【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea

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「いったい、どんな卑怯な手を使ったのかしら?」
「卑怯……」
「金だけしか取り柄のない男爵令嬢の身分で、図々しいとは思わないの?」
「図々しい……」
「大した容姿でもないくせに色目でも使ったの?」
「色目……」

  今、私は絡まれていた。
  マッフィー様が去った事からとりあえず今日一番の脅威は無くなったので、安心し、疲れもあったのでそっと会場の隅で休んでいたら、突撃された。

  ちなみに、肝心のロディオ様は先程の名演技のせいで、たくさんの人に捕まっていて身動きが取れずにいる。かなりの質問攻めにあっているらしく揉みくちゃにされていて、少し申し訳ない気持ちになった。
  そうなると、残された私に向けられるのは令嬢達からの鋭い視線!
  最初は鋭い視線と陰口だけだったけれど、やはり黙っていられない人もいるわけで。

  とりあえず、こうなる事は分かっていたので驚きはさほど無い。

  (だけど……)

  一つだけ解せない事がある。

  (何でよりにもよって“この人”が現れちゃったの?)

  今、取り巻きを従えながら私に詰め寄っているのは、
  アンジェーラ・トンタス侯爵令嬢。
  彼女はまさにこの小説の世界での悪役令嬢!
  
  ……出番が早過ぎるでしょ。

  悪役令嬢、アンジェーラはヒーローの事を幼少期から慕っている。
  押せ押せグイグイな彼女はヒーローの婚約者となる事をずっと夢見ていた。身分も年齢もヒーローと釣り合っているのは自分だけよ──と。
  しかし、ぽっと出のヒロインに全てを持っていかれた悪役令嬢、アンジェーラは当然のようにヒロインに対して嫌がらせを行うようになる。
  定番だけどそれがヒーローの怒りを買ってしまい、皮肉にもヒーローとヒロインの中を深めるきっかけとなる。

  ……のだけど。

  (人違いですよ、悪役令嬢さんアンジェーラ様)

  悪役令嬢あなたが、ネチネチ攻撃するのは私ではなくヒロインよ?
  気が早すぎますって!

  てっきり、小者令嬢が来るくらいだと思っていたらまさかのラスボス!
  今ここで、下手に滅多打ちにして悪役令嬢の彼女に退場されてしまうと、半年後のヒーローとヒロインの仲を深める役がいなくなってしまう。
  二人の出会うきっかけとなるはずの殺される役目の私が仕事放棄を目指してる今、仲を深める役まで、こんな所でいなくなるのはさすがにどうかと思う。

  なので、私は嫌味攻撃を適当に受け流すことに決めた。
  でも、それは当然だけど火に油を注ぐようなもの。当然、アンジェーラ様は怒り狂った。

「あ・な・た・ねぇぇぇ?  さっきから私を舐めてるの?」
「いえ?  決してそんなつもりは無いのですが。申し訳ございません」
「謝って済む話では無いわ!  分かっているの?  私は侯爵令嬢!  あなたは無駄に金だけはあるたかが男爵令嬢よ!!」
「存じております」

  (また金だけの男爵令嬢と言われたわ)

  その通りなんだけど言われ過ぎて耳にタコが出来そうよ。
  こういう風にバカにしている人達も、大抵金策に窮した時は手のひらを返すようにヘコヘコ頭を下げてくるのだけれど……

「分かっているなら弁えなさい!」
「はぁ……」

  気の無い返事を返してしまったら再び睨まれた。

「まぁぁ!  アンジェーラ様に対してなんたる態度!」 
「ちょっとロディオ・ワイデント侯爵子息様に近付けたからといって調子に乗っているんだわ!」
「どうせ、その貧相な身体で無理やり迫ったのよ!」
「何てはしたないのかしら!」

  すると、今度は悪役令嬢の取り巻きA令嬢(子爵令嬢)とB令嬢(男爵令嬢)が私に攻撃を始めた。
  アンジェーラ様はその様子を見てニヤニヤ笑っている。

  (この取り巻き令嬢達って、小説の中でアンジェーラ様が断罪される時、コロッと手のひらを返すのよね)

  ───私達はアンジェーラ様に脅されて彼女を虐めただけなんですーー……
  ───こ、怖くて……逆らえなかっただけなんですーー……

  (ノリノリでヒロイン虐めていたのによく言うわね、と思った場面シーンの一つだったわ……)

  さて、彼女達はどうしたものかしら?
  少し考える。
  
  …………うん、邪魔ね。

「卑しそうなあなたの事だから、女性慣れしていないロディオ様を無理やり騙して……」
「あの、お言葉ですが……大丈夫ですか?」

  私は、悦に入って得意そうに語っていたA令嬢の言葉を遮るようにして口を開いた。
  当然、話を遮られた彼女はムッとして眉を顰めて私を見る。

「……何がよ!」
「いえ、さっきから私の事を散々に言って下さっているようですが、大丈夫かしらと思いまして」
「?」

  はぁ? って顔をされた。どうやら私が何を言いたいのか分からないらしい。

「だって、あなた……いえ、あなた達の物言いはどう考えても、ロディオ様も馬鹿にしているようにしか聞こえなかったものですから」
「「は?」」

  取り巻きの二人の表情が分かりやすく固まった。

「……先程、トンタス侯爵令嬢様から身分のお話がありましたけど、お二人はその……失礼ですけど子爵家と男爵家の方……」
「何が言いたいのよ!」
「そうよ!」

  私は、ふぅ、とため息を吐きながら続ける。

「ですから、もしも、ロディオ様に今、この話が耳に入ってしまったら、あなた達は無事でいられるのかしら、と心配になってしまって」
「「……!!」」

  二人の顔色が分かりやすく変わった。

「まさか、あなた告げ口する気!?  余計な事を言うんじゃないわよ!」
「そうよ!  それに私達は決してロディオ様を馬鹿にしたわけじゃないわ!!」

  取り巻き令嬢達が必死にそう叫んだ、まさにその時、後ろからとても冷たい声が聞こえて来た。

「へぇ…………じゃぁ、君達は誰を馬鹿にしたのかな?」
「「ひっ!?」」

  その後ろから聞こえて来た声は、その場が凍り付いてもおかしくない程の冷たさだった。

 
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