【完結】地味で目立たない眼鏡っ子令嬢の可愛いところは王子様だけが知っている ~その求婚はお断りしたいのですが~

Rohdea

文字の大きさ
上 下
2 / 15

2. なぜか届いた王家からの手紙

しおりを挟む


  もう婚約者探しは諦めた方が……

  だいぶ投げやりになっていた私の人生が大きく変わったのは、先日行われた王宮主催の舞踏会……またの名を第1王子ヴィルヘルム殿下のお妃探しとも言われた催しに参加した後のことだった。



◇◇◇
  


「クリスティーナ!!  大変だ。王家から手紙が来ているぞ!  お前はこの間の舞踏会で何をしたんだ!?」

  ものすごい剣幕でお父様が私の部屋に駆け込んで来た。

「はい?  何を言っているのですか?  お父様」
「えぇい!  何をすっとぼけた返事をしてるのだ!」
「だって……」

  本当に心当たりが無いんだもの。

「そうだ!  あの日お前は会場で眼鏡を壊したと騒いでいたな」
「えぇ。大事な大事な眼鏡が残念な事になってしまいまして仕方なく、途中からボンヤリした視界のまま参加しましたが」

  あの日の舞踏会は、お父様とお母様、お姉様と私が参加した。
  社交界デビュー前の妹は留守番だった。

  会場に着くなり挨拶回りに出たお父様とお母様と離れ、お姉様はチヤホヤされる為に男性陣の輪の中へと向かい、それぞれが好き勝手に行動をしていたのだけど……

  私は私で新たな婚約者候補を探そうと思いつつも、会場内の美味しそうな料理に気を取られ見とれていたら、人にぶつかってしまい眼鏡が落ちてしまい、そのまま踏まれてしまった。

  …………あれは、本当に散々だったわ。
  もう人の顔も分からないから、婚約者候補も探せないし。
  せっかくの美味しそうな料理も何が何だか分からなくなった。


  まぁ、だから私はこっそりをして過ごす事にしたのだけれど。


「そうか!  さては私が目を離した隙に、何か粗相をしたんだな!?  グラスを割るとか……皿を割るとか……花瓶を割るとか……これはその時の請求書に違いない!!」
「なぜ、全て割っている事限定なのです?」
「前科があるからだ!」

  お父様は、きっぱりと言った。

「お前は眼鏡がないと屋敷の物を破壊して回るからな!  だから眼鏡は常に外すなと厳命しているだろう?」

  ……そんな人を破壊魔みたいに言わなくてもいいじゃないの……お父様ったら酷いわ。
  よく見えないんだから仕方ないでしょう?


  それよりも、『就寝時以外に眼鏡は絶対に外すな!』という命令はそこから来ていたのね……


「と、とにかく違います!  あの日はそんな事はしていません!  さすがにそんな事をしていたらその場でお父様にちゃんと報告していますから」
「む、それもそうか……ならこれは何なのだ?」

  私に分かるわけないでしょう……

「お父様。ここで、余計な議論をする前にさっさと開けてしまいましょう?」
「コホン……そうだな」


  こうして、ようやく私とお父様は王家からの手紙を開封した。








「……どういう事だ!?  やはりお前あの日に何かしたのだろう!?」

  お父様は目を通したばかりの手紙を握りしめたままワナワナと震えている。

  なんて事!
  ますますお父様は混乱してしまったわ。
  いえ、私もだけど。

  何故ならこの王家からの手紙は要約すると、

《3日後、アーネスト殿下の元へ登城されたし》

  と、書かれていたから。

  何故、アーネスト殿下が出てきたの?
  あの舞踏会は第1王子のお妃探しで第3王子のアーネスト殿下は関係無いはず。


  って、そもそも私が第1王子のお妃とかも有り得ないけれども!


  だけど、全くもって意味が分からないわ。

「何故だ、何故だ、何故だ……」

  手紙を読んだお父様の呟きも止まらない。
  やだ、ちょっと怖いわ。私はお父様から少し距離をとる。

「クリスティーナはあの日、アーネスト殿下と交流があったのか?」
「まさか!」

  私は全力で首を横に振る。
  むしろ、あの日は眼鏡がダメになったせいで周りの人の顔すらも朧気よ。
  誰がいたかも知らないわ。

「私は全力で壁の花と料理を満喫していたわ!!」
「それは誇らしげに言うことじゃないだろう!?」

  お父様に呆れられた。

「あ……そう言えば」

  私はふと思い出した。

「“一人料理当てゲーム”をしている時に男性に話しかけられたわ」
「なに?  それより、一人料理当てゲームとは何だ!?」
「近眼ならではのゲームですわよ、お父様」

  私はふっふっふと得意気に答える。
  だって視界がボンヤリしていてもう楽しむ方法がこれしかなかったんだもの。

「~~!?  …………コホッ。それで……その男性とは何があった?」

  一人料理当てゲームについて追求したそうな様子だったけれど、思い直したお父様が先を促した。

「特に何も。何してるのかと、訊ねられたからゲームです、とお答えして邪魔しないで下さいませ、とその方を追い払ったくらいでしょうか」
「追いっ!?  ……本当にお前は何をやってたんだ……一人にするのでは無かった……」

  お父様が私の答えに愕然とし、頭を抱えた。
  もちろん、失礼にならないギリギリの態度で追い払ったわよ?
  そこは心配しないで欲しいわ。

「それで?  その男性は誰だったんだ?」
「知りません」
「は?」
「だから、知りません。相手も名乗りませんでしたし、私も名乗っていません」
「……」

  お父様が一気に項垂れた。
  あらあら大変。お父様ったら、この数分でちょっと老け込んだように見えるわ。大丈夫かしら?

「もういい。お前と話していると疲れる……とりあえず、どうしてこんな事になったのかは不明だが、3日後は登城するしかあるまい。準備をしておけ……」
「分かりましたわ」

  私が何故、アーネスト殿下に呼び出されるのかしら??
  どうせ、何かの間違いじゃないかと思うのだけど。

「あ、ねぇ、お父様!  王宮に行ったら美味しい料理が出されるかしら?」
「知らん!  何で呼ばれてるのかも分からんのに出るなんて言えるかっ!!」
「そう、よね……残念だわ」






  ───そう。この時の私はとってもとっても呑気だったわ。


  だって、あの時の私には見えてなかったし本当に分からなかったんだもの。


  あの日、すげなく追い払った男性が第3王子のアーネスト殿下その人だったなんて。

しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~

Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。 美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。 そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。 それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった! 更に相手は超大物! この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。 しかし…… 「……君は誰だ?」 嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。 旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、 実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

“代わりに結婚しておいて”…と姉が手紙を残して家出しました。初夜もですか?!

みみぢあん
恋愛
ビオレータの姉は、子供の頃からソールズ伯爵クロードと婚約していた。 結婚直前に姉は、妹のビオレータに“結婚しておいて”と手紙を残して逃げ出した。 妹のビオレータは、家族と姉の婚約者クロードのために、姉が帰ってくるまでの身代わりとなることにした。 …初夜になっても姉は戻らず… ビオレータは姉の夫となったクロードを寝室で待つうちに……?!

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

処理中です...