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閑話 ④ (レインヴァルト視点)
しおりを挟む「はぁ…………ヤベぇ。思わず告っちまった……何やってんだよ、俺は」
フィオーラが、教室から出て行ったのを確認してから俺はズルズルとしゃがみ込んで頭を抱えながら、思いっ切りため息を吐く。
「告うつもりなんて無かったんだけどな……」
理由はたった1つ。俺にはその資格が無いから。
罪深い俺の願いはたった1つ。
フィオーラの幸せだ。
婚約を解消もしくは破棄する事は、決してフィオーラを守る事にはならない。むしろ危険にさせる事に繋がるのではと身に染みるほど実感させられていたから、婚約解消の申し出を頑なに拒んでいたのだが、まさかあんな風に誤解されていたとは。
まぁ、そう思われても仕方の無い事をしてきたのだから、バチが当たったのだろう。
そして、ここまで肝心な話をしなかったせいでもある。
「この先、フィオーラが絶対に生きて幸せになれるって確証を得られた後に、俺との婚約解消を2年前のように強く望むなら……その時は了承するんだけどな……」
……例えそれが、今後フィオーラが俺ではない別の男に微笑みかけ、男の隣でこれからの人生を歩む事になっても、だ。
それがフィオーラの望みで彼女の幸せならば、俺は黙って受け入れる。そう決めている。
だけど狡い俺は、フィオーラの幸せを願ってるのに、その幸せを与えるのが俺でありたいとも思ってしまっている。
「……だから俺にはそんな資格は無いんだっつーの」
そう自分に言い聞かす。
全てを話せばフィオーラは、俺をますます嫌うだろう。いや、憎むか。
今だって、俺とどんな想いで向き合っているのかと思うと正直、胸が痛む。
──何故ならフィオーラは、俺と同じで全て覚えているのだから。
なのに、いつもどんな想いで俺に笑いかけてくれているのだろう。
許しを得られないと気持ちを告げられないと思っていたのに、その許しを得るための肝心の話をする事を俺は怖がっている。とんだ矛盾だ。
そして、ついにさっきは我慢が出来なくなって爆発した。
「情けないよな、本当に……」
フィオーラは、俺の気持ちをどう思っただろう?
やはり、嫌悪だろうか。過去を思えばそう思われても仕方ない……。
本音を言えば応えが欲しかった。
同じ想いを返してくれなくても構わない。
それでも、どう思ったかくらいは知りたかった。
情けない俺は聞く勇気さえ無かったけど。
けれど、もう時間は無い。
俺達は最終学年に進級し、メイリン・ヒューロニア男爵令嬢も現れてしまった。
関わらずにいられればいいと思ったが、それはあっけなく崩された。
そして、あの女は何処か不気味だ。
今世では知り合っていないはずなのに、何故か俺の好みを知っていた時は、まさかこの女も!?
と、背筋が凍る思いを抱いたが、それにしてはどこかチグハグな印象を受ける。
ロイやハリクスの事も、アイツらが俺の側近候補になっている前提であの女は話していた。
──俺やフィオーラとは違う、別の“何か”があるのか?
(最初の人生で知り合ったばかりの時の様子とはかなり違う……むしろあの時の様子に近いんじゃないか……?)
「あー! だとしたら、ますます冗談じゃねぇぞ!」
出来る事なら思い出したくも無いかつての記憶が蘇り、ますます俺は頭を抱える。
あの女の様子がおかしいとは言え、俺達の前に現れた事に変わりは無い。
それはつまり、今後、この先に起こるであろう出来事がフィオーラを間違いなく傷つけていく事を指す。
今のあの女の様子からいっても、だ。
フィオーラがまた冤罪をきせられてしまえば、おそらく待ってる未来は──……
俺は決意を込めて拳を強く握りしめる。
絶対に。
絶対にそんな未来を二度と迎えさせたりはしない。
4度も死なせる訳にはいかないんだ。
今度こそ、と俺の決意は揺らがない。
フィオーラの為に。彼女にこの先の未来を生きてもらう為に。
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