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第23話 迫る決着の時……
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「え? レイさん、もう一度お願いします」
「ああ、だ、だからリアさえ良ければ…………なの、だが」
ビリーさんによる謎のレイノルド様紹介の話を終えた後、お言葉に甘えてゆっくりまったり休んでいたら、レイさんが再び部屋を訪ねて来た。
そして、ほんのり頬を赤く染めて三倍増しくらいの厳つくなったお顔で言った。
「こここここれからは、こここここに住まないか?」
「!」
こ……が、多かったけれど、どうにか意味は理解した。
「わ、私が伯爵……家に、ですか?」
「そ、そそそそうだ! へ、部屋はたくさん余っているから心配は要らない!」
「で、ですが……」
思ってもみない提案に私は驚いた。
「実は……その、リアを一人であの部屋に住まわせるのは……し、心配なんだ」
「え?」
「また、この間の男とか……それ以外の男とか、男とか男とか……とにかくリアの美しさに惹かれた男がやって来るかもしれないだろう!?」
「……!?」
何だか男がいっぱい出て来たわ。
……レイさんは大袈裟だと思う。そんな心配をする必要は無いでしょうに……
でも、私の事情を説明出来ていないのだからしょうがないわ。
「食堂までは必ず護衛をつけるぞ! だから、リアの安全は保障する!」
「レイさん……」
その言葉に甘えたくなってしまう。
でも……
「私のような何処の馬の骨かも分からない者が屋敷にいたら、レイさんの迷惑に……」
「ならん!」
「“レイノルド様”のこれからの縁談に支障が……」
「出ない!」
え? 出ないの?
その事にびっくりした。
でも、レイさん独身……よね? さ、寂しいし何だか胸がチクリと痛むけれど、これから結婚とかする人……よね?
私がびっくりした事が伝わったのか、レイさんはぐっと表情を引き締めると大きく深呼吸をした。
「───大丈夫だ! な、なぜなら、わ、私がつ、つ、妻にと望む女性、は……」
「女性……は?」
「リ────」
コンコン
「失礼します! リア様、仕事をサボっているレイノルド様を回収に参りました」
「ビリー!?」
「姿が見えないと思ったら……やはりこちらでしたか……」
そんな事を言いながら、ビリーさんが呆れた様子で部屋に入って来る。
「レイノルド様……お気持ちは分かります。心配なのでしょう…………が! 今は仕事をしてください! し・ご・と!」
レイさんはどうやら仕事の合間に部屋を訪ねてきてくれていたらしい。
そんなに心配性だったなんて!
(ふふ、ちょっとリュウ様に似てる……)
リュウ様も、元婚約者から引き離すために自分の屋敷にお姫様を匿った時、そんな行動をしていた。
リュウ様ったら、時間を見つけてはお姫様に会いに行くものだから、周りに怒られていたわ。
そして、一つ屋根の下で暮らす事になった二人は……
お姫様もリュウ様も互いに惹かれ合っているから、夜は少しドキドキのシーンがあったりして夢中で読んだわ!
(……ってあら? それって今の私と同じ……状況?)
このまま、私も伯爵家に住むことになれば……レイさんと……え? あら?
「……くっ! ビリー……なぜ、お前はこうも毎回いい所で邪魔をするんだ!」
「そ、そんな事を言われましても……」
「お前は私の味方では無いのか!?」
(ど、どうしましょう……お受けしても……いいのかしら? そうしたら、毎日レイさんと会えるのよね……? よ、夜も……?)
想像したら胸のドキドキが止まらなくなった。
レイさんとビリーさんが仲良く(?)言い合いをしている間、私は顔を赤くしながらグルグルとそんな事を考えていた。
◆◆◆◆◆◆
────その頃のコーディリア達は……
「ええ!? 今日もウィル様に会えないの!?」
「……申し訳ございません」
コーディリアは王宮を訪ねたものの、殿下に会えず憤慨していた。
「もう、ずっと会っていないわ? 一言だけでも……それか、せめて顔を見るだけでも出来ないの?」
「……申し訳ございません」
「~~~!」
(ウィル様ったら、いったいどうしちゃったのよ!)
これでは、妊娠していると嘘をついた意味が無いじゃないの!
お父様はまだ、誤魔化せているけれど、そろそろお母様が疑っているみたいなのよね……
なにか言いたそうにずっと私のことを見ているのよ。
「お姉様は見つからないし、ウィル様は会ってくれないし……もう、意味分かんない!」
これ以上、王宮にいても意味が無いので帰ろうと廊下を歩いている所で、父親のタクティケル公爵と鉢合わせた。
「お父様!」
「コーディリアか。ウィル殿下に会いに来たのか?」
「……」
コーディリアがムッとした表情になったので公爵はしまったと思った。
そう言えば、最近殿下が会ってくれないという愚痴を散々、聞かされていたんだった……
「お父様……私──」
その時だった。
「タクティケル公爵! コーディリア嬢も! こちらにおられましたか!」
「なぁに?」
「何だ?」
二人の元に城の使いの者が掛けて来る。
何事かと首を傾げた二人だったけれど、次の言葉で顔を見合せた。
「陛下がお二人をお呼びです」
────
陛下に呼び出された二人は慌てて謁見に向かった。
そんな二人の前で少しやつれた様子の陛下が口を開く。
「呼び出したのは他でもない。行方不明となっているオフィーリア嬢の捜索の件だ」
二人はヒュッと息を呑む。
「……オフィーリアが見つかった……のでしょうか?」
公爵がおそるおそる訊ねると、陛下は静かに首を振った。
国内を散々探したが見つからないオフィーリア。これはもう生きてはいないのでは?
公爵はそう思おうとしていた。
「いや。だが……実は、少し前からウィルが行方不明となっている」
「え! ウィル様が?」
コーディリアの顔が青くなる。
「……いや、事件や事故ではなく……どうもウィルは、オフィーリア嬢の捜索で勝手に単独行動を取ったらしいのだ」
「単独行動……ですか?」
コーディリアは、だからずっと会えなかったのね……と納得するも意味が分からなかった。
「ウィルの部屋に残されていた手紙やメモ書き、そして、地図……その他、側仕えの者達の証言からどうも勝手に隣国に渡ったらしいのだ」
陛下は深いため息と共にそう言った。
二人は思った。
───それはつまり、隣国に────……
「そういうわけで、これから、隣国に人を派遣してウィルを連れ戻す事になるのだが……」
「「!」」
コーディリアとタクティケル公爵は顔を見合わせる。
そして頷き合った。
「───陛下! それならば!」
────行方不明となったオフィーリア捜索の決着の時は、着々と近付いていた───……
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