43 / 43
終章
エピローグ
しおりを挟む翌日の、私達の結婚式当日はとてもいい天気だった。
そう。まるで、私達を祝福してくれているかのように。
誓いの式を無事に終え、
今、私達は国民の前に自分達の姿を披露する為の待機をしているところだ。
王太子、王太子妃として人々の前に初めて出るのだ。緊張しないわけがない。油断すると心臓が口から飛び出すのでは? と思うくらいガッチガチになっていた。
「そうだ、フィー。昨日の話を聞いて思ったんだけどさ」
ガッチガチになってる私の緊張を解すためか、殿下が話しかけてくる。
「どうしました?」
「いや、フィーが歩むはずだと信じてた小説のストーリーは、あの時……俺がフィーに惚れた時点で破綻してたんだろうなと思って」
「へっ?」
何でそんな話になるのかと思って私は首を傾げた。
「フィーの言うところの俺は、物語に出ては来るがストーリーには影響しないモブ……脇役ってやつなんだろ?」
「え、えぇ。そうですが……」
殿下が脇役である事も包み隠さず話した。
「そんなモブの俺に主要人物であるフィーは愛されちゃったんだよ。俺がフィーに密かな想いを抱くだけで何もしなければストーリーは破綻しなかったかもしれない」
「……!」
「だが、あいにく俺は静かに黙ってはいられなかった。絶対にフィーを手に入れると決めたからな」
「フリード……」
「だから、やっぱりそこでストーリーはもう破綻してたんだよ。あれからフィーが王宮に顔を出していたとしても、ニコラスの婚約者にはならなかったと思う。いや、俺が絶対にさせなかっただろうしな」
「えぇ……?」
確かに、王太子フリード殿下がスフィアの事を好きなんて描写はストーリーの中には無かったから、殿下が私に恋をした時に、ストーリーはすでに破綻していたと言ってもいいのかもしれないけど……
「それに……どうしたって俺はフィーを手に入れる為には何でもしただろうしな」
「……留学しちゃうくらいですものね」
私はクスリと笑う。
「そうだよ。まぁ、何であれ、今日この場を迎えることは必然だったって事だ」
「フリード……」
そう言って私に微笑む殿下の目からは愛が溢れてた。
何て不思議なのだろう。
“悪役令嬢スフィア”は、ただ愛されたかっただけなのに、と泣いていた。
だけど今、“私”は、大好きな人にとても愛されている。
これが現実。
誰かに作られた未来なんかじゃない、今を生きている“私”が自らの意思で歩んでく人生。
だって、私は“悪役令嬢スフィア”ではなく“スフィア”なのだから。
そう。これからは誰よりも愛しい人であるフリード殿下の妃として生きていくスフィアだ。
「さて、そろそろ時間だな。行こう」
「はい!」
殿下の腕に、自分の腕を絡ませバルコニーにへと進み出る。
多くの人が、王太子、王太子妃を一目見ようと集まってくれているのが分かる。
そして、その誰もが私達の結婚を祝ってくれている。その事実が堪らなく嬉しい。
たくさんの人達の祝福の声に、手を振って応えた。
これからこの先、私はこの人の隣を歩いていく。
彼とならどんな困難も乗り越えられる。
「スフィア、愛してるよ……俺の奥さん」
「ええ、私も愛してるわ……旦那様」
王太子と王太子妃ではなく、ただのフリードとスフィアとして微笑み合う。
すると、殿下がチュッと私の唇にキスを落とす。
──一際、歓声が大きくなった。
「!?」
「ははは、可愛い」
殿下はイタズラっ子のように笑った。
お、大勢の前で……な、なんて事を……!!
「大丈夫だ。皆、喜んでる」
「そういう問題では……!」
「だから、もう一度……」
そう言って再び、殿下の顔が近付いてくる。
……私はそっと瞳を閉じてその熱を受け入れる。
私達を祝福する声はいつまでもいつまでも途切れる事無く続いていた。
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
これで完結です。
最初はスフィアが鈍感過ぎて、フリード殿下が不憫でどうなる事やらと思いましたが。
まさか、2人がくっつくまでに10万文字も使うとは……
お気に入り登録も感想もありがとうございました。
私の綴る話を読んでくれてる人がいるんだなぁ、と思うと本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。
(投稿初心者すぎていまだにその事に慣れない)
最後に毎度の事ながら宣伝を……
この話の合間に急遽思い当たってぶち込んだ、
『私の好きな人には、忘れられない人がいる』
は、本編はすでに完結していて番外編を更新中です。
ヒーロー視点の残り2話と、後日談1話を持って完結にする予定です。
そして、新しい話。
『見た目だけは可愛い義妹ではなく、平凡引きこもり令嬢の私に求婚した公爵様は仮の婚約者をご所望のようです!』
予定外にヒーローがポンコツになりそうで……これでいいのかと若干悩んでますが、
ま、いっか! と思ってそのままいきます。
第一話は公開しましたので、もしよろしければ!
それではここまで本当にありがとうございました!
読んでくださった皆様に心よりの感謝を申し上げます(⋆ᵕᴗᵕ⋆)
75
お気に入りに追加
3,253
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(55件)
あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
逆襲のグレイス〜意地悪な公爵令息と結婚なんて絶対にお断りなので、やり返して婚約破棄を目指します〜
シアノ
恋愛
伯爵令嬢のグレイスに婚約が決まった。しかしその相手は幼い頃にグレイスに意地悪をしたいじめっ子、公爵令息のレオンだったのだ。レオンと結婚したら一生いじめられると誤解したグレイスは、レオンに直談判して「今までの分をやり返して、俺がグレイスを嫌いになったら婚約破棄をする」という約束を取り付ける。やり返すことにしたグレイスだが、レオンは妙に優しくて……なんだか溺愛されているような……?
嫌われるためにレオンとデートをしたり、初恋の人に再会してしまったり、さらには事件が没発して──
さてさてグレイスの婚約は果たしてどうなるか。
勘違いと鈍感が重なったすれ違い溺愛ラブ。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ありがとうございます(*^◇^*)
色々、読んでいただけてるようでありがとうございます!
嬉しいです。
そして……すみません(>_<)
その通りですね……やらかしてました……
何て恥ずかしい……
あちこちに散らばってそうなので見つけ次第修正しようと思います……
(もはやどこに散らばってるか分からない……)
ご指摘ありがとうございました!
ありがとうございます"(ノ*>∀<)ノ
しかも、一気読み!
嬉しいです!!
重い愛が大好物とは……! (一緒!!)
この話はもう、フリードにはとことん溺愛してもらおうと思って最後まで突き進みました。
お気に召した様で良かったです。
私の作品はヒーローがとにかくヒロインラブばっかりなので 笑!
他の作品もお好みに合えば嬉しいのですが。
お読みいただき、本当にありがとうございました!!