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終章
エピローグ
しおりを挟む翌日の、私達の結婚式当日はとてもいい天気だった。
そう。まるで、私達を祝福してくれているかのように。
誓いの式を無事に終え、
今、私達は国民の前に自分達の姿を披露する為の待機をしているところだ。
王太子、王太子妃として人々の前に初めて出るのだ。緊張しないわけがない。油断すると心臓が口から飛び出すのでは? と思うくらいガッチガチになっていた。
「そうだ、フィー。昨日の話を聞いて思ったんだけどさ」
ガッチガチになってる私の緊張を解すためか、殿下が話しかけてくる。
「どうしました?」
「いや、フィーが歩むはずだと信じてた小説のストーリーは、あの時……俺がフィーに惚れた時点で破綻してたんだろうなと思って」
「へっ?」
何でそんな話になるのかと思って私は首を傾げた。
「フィーの言うところの俺は、物語に出ては来るがストーリーには影響しないモブ……脇役ってやつなんだろ?」
「え、えぇ。そうですが……」
殿下が脇役である事も包み隠さず話した。
「そんなモブの俺に主要人物であるフィーは愛されちゃったんだよ。俺がフィーに密かな想いを抱くだけで何もしなければストーリーは破綻しなかったかもしれない」
「……!」
「だが、あいにく俺は静かに黙ってはいられなかった。絶対にフィーを手に入れると決めたからな」
「フリード……」
「だから、やっぱりそこでストーリーはもう破綻してたんだよ。あれからフィーが王宮に顔を出していたとしても、ニコラスの婚約者にはならなかったと思う。いや、俺が絶対にさせなかっただろうしな」
「えぇ……?」
確かに、王太子フリード殿下がスフィアの事を好きなんて描写はストーリーの中には無かったから、殿下が私に恋をした時に、ストーリーはすでに破綻していたと言ってもいいのかもしれないけど……
「それに……どうしたって俺はフィーを手に入れる為には何でもしただろうしな」
「……留学しちゃうくらいですものね」
私はクスリと笑う。
「そうだよ。まぁ、何であれ、今日この場を迎えることは必然だったって事だ」
「フリード……」
そう言って私に微笑む殿下の目からは愛が溢れてた。
何て不思議なのだろう。
“悪役令嬢スフィア”は、ただ愛されたかっただけなのに、と泣いていた。
だけど今、“私”は、大好きな人にとても愛されている。
これが現実。
誰かに作られた未来なんかじゃない、今を生きている“私”が自らの意思で歩んでく人生。
だって、私は“悪役令嬢スフィア”ではなく“スフィア”なのだから。
そう。これからは誰よりも愛しい人であるフリード殿下の妃として生きていくスフィアだ。
「さて、そろそろ時間だな。行こう」
「はい!」
殿下の腕に、自分の腕を絡ませバルコニーにへと進み出る。
多くの人が、王太子、王太子妃を一目見ようと集まってくれているのが分かる。
そして、その誰もが私達の結婚を祝ってくれている。その事実が堪らなく嬉しい。
たくさんの人達の祝福の声に、手を振って応えた。
これからこの先、私はこの人の隣を歩いていく。
彼とならどんな困難も乗り越えられる。
「スフィア、愛してるよ……俺の奥さん」
「ええ、私も愛してるわ……旦那様」
王太子と王太子妃ではなく、ただのフリードとスフィアとして微笑み合う。
すると、殿下がチュッと私の唇にキスを落とす。
──一際、歓声が大きくなった。
「!?」
「ははは、可愛い」
殿下はイタズラっ子のように笑った。
お、大勢の前で……な、なんて事を……!!
「大丈夫だ。皆、喜んでる」
「そういう問題では……!」
「だから、もう一度……」
そう言って再び、殿下の顔が近付いてくる。
……私はそっと瞳を閉じてその熱を受け入れる。
私達を祝福する声はいつまでもいつまでも途切れる事無く続いていた。
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
これで完結です。
最初はスフィアが鈍感過ぎて、フリード殿下が不憫でどうなる事やらと思いましたが。
まさか、2人がくっつくまでに10万文字も使うとは……
お気に入り登録も感想もありがとうございました。
私の綴る話を読んでくれてる人がいるんだなぁ、と思うと本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。
(投稿初心者すぎていまだにその事に慣れない)
最後に毎度の事ながら宣伝を……
この話の合間に急遽思い当たってぶち込んだ、
『私の好きな人には、忘れられない人がいる』
は、本編はすでに完結していて番外編を更新中です。
ヒーロー視点の残り2話と、後日談1話を持って完結にする予定です。
そして、新しい話。
『見た目だけは可愛い義妹ではなく、平凡引きこもり令嬢の私に求婚した公爵様は仮の婚約者をご所望のようです!』
予定外にヒーローがポンコツになりそうで……これでいいのかと若干悩んでますが、
ま、いっか! と思ってそのままいきます。
第一話は公開しましたので、もしよろしければ!
それではここまで本当にありがとうございました!
読んでくださった皆様に心よりの感謝を申し上げます(⋆ᵕᴗᵕ⋆)
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(55件)
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ありがとうございます(*^◇^*)
色々、読んでいただけてるようでありがとうございます!
嬉しいです。
そして……すみません(>_<)
その通りですね……やらかしてました……
何て恥ずかしい……
あちこちに散らばってそうなので見つけ次第修正しようと思います……
(もはやどこに散らばってるか分からない……)
ご指摘ありがとうございました!
ありがとうございます"(ノ*>∀<)ノ
しかも、一気読み!
嬉しいです!!
重い愛が大好物とは……! (一緒!!)
この話はもう、フリードにはとことん溺愛してもらおうと思って最後まで突き進みました。
お気に召した様で良かったです。
私の作品はヒーローがとにかくヒロインラブばっかりなので 笑!
他の作品もお好みに合えば嬉しいのですが。
お読みいただき、本当にありがとうございました!!