この先、私達の間に夢で見たように娘が生まれたなら“リーファ”と名付けるのも良いかもしれん」

  私がそう口にしたらリアはその名前を相当気に入っていたのか、とても嬉しそうに笑った。



❋❋❋❋❋


「妻が可愛いのだ」
「……惚気ですか?  レイノルド様。こちらは胸焼けが酷いのでこれ以上は勘弁です」
「ビリー……」

  何故なのか。ビリーの視線が冷たい。

「レイノルド様……あなたにこの気持ちが分かるでしょうか?」
「むっ?」
「行きの馬車も帰りの馬車も……どこにいてもレイノルド様とリア様は、私の存在を忘れたかのようにイチャイチャイチャイチャ……」
「そ、そんなにか?」

  愛しいリアを常に愛でていた記憶はあるが、イチャイチャ……?

「はい。常にイチャイチャ……隣国でも噂されているのではありませんかね?」
「なに?」

  それはいい!
  私は思わず笑を浮かべる。

「ひっ!  レイノルド様……どうして、わ、らうのですか!」
「当然だ!  あの国の者達にリア……オフィーリアが幸せだと伝わるではないか!」

  リアの家族だった奴らと婚約者だった王子……特に王子が目を覚ました暁にはたくさんたくさんその噂を聞かせてやって欲しいものだ!

  (私には分かる!)

  あの王子は途中からリアの美しさに見惚れていたからな!  許せん!
  今更、後悔しても遅いというのに……

  (そして、リアは気付いていないのだろうな……)

  どいつもこいつも後から手のひらを返したかのような態度を取りやがって……リアは最初から美しかっただろう!?
   まぁ、あの元王太子や家族だった者達がこの先、リアに会うことは一生無いだろうからな。
  厳しい管理下に置かれる彼らがこの国に来る事は有り得ない。
  それは、牢から出た後は平民になるらしい妹も同じだ。聞いたところによると衣食住を整えてやる代わりに色々と制限もつくらしい。

「───私は一日でも早くムッキムキになって、リアを喜ばせてここで幸せにするだけだ!」
「ひっ!」

  私が力を込めて再度そんな決意をしていたらビリーが震えている。

「レ、レイノルド様……それはよーーーく分かりましたので、仕事……仕事をしましょう……して下さい」
「むっ?」
「それに、そろそろ、帰国後に送った報告について陛下からのお返事が届くかと……」
「ああ……」

  (リアが元気になったら一度王都に行って陛下に挨拶をせねばな)

  権力の無い私に陛下の名代という役割をくれた事、リアとの婚姻の承諾を早々に許可してくれた事。これらが無かったら乗り込むことは不可能だった。

「有難いことだな……さて、次は結婚式だ!」

  ───結婚式では、リアを世界一幸せな花嫁にする!

  その後も、仕事をしながらもリアの美しいウェディングドレス姿を想像するだけで顔がニヤケてしまい、その度にビリーが小さな悲鳴を上げていた。

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