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今日も私はチョロライン。(終)
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「もう! どうしてこんな事になってしまったのーー!」
その日、私の叫び声が王宮内に響いた。
未来の王妃として相応しくないと言われようとも……今だけは勘弁して欲しいわ!
「あはは」
「シュナイダー様!? これは笑い事じゃありませんからね!?」
何故、そんな呑気に笑顔を見せているの……!
カッコイイけれど!
「いや、こんな事になるとは僕も思ってなかったよ?」
「~~否定しても否定しても皆、生あたたかい目で見てくるのですよ!?」
「そうだねぇ、僕もだ」
シュナイダー様も、うんうんと頷く。
「キャロライン様は王子と姫どちらがいいですか? ……と皆がみんな嬉しそうに聞いてくるのです」
「そうだね。僕は世継ぎも大事だけど、キャロラインに似た可愛い娘が欲しいなぁ。でも嫁には出せないかもしれない……」
だから、何をそんなに呑気な事を……!
あと、気が早すぎます!
「シュナイダー様? 分かっています? 今、私には妊娠疑惑がかかっているのですよ!?」
「分かってるよ? 皆、気が早いよね。本当にキャロラインが妊娠していたとしてもまだ何も分からない時だろうに……」
「っっっ! それ以前の問題ですよ!? だって、私がに、妊娠するはずがないのに……」
「誤解されちゃったみたいだね」
「~~~!」
あの日、シュナイダー様にお姫様抱っこで運ばれベッドに押し倒された私はこれでもかと言うくらいたくさん愛された。
と言ってもやっぱりここは、健全な世界!
めくるめく大人の世界……までには足を踏み入れることは無く、最後まではしていない。
していないのに!!
「まぁ、あれだけの時間二人っきりで部屋に篭ってたし、ついでにキャロラインの……あの、色っぽい声が漏れていたのかもしれない」
シュナイダー様が少し顔を赤くしながら言った。
「あれは、シュナイダー様……が!」
そうよ、キスマーク! キスマークもあったわ……
あれをばっちり見られていたのかも!
「キャロライン」
「……っ」
シュナイダー様が優しく甘い声で私を呼ぶ。
「おいで?」
「うぅっ」
その声につられて私は定位置(もちろん膝の上)に移動する。
今日も私はチョロライン。
定位置に到着するなりギュッと抱きしめられる。
「でも、悪い事ばかりじゃなかったんだよ」
「?」
「キャロラインと婚約破棄の話を勧めていた人達がさ」
まさか……!
「“殿下の子を妊娠しているかもしれないキャロライン様との婚約破棄は有り得ないだろう”とか言い出した。分かりやすいよね」
やっぱりーー!
「聖女も、エディと上手くいったみたいだし。彼女がこの国に残ってくれるなら僕との婚姻でなくとも良かったみたいだからね」
「あ……」
「そういうわけで、キャロライン」
「シュナイダー様?」
「……この間の続きをしようか?」
「え!?」
何を言っているのですか!?
と、私が口にする間もなく、シュナイダー様の唇によって私の唇が塞がれる。
「~~!」
シュナイダー様は何度も何度も啄むようなキスを繰り返す。
やがて、満足したのか唇を離すと、
「この間の首につけたキスマーク、消えちゃってるね……残念」
そう言って再び私の首筋に顔を寄せる。
「あっ……!」
「キャロライン……愛してるよ」
「~~~!!」
私は思った。
あぁ、やっぱり溺愛王子の愛の重さは尋常じゃ無い(キャロライン調べ・改より)
「え? ビーグル……じゃない、ビーブル殿下が?」
「そう。向こうの国から謝罪とその後の顛末を知らせる手紙が届いたよ」
あのセクハラ王子は、結局ざまぁされたのかしら?
「やっぱり廃嫡されたそうだよ、ビーブル殿下」
「廃嫡」
「聖女の件も独断だったみたいだし、そこに来て他国の王太子の婚約者を横取りしようとしたのだから当然だよね」
「……」
「そもそもキャロラインに触れた事は万死に値するし」
相変わらずどこまでが本気か分からない事をシュナイダー様は言っている。
「二度とキャロラインの前に姿を現さないようにしっかり監視していくだって」
「セイラ様の事は?」
もうあのしょぼくれた犬の事はいい。
セイラ様を返せと言って来ていないかが心配。
(セイラ様はエディ様とラブラブなんだから! 絶対に国には返さないわよ!)
「うーん、本当は返して欲しかったんだろうな、とは思うけど、こちらの都合で散々振り回してしまった聖女様をよろしくお願いしますと言ってるから大丈夫だね」
「良かった!」
私が笑顔を見せるとシュナイダー様が少し拗ねた顔をする。
「どうしました?」
「……随分と仲良くなったんだなって」
「そうですね!」
私が満面の笑みでそう答えると、何故かシュナイダー様は落ち込んだ様子を見せる。
「……ねぇ、キャロライン。僕の事も忘れないでね?」
「!!」
こ、この顔は!!
いつも私をキュン死にさせるシュナイダー様の捨てられた仔犬のようなお顔!!
前世犬派の私はこの顔に弱いのよ!
どっかのビー王子とは違って私の心をくすぐるこのお顔!!
私はたまらなくなってシュナイダー様に抱き着く。
「もちろんですよ、私はシュナイダー様の事が大好きですから」
「キャロライン……」
そして、熱い抱擁とお約束のキスを交わしていると、
「キャロライン様! 聞いて下さい! 私、聖女の力が……ぁって、きゃぁ~!!」
「今はお邪魔ですよ……って遅かったか」
セイラ様とエディ様がやって来た。
興奮するセイラ様と頭を抱えるエディ様。二人の反応が違いすぎて面白い。
ちなみに、セイラ様にはまたおかわりを要求されたわ。
悪役令嬢とか聖女とか、結局本当の所はよく分からなかったけれど、
どうやら、私の幸せな毎日はこうして物語のようにこれからも続いていくみたい。
大好きな人達と共に───
ちなみに、後日またあの本の第3弾が発売されたわ!
えぇ、中身も聖女と隣国の王子の登場よ!
『一途な溺愛王太子の激しい愛情 ~彼女に触れていいのは自分だけ~』
ほ、本当に作者は誰なの!? どこで見ていたの!?
そんな本の発売日、セイラ様が大興奮して大量に買い込み、何故か私にサインを求め……シュナイダー様もウキウキしながら何冊も本棚に並べていたわ……
とりあえず、今回もベストセラー入りは間違いなさそうよ!
そういうわけで……
──転生したら悪役令嬢? になったようですが、肝心なストーリーが分からなくても今日も私は幸せいっぱいです!
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ありがとうございました!
続編もこれで完結です!!
番外編はともかく続編なんてものを書くのは初めてだったので、
試行錯誤しておりましたが、楽しんでもらえていたら嬉しいです。
1年経ってふと思いついたこの話に、最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました!
個人的には皆様の感想コメントがとてもとても楽しかったです!
キャロライン&シュナイダー様はこれからも、
ほのぼのイチャイチャお砂糖を撒き散らしながら、幸せに過ごしていくと思います。
前作から読んで下さった方も今作でこの話を知った方も、ここまでお読み下さり本当に本当にありがとうございました!
『そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして』
は、引き続き更新していきます。やっぱり掛け持ちは大変でした……
よければこちらもお付き合い下さいませ!
本当にありがとうございました~(。ᵕᴗᵕ。)
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