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閑話③ (レインヴァルト視点)
しおりを挟む「待て! フィオーラ!」
俺の静止も聞かずにフィオーラは校門へと向かって行く。
「くそっ!」
俺はおよそ、王子らしくない言葉を吐く。
ショーンにでも聞かれたらお説教コース間違いなしだ。だが今はそれどころじゃない。
どうしてこうなった?
わざわざ入学式の在校生スピーチの時間を作り、本来より1時間以上早く登校したのに。
どうしてなんだ。
俺もフィオーラも、このまま、あの女には関わりたくない。
いや、関わらせたくない。
今後の事を思えば会う事もせず関わる事もしないで済むのが1番良いに決まっている。
そうなれば良いと思っていたし、実際そうしようと思っていた。
その為には入学式での出会いは避けるべきだったんだ。
そうすれば俺達とあの女の接点は無くなる……と思っていたのに。
俺は頭を抱えた。
「畜生! どう足掻いても出会ってしまうものなのか……?」
迂闊だった。会場までの道を変えるべきだった……
どうしてこのタイミングであの場所を通る事になったんだ? 偶然なのか?
まさか、出会いは避けられない運命だとでも言うのだろうか。
そこで俺は過去にどう足掻いても変える事が出来なかったあの事を思い出した。
(そうだ……アレも、そうだった……そう。まるでそうなる事が定められているかのように……)
俺はその事実に思い至りゾッとする。
もし、そうなら。
この先に待ってる未来もーー……?
俺は知っている。
知っていて黙っている。
今朝からフィオーラの様子がおかしかった事も。
それが何による事なのかも。
フィオーラが何に怯えているのかも。
全部知っていて黙っている。
あんなに無意識に固く拳を握るほどなんだ。
フィオーラは今日という日を迎える事をかなり怯えていた。
──当たり前だ。悪夢のような1年の始まりの日なのだから。
だから、少しでも緊張を解してやりたかった。
少々、過剰なスキンシップをとった自覚はあるが。
(いや、だってあんな顔で見てくるのは反則だろ……)
結局俺は、逃げ続けていて、フィオーラに最も大事な事が言えていない。
2年前から築いた今の関係があまりにも居心地が良過ぎて。
フィオーラが俺と笑って話してくれるのが嬉しくて。
素の自分でフィオーラと言い合いしたり、からかってみたりして、その反応を密かに楽しんだりして。
いつからかフィオーラが婚約解消を口にしなくなった事に俺は密かに喜びを感じていて。
だけど、俺はそんな時間を失うのが嫌で、出来るだけ引き伸ばしたくて、今も話をする事から逃げ続けている狡いヤツのままなんだ。
「……俺のせいか」
俺がそんな甘い事を考えていたから今、フィオーラは……
俺は静かにため息をついた。
だけど。
運命だろうと何だろうと今度こそはこの手で絶対に覆してみせる。
────俺は、もう二度とフィオーラを死なせたりしない。死なせるわけにはいかない。
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