【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
16 / 35

第16話 この幸せが続いて欲しいと願う

しおりを挟む


 器用に私を抱き抱えたまま、寝室のドアを開けたベルナルド様は、そのままベッドの真ん中に私をそっと降ろした。

(や、やっと降ろして貰えたわ)

 なんてホッとしたのもつかの間。
   
「クローディア……」
「ベルナルド……様」

 甘く優しい響きで……そして、何より大切そうに私の名前を呼んだベルナルド様が、そのままチュッと私の唇を奪う。

「!」

(ベッドの上でこういう事をするのは……て、照れるわ)

 場所が場所なだけに何だかいけないことをしている気持ちになる。
 でも、とっても“幸せ”
 そうも思う。

 しばらく互いに言葉を発さずにお互いを求め合っていたら、ベルナルド様がそっと訊ねてきた。

「……クローディア、ガウンそれ、脱がしてもいい?」
「!」

 いい?  なんて口ではそう聞いているくせに、既にベルナルド様の手はガウンを脱がしにかかっている。
 これはもう脱ぐ以外の選択肢がない。

(恥ずかしい───でも、やっぱりもっと私に悩殺されてほしい!)

 そう思った私は覚悟を決めて頷いた。
   
「……ん」

 そうしてガウンは脱がされ、侍女曰く、「陛下はこれでメロメロになるはずです」というラブラブ恋人用の夜着姿だけになった。
 ベルナルド様がじっと私を見つめる。

「クローディア……」

 そして、見る見るうちにその端正なお顔が真っ赤になっていった。

(え!?)

「あの、ベルナルド様、お顔が……真っ赤っかです」
「知っている…………だってクローディア……なにこれ?  可愛すぎるよ」
「えっと……悩殺、されてくれました?」

 私のその言葉にベルナルド様は顔が赤いままフッと笑う。

「悩殺されまくりだよ……」

(やったわ!)

 嬉しくて私も微笑む。

「……!  良かったです。こ、これ、ラブラブ恋人用の夜着なんです」
「ラブラブ恋人用?」
「はい!  だから、可愛いのも当然で──」

 ベルナルド様は人差し指で私の唇を押さえる。

「そうじゃない、クローディア。君が可愛いから、その夜着も可愛いんだよ」

(───ん?  どういう意味……?)

 私はパチパチと目を瞬かせた。

「クローディア……俺の可愛い可愛いお嫁さん。今の君のその格好が“ラブラブ恋人用”なら、その通りにしないといけないよね」
「え?  きゃっ!?」

 そう言いながらベルナルド様が私を抱き寄せ優しく包み込む。

「……クローディアはどこもかしこも柔らかい」
「え?  ……そ、うですか?」

 ベルナルド様はチュッチュッと音を立てながら私の身体に触れていく。

「そうだよ。ここも、ここも……全部甘くて……柔らかい」

 “ここ”と言いながら、どんどんその場所に口付けをしていくベルナルド様。
 少し、擽ったい。
 だけどこれは──……

「……だ、抱きしめるだけって言ったじゃないですか!」
「それは眠る時だよ。眠る前の今は……もう少しクローディアを味わいたい」
「なっ!?  それは、へ……」

 屁理屈と言うのではありませんか?
 私のそんな抗議の声は、優しく唇を塞がれて言葉にならなかった。




「───好きだよ、クローディア。俺は君が大好きだ」
「……!」

 私の身体のあちこちを堪能したベルナルド様が、今度は私を押し倒しながら耳元で愛を囁いていく。

(あぁ、もう私の頭の中はトロトロだわ)

「私……もです……んんっ」
「クローディア、君がファーレンハイトこの国で、幸せだ、ここに来て良かったな、そう思える国となるよう俺はこれから努力していくよ」
「も、もう既に私は幸せですよ?」

 ベルナルド様と出会って唯一の味方だったお母様から受けていたのとは違う “愛”を知った。
 誰かを愛しいと思う気持ち。
 ベルナルド様あなたを幸せにしたいと思う気持ち───……

 そう考えた時、ポゥッと私の身体が熱くなった気がした。
   
「そうかな?  でもまだまだ、足りないよ」
「……!」
「これから、もっともっと君を幸せにするよ。俺は欲張りだからね。国も愛する人も全部幸せにしたいんだ」
「ベルナルド様……」

 それはベルナルド様らしい考えね、そう思って思わず笑みがこぼれる。

「それなら、私にもそのお手伝いをさせてくれますか?」
「勿論だ。クローディアが一緒に頑張ってくれたら俺も嬉しい」
「……」

 胸がキュッとなった。

(なんて嬉しい言葉をくれるのかしら?)

 この国での私は、力があっても無くても関係ない。
 “出来損ない”とも“無能の姫”と呼ばれない。
 一緒に頑張ろうって言ってくれる。
 そのことが堪らなく嬉しい。

「……ベルナルド様。あなたはご存知だと思いますが、私の祖国は緑豊かで自然災害も少なく、特殊能力で手厚く守られているような国です」
「うん」

 私の周りにいた人たちは、最低な人ばかりだった。
 けれど、それでもあの国に暮らしている民はいつも幸せそうだった。

「私はあの国では何の役にも立てませんでした……ですが、この国では皆の幸せの為に頑張りたいです」
「クローディア」

 ベルナルド様が私の上に覆い被さったまま、顔を近付けて来る。
 そのまま甘くて幸せな口付けが降って来た。
 だから、こう願わずにはいられない。

 ────このまま、この幸せな瞬間が続きますように、と。



 そして、ベルナルド様は本当に私を抱きしめて眠ることを一切譲らなかった。

「ほ、本当に……一つのベッドで……ね、眠るのです、か?」
「うん。大丈夫だ、クローディアが俺の妃になる事は決定しているから誰も怒らない」
「問題はそこではないのですが……」
「そう?」

 そうして一緒に横になり転がったベッドで後ろからギュッと抱きしめられる。

(こんなのドキドキしすぎて眠れる気がしないわ!)

 なんて当初こそ興奮していた私だったけれど、
 ──すごく温かい。
 知らなかったわ、人の温もりってこんなに温かいものだったのね。
 なんて、ベルナルド様の温もりを堪能していたら、だんだん眠気に襲われた。
 私がウトウトし始めたのを感じ取ったベルナルド様が耳元で優しい声で囁く。
   
「…………おやすみ、クローディア。よい夢を」
「ベル……ナ……ルド、さま」

 そのまま私は眠りに落ちた。
   


──────



 暫くすると、スースーと軽い寝息の音が聞こえて来た。

(どうやらクローディアは眠ったみたいだ)

 ……良かった。
 かなり(俺ががっついたせいで)興奮していたから、眠れなかったらどうしようかと思ったが。

「ああ、クローディアは本当に可愛いな……」
    
 俺はすやすや眠るクローディアの可愛い顔を覗き込む。

「……」

(こんな女性に会ったのは初めてだ)

 今まで自分が出会った女性たち──特に身分の高い女性は、笑顔の裏に懸命に隠してはいるが高いプライド、傲慢な性格……そういった内面が滲み出ていたものだけど。
 だが、クローディアは違う。

「こんな素直で真っ直ぐで可愛い王女がいるなんて……」

 こんないい子を虐げていたアピリンツ国の奴らは何を考えていたのか。
   
(力が無いから……か)

 軽くため息を吐く。

ファーレンハイト我が国では必要ないものでも、小国のアピリンツにとっては力の有無が大事な問題なのは分からなくもないが……だからと言って」

 あんなにも自分を卑下する程にまで追い詰めるのは絶対におかしい。
 間違っているだろう。
   
(クローディアはずっと一人で耐えて来たんだ)

 側妃の娘、クローディア。
 その側妃は既に亡くなっている。
 きっとその時から彼女は一人だった。

「……っ」

 起こさないように気をつけながら、ギュッとクローディアを後ろから抱きしめる。
 柔らかい身体、どこか漂う甘い香り。
 そして、可愛いデザインながらも悩殺的な格好。

(全く……悩殺されまくりだよ!)

 本音は今すぐ手を出したい気持ちを必死に押えて、俺は眠っているクローディアの髪を手に取りそこにキスを落とす。

「クローディア。俺は必ず君を幸せにする。だから、毎日その可愛い笑顔を俺に見せてくれ」

 クローディアが隣にいて笑ってくれるだけで俺も嬉しい。幸せだ。
 何でもやれる気がしてくる!

「…………だが、アピリンツ国はこのまま大人しくしてくれるだろうか」

 父王が亡くなったこと、クローディアをこのまま娶ること……
 抗議も入れて送った手紙はもうすぐアピリンツ国に届くだろう。

「……だが、何があっても俺はクローディアを守るだけだ。手放さない」

 そう呟いて俺は温かくて柔らかいクローディアを抱きしめながら眠りについた。

しおりを挟む
感想 162

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

処理中です...