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43. 悪役にされた令嬢は、幸せを感じる
しおりを挟む(ディライト様の隣にこれからもずっといられる!)
ディライト様との別れを意識していた分、“本当の婚約者”となれた私は浮き浮きした気持ちで屋敷に帰った。
(あんなに深く強く想ってくれていたなんて……夢見たい!)
貰った指輪を見る度に頬が緩んでしまう。
それに……
(ディライト様は帰りの馬車の中でも情熱的だったわ)
思い出すだけで頬が熱くなる。
屋敷の前で別れる時まで、たくさん抱きしめ合って、たくさんキスをして……
(……ん? 待って? キスをする場所が増えただけで、実はあんまり前と変わらない……?? あれ?)
「!!」
(ディライト様っ!?)
そんな事に今更気付いた私は、一気に照れくさくなってしまった。
「お嬢様! おかえりなさいませ!」
「はっ! ふわふわが乱れてる……ドゥラメンテ公爵令息様何をしたの……!」
「それよりも! お嬢様が一段とキラキラしているんだけど!?」
帰宅した私を出迎えた侍女達に何故か騒がれた。
ふわふわが乱れている? キラキラしている?
そんなにいつもと違うのかしら?
「あ、お嬢様……その手のそれは……」
そのうち、1人の侍女が私の指輪に気付いた。
「ディライト様に……貰ったの」
私が照れながら答えると、侍女達は「きゃーー!」と興奮した。
「さすが! ドゥラメンテ公爵令息様様! 流行をしっかりおさえていますね!」
「流行? この指輪は流行りなの?」
「お嬢様、男性が自分の瞳の色の石のついた指輪を恋人や婚約者、妻に贈ると“幸せ”になれるって有名なんですよ?」
(ゆ、有名だったのね……)
「左手の薬指にはめるらしいですよ! だから間違いないですね」
「特注だから時間かかるって有名なのに……公爵令息様……いつから注文していたのかしら?」
「え!」
(ディライト様ーー!?)
「お嬢様、ドゥラメンテ公爵令息様と一緒に過ごせて幸せですか?」
「……! え、ええ……とっても!」
「「「「!!」」」」
私が頬を染めて微笑みながら頷くと侍女達が悶えていた。
◇◇◇
「シャルロッテ!」
「ディライト様、いらっしゃいませ!!」
翌日、いつもの様に屋敷に訪ねて来てくれたディライト様を笑顔で迎える。
「……」
「……」
見つめ合った私達は昨日の事を思い出して互いに頬を染めて照れ合う。
「シャ、シャルロッテは、き、今日もふ、ふわふわで、か、可愛い……!」
「ディ、ライト様も……です。す、素敵です……!」
何だか知り合ったばかりの男女のような会話になってしまい、驚いた使用人達が三度見していた。
「シャルロッテ……」
「……ん」
私の部屋に入って二人きりになると、ディライト様がそっと私にキスをする。
さっきの照れ照れはもう、どこかに行ってしまったみたい。
「まだ、夢を見ているみたいだ」
「……?」
私がよく分からないという顔をしたらディライト様が優しく笑う。
「ずっと好きだったシャルロッテが俺を見てくれている……」
「大好きです……」
そう言った私がギュッと抱きついたら、ディライト様はますます嬉しそうに笑った。
「あー可愛い……可愛い可愛い可愛い……!」
「!?」
「この可愛さはどこから来るんだろうか」
ギュッと抱きしめながらそう口にするディライト様。
彼の言う“可愛い”はてっきりお世辞のようなものだとばかりずっと思っていた。
(でも……)
これまでを振り返れば、あちこちにディライト様からの“愛”が感じられていた事にようやく気付く。
「……? シャルロッテ、どうして笑っているの?」
「…………ふふ、幸せで」
「幸せ。俺と一緒にいられて……幸せ?」
「はい! とっても幸せです! ディライト様と出会えて本当に良かった!」
「……シャルロッテ……」
───チュッ
元気よくそう答えたら、再びディライト様からの甘いキスが降って来たので、しばらくの間、私達は甘い甘い恋人同士の時間に酔いしれた。
「…………二人っきりはダメだ」
「んっ……」
たくさんたくさんキスをした後、ディライト様が突然そんな事を言った。
どうしてそんな事を? ……と、思えば……
「止めてくれる人がいない!!」
ディライト様がそう叫んだので確かに……と思った。
「…………シャルロッテ。早く結婚しよう」
「!?」
ディライト様が私の左手を持ち上げ、指輪にキスをしながらそんなとんでも発言をする。
「……だが、人妻になってもシャルロッテの可愛さは変わらないからな……むしろ、別の魅力が増す場合も……うん、やはり見せしめの為にも抹消リスト一つずつ潰して回るしかないのかなぁ」
「!?」
ディライト様はそんな恐ろしい発言を、うっとりした顔でため息と共に口にした。
────
「え? 王宮に呼ばれているのですか!?」
「そうなんだ」
このままずっと二人っきりで部屋にいると、例え扉に隙間を開けていても気にせず、ベッドに押し倒してしまいそうなんだ……
などとディライト様がとんでもない事を口にしたので、急遽、侍女達を呼んでお茶をする事にした。
すると、ディライト様がお茶を飲みながらそう口にした。
「おそらくこの間の後始末だと思うんだけど」
「……双子とジョーシン様とミンティナ殿下の処罰ですね?」
「あぁ」
お父様から簡単に聞いた所によると、双子に関しては、連日厳しい取り調べが続いている。
最初は「これは何かの間違いよ! 陰謀よ!!」と叫んでいたイザベル様も最近は流石に参って来たらしい。
「何でも……“ゲームの設定が現実世界? になるとこんな風になってしまうんだわ”“こんな事になるなんて誰も教えてくれなかった”とかまた、よく分からない言葉を使って周囲を困らせているらしいよ」
「……」
「あの変な力の出所が不明すぎて、収監されても永遠に監視下に置かれるだろうと言う見方が強い」
とりあえず、二人でセットみたいな所があるので、引き離され二度と交流も許されないだろうね、とディライト様は言った。
「……私も王宮について行っても大丈夫ですか?」
「もちろん! シャルロッテだって当事者なんだから」
ディライト様のその言葉で、私も王宮に行く事になった。
◇◇◇
───パーティーや舞踏会以外の用事で王宮に立ち入るのは久しぶりかもしれない。
王宮に着いた時、漠然とそう思った。
(ジョーシン様の婚約者だった頃は妃教育の為にほぼ毎日通っていたのに)
「シャルロッテ? どうかした?」
並んで歩いていると、私の様子に思う所があったのかディライト様が顔を覗き込んでくる。
(ち、近っ!)
美しいディライト様の顔を間近で直視するには、まだまだ私は修行が足りない。
私は顔を赤くして頬を染めながら慌てて答えた。
「え……えっと! あのですね、変な気持ちだなと思いまして。あの人の婚約者だった頃は自由な時間が本当に無かったなぁ……とか思ってしまいました。今更ですけどね」
「シャルロッテ……」
ディライト様がギュッと手を握ってくれる。
「これからは少しずつ、シャルロッテがしたい事、してみたかった事、なんでもしていこう? 全部付き合うよ」
「ディライト様……」
二人でそう見つめ合った時だった。
「……おいっ! 貴様らまたやっているのか!? いい加減に離れろ!」
そんな聞き覚えのある声が後ろから聞こえて来た。
出来る事なら振り向きたくない。
処遇が決定するまで大人しくしていてくれればいいのに、と心から思う。
「はぁ……」
ディライト様もため息を吐いた。
「殿下はあれかな? 自ら傷口に塩を塗りたくりたい人なのかな?」
「……そ」
そんな馬鹿な事……と思ったけれど否定出来ない。
「仕方ないよね、そんなに希望するなら塗ってあげよう…………さすが抹殺リスト1位なだけあるよなぁ」
ディライト様はそう呟くとにっこり笑った。
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