【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

文字の大きさ
上 下
40 / 45

40. 悪役にされた令嬢は寂しさを覚える

しおりを挟む


「なっ、なっ……」

  私が断言したその言葉にジョーシン様は青白いを通り越して真っ白になっていった。

「くそっ!  だがシャルロッテ!  私を見限ってディライトを選んでも、ディライトが王になることは無いのかもしれないぞ?  反王政派のヤツらがいるからな!」
「……」
「残念だが、お前だって王妃になれるとは限らな───」
「ジョーシン様」

  私はにっこり笑って言う。

「……っ!  く……その顔は可……!!」
「?」

  ジョーシン様が変な叫び声をあげた。
  とりあえず、無視して続ける。

「ジョーシン様。貴方は本当に私の事をまるで分かってくれていなかったのですね?  私はこれまで一度だって“王妃”という立場を望んだ事はありません」
「な、に?」

  (そう……この人の目には、私はそんな風に映っていたのね)

  イザベル様と同じじゃないの。

「あの頃の私は“好きだと思っていた人”の力になりたかっただけですよ」
「……え?」
「だから、今の私はディライト様が自分の望む生き方が出来れば、私は王妃になんてならなくても構わないのです」
「だが、そうなると反王政派の奴らが……」
「……」

  私は無言のままもう一度にっこりと笑う。
  そんな私の顔を見たジョーシン様が身体を震わせた。

「……シャル……ロッテ!  ま、さかお前もディライトも、さ、最初からこれを狙って……!」
「……」

  ──今頃、気付いても遅いのよ、ジョーシン様。

「あぁ、それから。前にも言いました。気安く私の名前を呼ばないでいただけますか?」
「なっ……」
「……それでは。これから、この先のあなたがどうなっていくのか、楽しみにしていますね」
「待て!  シャル…………うっ」

  シャルロッテと呼びそうになったジョーシン様はディライト様に睨まれて言葉を詰まらせた。
 
「……」
 
  この国の王室はもう終わりね。
  ジョーシン様はこれだし、全く相手にされなくて放心しているミンティナ殿下も問題外。
  国王陛下達も……あれは完全に反王政派の勢いに呑まれている。

  (おそらく近いうちに退位を発表する事になるのではないかしら?)

  これから忙しくなりそう。
  そんな事を考えていたら、目の前にスっと手を差し出される。

  (ディライト様……)

「……そろそろ帰ろうか、シャルロッテ」
「はい……」

  私はそっとディライト様の手を取る。
  そして、寂しさを覚えた。

  (そうだわ……これで終わりなんだわ)
  
  王族の行く末や、イザベル様とマルセロ様の処罰について……まだまだ全てがスッキリするのはこれからだけど、その下地は完成した。もうこれで私の望みはほぼ叶ったわ。
  つまり、それは……
 
  ───ディライト様との契約が終わる事を指している───……


────


「……え?  あの……ディライト様??」
「……」

  帰る事にした私達は、そのまま馬車に乗り込んたのだけど……

「さすがにこの態勢はどうかと思います……!」
「……大丈夫だよ、落としたりしないから」

  これまでも馬車の中での距離は近かった。
  向かい側ではなく、隣に座ったり抱きしめられたり。

  …………では、これは??

「そ、そういう問題では無いです!  何で……何で、ひ、膝……」
「ひ?」
「膝の上に乗せるんですかーー!?」
「ははは!」

  私の訴えにディライト様は楽しそうに笑う。
  何がそんなに可笑しいの?
  私が慌てているのを楽しんでいる??

「そんなの決まってるだろう?  シャルロッテが“ふわふわ”だからだよ」
「ふわ!?  意味が分かりません!」

  ディライト様が苦笑しながら、ギュッと私を抱きしめ抱え込む。

「ふわふわの見た目に、ふわふわの髪、そして抱き心地もふわふわ……こんなにふわふわして可愛いのだから愛でたくて仕方ないんだよ」
「は……」
「シャルロッテの全てが愛しい。本当は会場でもっと見せつけてやりたかったけど」
「けど?」

  ディライト様が苦笑する。

「照れて顔を赤くしたり、嬉しそうに微笑むシャルロッテに心臓を射抜かれた輩が多すぎてね」
「……」
「一人一人、全て抹殺するのはちょっと大変だからこれ以上増やすのは勘弁なんだ」
「!?」

  吹き出すかと思った。
  “抹殺”って例えじゃなかったの!?

  ──チュッ

「ん……」

  ディライト様が額に軽くキスをする。

  (もうすぐお別れなのに何で?)

  もう、イチャイチャする必要なんてないのに……

「シャルロッテ……」
「ディライト……様」

  ディライト様は額だけでなく頬にもキスをたくさんくれたので、馬車の中での私は甘く甘く蕩けさせられてしまった。


───


「シャルロッテ。明日、時間があるなら俺と出かけないか?」
「お出かけ?」

  馬車が我が家について降りた後、玄関の前でディライト様が真剣な表情でそう言った。

「約束しただろう?  デートしようって」
「デート!  2回目の?」

  私の目がキラッと輝く。
  デート!  もうこれで終わりだと思っていたので凄く嬉しい!

「そうだよ」
「行く!  行きます!!  行きたいです!!」 
  
  私はグイグイ近付いて全力で答えた。

「…………ち、近っ!  しかもまた、そんな今すぐ襲いたくなるような目をして……いや、その無邪気さが可愛い……」
「ディライト様?」

  物凄い早口だったので、全く聞き取れなかった。

「何でもない。明日……話すよ」
「明日?」
「それと、お願い事なんだけど……」

  ドキッとした。
  ジョーシン様を引きずり下ろす為に契約したこの偽装婚約。
  同時に私はディライト様から全てが終わったら“願い事”を聞いて欲しいと言われている。

「……まだ、完全に終わりでは無いけれど、明日、聞いてもらえる?」
「は、はい!  勿論です!」
「ありがとう」

  (私にも叶えられる内容だと言っていたけれど、本当に大丈夫かしら?) 

  ちょっとドキドキする。
  だけど、ここまでの結果になったのは全部、ディライト様のおかげだもの。

  (ここまでのお礼として、ディライト様の望みを叶えて……)

  ディライト様を私から解放しないと!
  今はゴタゴタしているから、正式な婚約解消は少し先だけど、それでも。

  (その後の自分の身の振り方も考えなくちゃ……)



  ───その日の夜は全然眠れなかった。

しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...