【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

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33. 悪役にされた令嬢と令息はイチャイチャを見せつける

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  ミンティナ殿下がマルセロ様を見て震えた声を出す。

「う、嘘よ!  だってマルセロは……あなたの髪は」
「……髪の色が変わるだけでこうなるのか……はは、これが僕らが幸せになれるはずの“真実の愛”……」

  ミンティナ殿下に見つけて貰えなかったマルセロ様には同情のような視線が向けられ、大勢の前で“真実の愛”の薄っぺらさを露呈させたミンティナ殿下には冷たい視線が向けられていた。
  そんなこの光景を見て私は思う。
  これが好き勝手に人の気持ちを弄んだ人達の結果なのだと。
  もはや、この会場にいる人達はもう“真実の愛”なんて信じられない。

  そんな中、マルセロ様は明らかに肩を落としてガックリしている。
  そして、目を伏せながら小さな声で呟いた。

「“真実の愛”なんてものは本当にあったのかな……僕の幸せ、本当の幸せは…………ふわふわ」

  (……ん?  マルセロ様、また、ふわふわとか言っている?  気のせい??)

「作られたものでは無い、自分の“本当の幸せ”がどこにあったのか考えるのはいい事だとは思うが……」
「……」
シャルロッテふわふわを狙うのは許せん……」
「?」

  そう口にしたディライト様が、私の腰に腕を回して抱き寄せ、そのまま私を抱え込んだ。

「……ディライト様?」
「…………いや。こうでもしないとライバルばかり増えていく気がして」
「ライバル……ですか?」
 
  何のライバルかしら?  王位継承……は王族に限るし……
  と、私が考えていると、ディライト様がじっと私を見つめる。

「今日のシャルロッテはこんなにも可愛く“俺の色”を纏ってくれているんだ……やはり会場の全員にシャルロッテが誰の婚約者なのか分からせておかないと、俺の抹殺リストが増えるだけ……」
「ディライト様?  何をブツブツ言って──?」

  と、言いかけた所でディライト様が、私の頬にキスをした。

  (ほ、頬!?)

  額へのキスは何度もされたけど、頬!?
  そして、何故、今!?

  (嬉しいけど、は、恥ずかしい……!)

  今日はたくさんイチャイチャすると聞いているし、ディライト様の事なので、何か意味があるのだとは思ったけれど照れるものは照れる。
  私が頬を染めてディライト様を見つめると、ディライト様が何故かしまった!  という顔をして、キョロキョロ辺りを見回すと慌てて私の顔を周囲から隠してしまう。
  
「シャルロッテのその顔は俺だけが見たかった……」
「?」
「あぁぁ、ライバルを減らそうとしているのに、増えていくだけな気がする……もうどうしたらいいのか……」

  ディライト様が困ったように唸っている。

  (ディライト様、様子がおかしいけれど大丈夫かしら?)

  なんて事を考えていたら、
  ミンティナ殿下が身体を震わせたまま、私達とマルセロ様の方に交互に視線を向けた後、その場にガクッと膝をついていた。

「そんな、そんな事って……!  そうよ、わたくし……わたくしの好きな人は……」
「……」

  そう言って激しく後悔している様子のミンティナ殿下を見て思った。

  (もしかして、“魅了”の力が解けている?)

  本当に好きな人は、と言った。
  ミンティナ殿下の本当に好きな人……その先はよく聞こえなかったけれど、それはきっと───……

  (ごめんなさい、ミンティナ殿下)

  私はディライト様の事が好きで彼のこれからの幸せを願っているけれど、その相手はミンティナ殿下では嫌なの。
  自分の力では抗えない双子による“魅了”のせいでこんな事になったのだとは言え、私はやっぱりミンティナ殿下の事も許せない。

  ジョーシン様と同じ様に、始まりはほんの少しの浮気心だったのかもしれない。
  でも、やっぱりそこは王女として自分の立場をしっかり思い直して欲しかった。

  (それに……)

  ジョーシン様もだけど、例え、魅了されていたとしても、あのパーティーでディライト様をあんな風に辱める必要なんてどこにも無かったと思う。
  こっそり話し合いの場を持つ事も出来たはずなのにそれをしなかった。

  (そんなミンティナ殿下には返せない!)

  そうなるくらいなら、いっその事、私が自分の手でディライト様を幸せに───

「シャルロッテ?」
「あ……すみません!」

  私は思わずディライト様の事を強く抱き締め返していた。

「なんで謝るの?」
「だって、苦しかったですよね??」

  私が慌てて離れようとすると、ディライト様が逆に私を抱き込みながら言う。

「まさか!  こんなふわふわで抱き心地の良いシャルロッテの温もりが苦しいはずないだろう?」
「……!」
「これからも、もっともっと抱き着いてくれたら嬉しい。うん、そうだな毎日は譲れない……」
「これから?  ま、毎日……?」

  胸が高鳴った。
  今日で全てを終わらせようとしているのに、ディライト様は……いえ、ディライト様も、私といたいと思ってくれている……?

  そんな嬉しい気持ちでいたら───

「あぁぁ、もう!  さっきから、何でそこでイチャイチャ繰り広げてるのよ!」

  と、まだ青白い顔をしたままのイザベル様が私達に向けて怒鳴り出した。

「マルセロもマルセロで何だか情けない事を言っているし!  冗談じゃないわよ!!  何やってるのよ!!」
「ね、姉さん……」
「“真実の愛”は私達を幸せにしてくれるんだから!!  悪役令嬢は私の幸せの邪魔をしないで!」

  何とも身勝手な事を言うイザベル様。
  しかも、まだ私の事を悪役呼ばわり……私はムッとしながら答えた。

「……邪魔なんてしていませんが?」
「しているわ!  さっきから私の“真実の愛”の相手とベタベタして!」

  (……?  私は今日はジョーシン様とは口も聞いていないのに??)

「イザベル様?  あなたの“真実の愛”の相手は、ジョーシン殿下でしょう?  私は……」
「あぁ、そうだったわ!  シャルロッテ様!  あなたにお返ししなくてはと思っていたのです」
  
  イザベル様が私の言葉を遮りながら言う。

「お返し?」
「ええ、そうですよ!」

  イザベル様はとてもいい笑顔で言った。

「ジョーシン殿下をお返しします!  ですから代わりにドゥラメンテ公爵令息様を私にくださいね?」


  私は自分の耳がおかしくなったのかと思った。

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