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第15話 スフィアの大事なもの
しおりを挟む───箱の中身はー……
「手紙が数束に押し花? ……それにブレスレットと本が1冊?」
この中のどれかが証拠となるものなのだろうか?
「フリード殿下、スフィアはこの箱の事をなんだと話していましたか?」
少し離れた所に立ってこちらの様子を窺っているフリード殿下に問いかけた。
「……自分にとってとても大切な物が入っている、とだけ言っていたが。何が入っていた?」
「えっとですね……」
こちらに近付いてくる殿下に、中に入っていた物を見せながら説明をしたら、殿下が「えっ!」と小さく声を上げ、驚いた顔をしたと思ったら見る見るうちに顔が真っ赤に染まっていった。
えぇ! ……何があったの!?
「で、殿下……? 大丈夫ですか」
殿下のあまりの急激な変化に、何が起きたのかとおそるおそる尋ねると、フリード殿下は顔を真っ赤にしながらも恥ずかしいのか、手で顔を覆ったまま答えてくれた。
「…………その手紙の束は、スフィアがニコラスと婚約する前までの間に俺がこっそりスフィアに送り続けてた手紙だ。そしてブレスレットは俺がプレゼントに贈ったもので……押し花は、勘違いでなければ……だが、俺が今までスフィアに贈った花を押し花にしたものだと思う……」
「……………………!」
スフィアにとって大切な物が入っている、という箱の中身が、殿下から贈られた物ばかり!
花なんてわざわざ押し花にしてる。
これらが意味するところは……もしかして……
そう思わずにはいられなかった。
そして、殿下があまりにも顔を真っ赤にするので、つられて私も赤くなってしまった。
「フィー……取っておいてくれてたんだな……」
箱の中身を見ながらポツリと小さな声でそう呟くフリード殿下は戸惑いながらもどこか嬉しそうだ。
本当に本当の本気でスフィアに想いを寄せてる事が私にも伝わってくる。
スフィアも、こんな形でフリード殿下との思い出の品を取ってあるんだもの。
絶対、スフィアだって殿下の事を……
だけど、フリード殿下とスフィアがお互いがそうと知らなくても、昔から想い合っていたのなら、スフィアはどんな想いでニコラス殿下と婚約したんだろう。
スフィアが婚約したのはだいたい今から1年前。きっとそこには私の知らない事情も多くあったに違いない。
そして、留学先でスフィアの婚約を知ったであろうフリード殿下は今までどんな気持ちで……
そこまで考えたら胸が痛んだ。
スフィアが私に素直になって、と、後悔しないようにとあの時言っていたのは……フリード殿下との後悔があったからなのかもしれない。
私は無意識に拳を握り締めていた。
これは絶対に何としてもスフィアを助けないと!
そして、絶対にスフィアにも幸せになってもらう!
この先のフリード殿下とスフィアがどうなるかは分からないけど、このままじゃいけない。それだけは確かだ。
私は改めてそう決意して再び箱の中身を確認していく。
「手紙や押し花、ブレスレットは殿下からの贈り物だとすると、今回の件の証拠とはならないですよね。と、なると……この本でしょうか?」
私は、中に入っていた1冊の本を取り出す。
本と言うよりも日記のようなものだろうか?
もし、日記なら中を開いて読むのは、とても抵抗があるのだけど……
「……そ、そうだな……」
フリード殿下もさすがに抵抗があるのか、困った顔をして渋っている。
しかし、そうも言っていられないので、申し訳ないと思いながらも私達は中身を見てみる事にした。
「ーーーーこれは、どこかの異国の文字でしょうか?」
そこには、この国では見た事のない文字が書かれていた。
そのせいでスフィアが書いたものなのかそうでないのかも判別出来ない。
当然、何が書いてあるのかも不明だ。
とりあえず、証拠はこれでは無い、という事だけは分かった。
「1番、証拠となる可能性が高そうな物だったのですが……」
「おかしいな。この箱の中にあるはずなんだが……何故見当たらない?」
殿下がガッカリした口調で呟いた。
その場にいた誰もががっくりと肩を落とした。
「一応、最後まで目を通すだけしてみたらどうだ?」
「ロベルト」
ロベルトの言うように、最後まで日記のような本の中身を見てみようとパラパラとページを捲っていると、最後のページに一枚の紙切れと手紙の束が挟まっている事に気が付いた。
「フリード殿下、この手紙もフリード殿下が贈った物ですか?」
先程の手紙の束とは、紙の質感が違うので、殿下からでは無い気がして尋ねてみた。
ちなみに、手紙は普通送り主の名前やら家名の封蝋をするのだが、殿下からスフィアへの手紙は、殿下がひっそりと送り続けていたからなのか、それらは無い。
そして、封蝋が無いのはこの手紙も同じだった。
その手紙を見た殿下がハッとした顔をする。
「…………っ! それだ! 開けてみてくれ」
私達は急いでその手紙を開封して中身を確かめた。
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