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3. 婚約破棄宣言の裏では
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時は少し遡り、婚約破棄宣言をしたパーティーの後。
エイダンは「どういう事か説明してください!」と、騒ぐ側近や家臣を無視してベリンダを連れて私室に引っ込んでいた。
「ベリンダ! やったぞ! 遂に皆の前で言ってやった」
「エイダン殿下……いえ、エイダン様、あれ……本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫、とは?」
首を傾げるエイダン。
ベリンダは目を伏せて言いにくそうに告げる。
「フレイヤ様が私たちを虐めた……という“嘘”の件です」
「ああ! それか」
どこか心配顔で訊ねるベリンダに、エイダンは自信満々に頷いた。
「本来、何の落ち度も無いフレイヤを私の婚約者の座から引きずり下ろすにはあれくらいの嘘は必要だ」
「エイダン様……でも、フレイヤ様がそんなことはやっていないと主張したら……」
エイダンはそっと心配顔のベリンダを抱き寄せる。
「ははは、大丈夫さ。フレイヤはあの場で否定しなかったしな。後から色々言ってきても“今更遅い”だよ」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「あの場で否定もせず、反対意見でフレイヤを庇う者が居なかった。その時点でもう私の勝ちさ!」
───唯一の自分の婚約者と認められていた公爵令嬢が未来の王妃としては相応しくないと脱落した──そうなれば、他にもう“公爵令嬢”の候補者はいない。ならば、私が望む花嫁を迎えたっていいはずだ!
(それでも万が一、うるさい奴らが黙らない場合は別の公爵家に恩でも売ってベリンダを養女にさせればいい!)
それで形式は“公爵令嬢”が正妃となるしな! それで問題はマルっと解決だ!
───エイダンはそう思い込んでいた。
「フレイヤも昔こそ素直で可愛かったが……成長と共にどんどん生意気になっていったんだ」
「まあ! そんなに?」
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「フレイヤの奴……すぐに私の述べた提案に口を出してくるんだ。ちょっと自分の方が講師から優秀だと褒められているからと調子に乗ってな!」
「そんな! 王太子殿下はエイダン様なのに……」
「そうだろう? 魔力もそうさ。フレイヤはちょっと珍しい光の魔術が使えるからと言って私を見下してくる!」
「酷いですね!」
「ベリンダ……君は優しいな。だからこそ、私は君が望む正妃の地位を君に与えたい」
「ふふ、エイダン様……ありがとうございます」
エイダンは自分のこんな愚痴を嫌な顔一つせずに優しく聞いてくれるベリンダを愛しく思い、抱きしめてキスをする。
「あ、エイダン様……ダメですよ。こんな所で……」
「ははは、何を躊躇う? ここは私の私室だぞ? 私が呼ぶまで誰も入っては来ない」
「ん……そう、ですけど……」
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「時代遅れとしか思えないような取り決めで、フレイヤが私の婚約者と決められたが……私は本当に愛せる人を探していた」
「本当に愛せる人ですか?」
「もちろん、君の事だよ? ベリンダ」
「エイダン様……! 嬉しい!」
ベリンダが嬉しそうに笑ってエイダンに抱きつくと、エイダンはそのまま、もう一度ベリンダにキスをする。
そしてベリンダをベッドに押し倒すと慣れた手つきでベリンダのドレスを脱がしにかかった。
─────……
翌朝、こっそり部屋に泊めたベリンダを一旦、屋敷に帰すとエイダンは父親である国王に呼ばれた。
「……お前は本気でフレイヤ嬢との婚約を破棄するのか?」
「当然です。その気がなくてあんな場で発表するはずがありません!」
国王は息子の自信に満ちた表情でのその受け答えに愕然とする。
「バカだ……とは、思っておったが……ここまで、とは……」
「父上? 何かおっしゃいましたか?」
「……お前はあの取り決めをどうするつもりなのだ?」
現時点で正当な王位継承権を持つのは王妃が産んだ子は一人だった為、エイダンのみ。
そして、伴侶になれる公爵家の血筋を持つ丁度いい年齢の令嬢もフレイヤ嬢のみ。
「そんなもの新しく変えていけばいいではありませんか! 今は貴族だって自由恋愛の時代ですよ? そんなに言うならどうぞ、ベリンダを別の公爵家の養女に──」
「エイダン! お前はなぜ、王家が代々公爵家の血筋を持った令嬢を正妃に据えて、跡継ぎも正妃の子に限定しているのか分かっておらんのか!」
何度も何度も言って聞かせたはずなのに。
その上で、フレイヤ嬢を大事にするようにと伝えたはずなのに。
国王は本気で頭を抱えた。
「えっと? 聞いた気はしますが……」
「この魔力を維持するためだと何度も言っているだろう!」
「あー……そういえば」
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なんて間の悪いことよ……と、国王は嘆いた。
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自分が視察で城を開けていた日の事だった。
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