【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
52 / 52

エピローグ

しおりを挟む

  ───その昔、この国には大魔法使いと呼ばれた存在がいた。

  その大魔法使いには娘が2人いた。
  大魔法使いの娘だけあって、2人の魔力も相当なものだった。

  そんな娘達は、1人は、を得意とし、もう1人はを得意としていた。

  やがて時を戻す力を得意としていた娘は王家に嫁ぐ事になり、もう1人の転移術を得意としていた娘は国の中枢を担う貴族の元へと嫁いだ。

  この時、すでに魔法使いの存在は少なくなっており、魔力を持つものは限られていた。
  そんな世の中で強すぎる魔力は時に諍いの元となる。
  それを危惧した大魔法使いは、娘達の子供に引き継がれるであろう力に制約をつける事にした。

  力を使えるのは、“次世代を統べる定めの者”  に限る、と。

  大魔法使いは、王家に繋がれていくであろう、時を戻す力は発動する可能性を大いに秘めている為、そこにさらなる制約をつける事にした。使えるのは3回まで。そして戻せる年数も最大で3年間という制約を。

  貴族の中で繋がれていくであろう転移術は、力を受け継いでいく者が次世代を統べる定めの者には当てはまらない事から、発動する可能性は今後無くなるだろうと思い、それ以上の制約はつけなかった。

  王家に引き継がれた、時を戻す力は粛々と今も受け継がれ制約と共にある。

  貴族の中で受け継がれた転移術の力は、大魔法使いが思った通り発動する機会が訪れなかった為、いつしか忘れられていった。
  もはや、どこの家の者に受け継がれているのかさえも分からなくなっていた。




  そんな大魔法使いの力と真実が書かれた本は、王の管理する部屋に保管されている。
  そして、ここに書かれている内容を知る事が出来るのは、“次世代を統べる定めの者”が、自分の世代を統べるようになってからと決まっていた。


  だから、フィオーラが昏睡状態から目覚めたあの時はレインヴァルトもまだこの事実をもちろん知らなかった。
  フィオーラに力があるのでは?  と、語っていた事はあくまでも憶測に過ぎなかった。


  その誰が受け継いだのか分からなくなってしまっていた転移術の力は何の運命かフィオーラが引き継いでいた。
  次世代を統べる定めの者という文言の意味には未来の王妃、すなわち──王太子妃も含まれる。
  よって、実質、王太子妃となる事が決まっていたあの時のフィオーラは転移術の力を発動させる事が出来たのだった。



  そんな大魔法使いも想像していなかった事だろう。


  自分の力を受け継いだ2人から生まれる子供が、かつて分かれた2つの魔力の両方を持って誕生する事までは。




****





「陛下、妃殿下!!  レオンハルト様は少々やんちゃが過ぎます!!」

  今、私達の目の前でプリプリと怒りを顕にしているのは、子守りの1人だ。
  その顔は酷く疲れ切っている。

  あれからも色々な事があった。
  ここまで来るのはやっぱり平坦な道では無かったけれど、
  無事に私はレインヴァルト様と結婚し、私達の間にはこの王子──レオンハルトを授かる事が出来た。

  そんな息子、レオンハルトのやんちゃっぷりに、この子守りはどうやらいつもいつも手を焼かされているらしい。

「今日は何をしてたんだ?」

  レインヴァルト様が聞き返す。

「かくれんぼです!」

  あぁ……と、それを聞いて私達は頭を抱えた。
  そして思いっきり彼女に同情した。

  大魔法使いの力を宿した私達から生まれたレオンハルトは、当然ながら王家の力を持って生まれてきたけれど、同時に私の力も引き継いで生まれてきたようだった。

  その力────すなわち『転移術』

  その名の通り、この力は自分の知っている、もしくは記憶している場所に望むと転移出来るというものだった。

  あの時の私は、レインヴァルト様の所に戻りたい!
  と、願った事から、あの生と死の狭間の空間からレインヴァルト様の元へと転移し戻って来れた、というのがどうやら真相らしい。
  まぁ、ただあれは……本来とは違う特殊なケースで、戻って来れたのは私の意識だったのだけれども。

  先日のレインヴァルト様の即位に伴い、王家の持つ『魔法使いの力と真実』を知った事でこうしてようやく全ての事が繋がった。

  おかげで、息子のレオンハルトが秘めている力は誰よりも強大なものとなってしまったようで……
  私達の即位によって、次世代を統べる定めの者、となったレオンハルトは現在、転移術の力を無自覚に使いまくっている。
  私はあれから無自覚でも何でも力を使う事は一度も無かったのに、ホイホイと使いまくる息子の将来が末恐ろしい。
  おそらく、秘めている力が強大になってしまったのも関連しているのだろう。

  しかし、まだ幼すぎて力の事を説明しようにも難しい。
  とりあえず、知らない場所には行けない事だけが今は救いだと思っている。


「フィオーラ」


  私がレオンハルトの心配をしている事を感じ取ったレインヴァルト様が、心配そうな顔をしながら私の顔を覗き込む。

「レインヴァルト様……」
「心配するな。レオンハルトは大丈夫だ」
「でも……」
「レオンハルトはちゃんとこれから俺達が導いていこう?  だから大丈夫だ」
「……そうですね」

  私が微笑むとレインヴァルト様も笑った。

「俺の王家の力は、愛するフィオーラの為に使った」
「私の力は、愛するあなたの元に戻る為に使いました」
「…………」
「…………」

  ……こうして言葉にすると、何だろう……

「どうしてかしら?  ちょっとむず痒い気がします……」
「……奇遇だな、俺もだ」

  私達は顔を見合わせてフフフと笑い合う。



  そんな私達の元に、レオンハルトが駆け寄って来る。
  レインヴァルト様に似たやんちゃな笑顔で。

「ははうえ、おなかの赤ちゃんは元気ですか?」
「えぇ、元気よ」
「わぁい!  早くあいたいです」

  レオンハルトが無邪気な笑顔でそう口にした。
  そう、私は今お腹に2人目の子供を妊娠していて、来月出産予定だ。
  新しい家族が増える事が今から楽しみで仕方ない。


  そんな私を優しく抱き寄せ、そっと額に口付けながら、レインヴァルト様が私に聞いてきた。


「なぁ、フィオーラ。…………お前は今、幸せか?」


  そう口にしたレインヴァルト様は、
  少しだけ。
  ほんの少しだけ不安そうな顔をしていた。

  この質問は4度目の人生が始まった頃にも受けた覚えがある。
  あの時の私は答えられなかった。
  けれど、今は……今なら。


  だから、私は満面の笑みを浮かべて答えた。


「もちろん、幸せです!」


  この幸せは、全部レインヴァルト様がくれたものだ。
  あなたがいたから。レインヴァルト様が私が生きる事を願い強く望んでくれたから。
  だから今がある。


「……レインヴァルト様も幸せですか?」


  だからこそ、私も知りたい。
  ……あなたも今、幸せなのかと。
  幸せだと思ってくれているのか、と。


  私が聞き返すとは思っていなかったのか、レインヴァルト様はちょっと驚き目を丸くした後、私と同じ満面の笑みを浮かべて言った。


「決まってるだろ?  ──すげぇ、幸せだよ」

  
  良かった……心の底からそう思った。
  だって私だけが幸せじゃダメなんだもの。
  私とレインヴァルト様……2人とも幸せだって思えなくては、それは本当の幸せじゃないから。
  そして、レオンハルトと、今度産まれてくるこの子も入れて皆で幸せになりたい。
  ……いえ、ならなくちゃ!

  私は大きく膨らんだお腹を撫でながらそう思った。





──────……


  


  かつて3度命を落とした記憶と、
  4度目の……今のこの人生で隙あらば私を死へと導こうとしていた運命の事を忘れた事は無いけれど。
  それらを経験し、乗り越えた事で今があるから。


  だから私は今、ようやく自信を持って言える。



  4度目の人生は、幸せです!



~完~





✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


これで完結です。
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました!

このお話は色んな意味でハラハラさせてしまってばかりだったかと思います。
確か、“この世界が乙女ゲームの世界だと知らない悪役令嬢” を書きたい!
それが全ての始まりだったはずなんですけども……それが随分と可哀相な目に……

また、エピローグに至るまでに、色々あったであろうアレコレは、
最後の最後になってようやく2人が口にした、“幸せ”という言葉に全て込めています。
あとは、また家族も増えて訪れるであろう、これからの幸せを祈って貰えたら嬉しいです。

お気に入り登録、感想、本当に嬉しかったです! ありがとうございました。
そして、エントリーしていました第14回恋愛小説大賞も、投票して下さった方々、読んでくださった方々に心からお礼を申し上げます。
実は、ギリギリまでエントリーするか悩んだんですけど、まさかあんな、3,000近い作品の中から30位以内をウロウロする事になるとは夢にも思いませんでした。
初めて順位を見た時は、桁が違うんじゃないか?  と心から思いました。

全部、読んでくださった皆様のおかげです!
本当にありがとうございました!!

そして、最後にまた新しいお話も投稿します。

『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』

全然、タイトルが思い浮かばなくて、もうそのまんまでいいや! (;ノ´∇`)ノ
って投げたので、何の捻りもないその通りの話です 笑
特に、今の流行り(?)を追ってるような話でもありませんが、もしよろしければ!
(長編にはしません)

いつも最後まで長々とすみません!
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!⸜(*ˊᵕˋ*)⸝

しおりを挟む
感想 158

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(158件)

いめた
2023.03.20 いめた
ネタバレ含む
解除
夢梨(ゆめり)
ネタバレ含む
解除
narumin #
2022.08.21 narumin #
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。