【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea

文字の大きさ
上 下
43 / 50

42.

しおりを挟む


「本当に使えない!  私の幸せはどうなるのよ!?」
「知った事か!  そんな事よりお前のせいで俺は……俺は……こんな事ならお前の言う事なんて聞かずに、自分の思う通りにしておけば……」
「ふんっ!  だとしてもあなたの未来は破滅しかないわよ!  へっぽこ男!」

  私の目の前で、ポンコツマッフィーの野郎とヒロイン……ヒロイン?  元……ヒロイン?  が盛大な言い合いを始めた。

「あの二人には好きに言わせておけば良いよ。楽だよね、勝手に悪事を暴露してくれるんだから」

  フニフニフニフニフニフニフニ……

  ロディオ様はそう言ってニコニコしながら私の頬をふにふにする。
  勝手に悪事を暴露……
  そう思ってチラリと言い合いしている二人の方へと視線を向ける。

「何だと!?  勝手に決めるな」
「私には分かるのよ!  へっぽこ男は失敗するってね!  だから、この私がわざわざ助けてあげようとしたのに!」
「~~前々から思っていたが、なんでお前はそんなに偉そうなんだよ!?」

  (……確かに。ヒロインは平民なのに、よく考えたら侯爵子息になんて態度を……すごいなぁ)

「そんなの“私だから”に決まってるでしょう!?」
「は?  答えになってないだろ!!」

  そんな二人の様子には、会場内の人々も唖然とするしかない。
 
  フニフニフニフニフニフニフニフニ……

「ソフィア」
「ロディオ様?」
「あんなのより、俺を見て?」
「え?  でも……」

  フニッ……

  ニッコリと微笑んだロディオ様が、私の頬にキ……モニョモニョ……をする。

  きゃぁぁぁーーー
  もうやめてぇぇぇーー
  これ以上は見たくないぃぃぃーー
  うぉぉぉぉぉーー

  当然ながら令嬢……?  達からは再び悲鳴が上がる。
  
「ソフィア……俺はもう、頬だけじゃ足りない」
「え?  足りない?」
「もっと、ふにふに……いや、たくさん君に触れたい。頬以外も」
「!?」

  (だから、ロディオ様は何を言い出しているのーー!?)

  フニッ、フニッ、フニッ……

  ロディオ様は頬に何度もキ……モニョモニョ……をしながらそんな破壊力満点な事を口にする。

「だ、駄目ですよ……」

  私はぐらつきそうになる心を抑えてそう言う。

「何で駄目?」
「だって、ロディオ様には運命の…………あっ……」

  (運命の人であるはずの“ヒロイン”は、もうあんなだー…………)

「運命?  運命の人?」
「え、えぇ……」

  (ロディオ様の“運命の人”は今、あそこで悪事の暴露をしています……)

  なんて言えない!

「運命……か」

  ロディオ様が、うーんと考え込む。

「俺は今まで“運命”なんて信じた事は無かったけど“ソフィア”と出会えた事は運命だと思いたいかな」
「え?」
「可愛い可愛い俺の嫁が、猫の鳴き真似して迷い込んで来た。なかなか無い出会いだと思う」
「っ!」

  フニフニフニフニフニ……

「あれは忘れて下さー……」
「無理だよ。こんな最高に可愛い猫だったなんてさ。迷い込んで来てくれてありがとう、ソフィア」
「~~!  何を阿呆な事を言ってるんですか……」
「阿呆な事?  そんな事は無い。俺の未来の嫁が猫のフリしてやって来たんだよ……ははは」

  (何でそんなに嬉しそうな顔して笑うの……)

  ドキドキが、トキメキが……止まらなくなるじゃないの。
  “俺の嫁”
  この言葉が、聞こえる度に言いたくなるの。
  あなたが好きだと。
  ……ねぇ、言ってもいいかしら?

  フニフニフニフニフニフニ……

  何故か、ふにふにばっかりしてくる、へんた……ゲフンゲフン……だけど、それでも好きですって。
  私はじっとロディオ様を見つめる。

  フニ!!

  私に見つめられたロディオ様が動揺したのか、ふにふにする手が止まった。

「ソフィアさん!?  な、なんて目で……見る……んですか……」
「?」
「あー……うん、ソフィアさん。やっぱり今すぐにでも部屋を移動して、朝までふにふにー……」

  と、ロディオ様が、とんでもなく際どそうな事を言いかけた所で、ずっと騒いでいた二人の罵り合いがだいぶ確信的な話にまで発展していた。

「何でそこまでしてお前もソフィアを殺したいんだよ!?  金か?  何してもお前には金は入らないだろ!?」
「お金?  違うわ!  私は未来の夫となるべき人と結ばれたいだけよ!」
「意味が分からない!  誰だよ、お前みたいな奴の未来の夫!」

  ヒロインは、やれやれと言った視線をマッフィーの野郎に向ける。

「は?  なんで分からないのよ。さすが、へっぽこ。そんなのロディオ様に決まってるでしょ?  ロディオ様は私を愛するようになるんだから!」
「はぁ?  お前の目は節穴か?  信じたくないが、ロディオの奴はどこからどう見ても……」
「だから、正しい道に戻すんじゃなーい。目障りな女が消えれば彼の目は覚めるの。運命も元通りになる、というわけよ!」

  (…………!)

  ヒロインはどこまで行っても“ヒロイン”で。少し前までの自分を見ているような気持ちにさせられた。

  (私はこんな人とロディオ様に結ばれて欲しいなんて思ってしまったんだ)

「……ソフィア?」
「ちょっと、ヒロ……リンジーさんの所に行って来ます」

  私はロディオ様の腕の中から抜け出す。

「え、いや、ソフィア危な……」
「大丈夫です。ちゃんと距離は取りますし、いざとなったらマッフィー……様を盾にしますから」
「へ?」

  ポカンとした顔のロディオ様に、にっこり笑顔を向けて私はヒロインの元へと近付く。
  
  (そろそろ、二人の暴露大会も終わりに近付いて来たから捕縛される頃……)

  よく見れば会場の入口に、明らかにパーティー客とは違う雰囲気の人達がいる。捕縛の待機をしているんだと思う。
  捕まってしまってはヒロインとはもう会えなくなってしまうもの。
  ポンコツマッフィーの野郎は、もう正直どうでも良いけれど、ヒロインは。
  ヒロインとだけは話しておきたい。

  (それにしても……ロディオ様はこれを狙っていたのね……)

  聞かなくても何となく分かる。
  この舞台を整えたのはロディオ様だ。

  (だって、そうでなくちゃパーティーの主催者であるエレペン伯爵がここまで黙っているはずないもの)

  ロディオ様ってすごいなぁ。
  うっとりした顔で、私の頬をふにふにしてる時は、大丈夫かしら?  なんて思ってしまうけど。

  (カッコよくて頼りになって……そんなの、好きになってしまうわよ)

  だから、ヒロインがロディオ様に固執する気持ちも分からなくはない。
  しかも、ここは小説の世界で自分が主役……ヒロインだという自覚があるなら尚更。

  ──だけど、もうロディオ様をヒロインにはあげたくない。
  人の命を軽く見てくるような人を私はヒロインだとは認めない!

  それならロディオ様は…………私が幸せにするわ!
  私はそう決めた。

 
しおりを挟む
感想 544

あなたにおすすめの小説

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない

天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。 だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...