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24. 憎い女 (王女視点)
しおりを挟む「……」
「……」
オーホッホッホ!
アンジェリカったら、この私の美しさに声が出せないようね!
この美しい私に声をかけられて驚いたのか、ボケッとした顔で固まっているじゃないの!
────アンジェリカ・ノルリティ侯爵令嬢。
私はこの女が本当に憎いわ。
初めて見かけたのはこの女が我が国に留学して来てからすぐだった。
留学生の話は耳にしていたけれど、私には関係の無い取るに足らないちっぽけな存在。
だから留学生なんて眼中に無い……はずだった。
『留学生のアンジェリカさん、見た?』
『見た! 綺麗な人よね』
『留学してくるだけあって成績も優秀だし』
そんな話が耳に入って来ても、誰よりも美しいのは私! 賢いのも私! それは揺らがない。
だって私はこの国の王女だもの!
そう思っていたわ。
でも、最初の異変は私が狙っていた男、その1……マイクがあの女の周りをうろつき出したのを見た時だった。
『アンジェリカ嬢、この国には慣れましたか? 良ければ今度の休みに俺が街を案内……』
『え? ありがとうございます。でも、もう街についてはこの間の休みにたくさん探索したので、もう案内不要で歩けるくらいには把握しました! だから大丈夫です』
『……そ、そう、ですか』
『はい! わざわざお気遣いありがとうございます。では!』
『え、アンジェリカ嬢……待っ』
それが最初だった。
それからも注意深くあの女を見ていたら、何故か私が目に付けていた男ばかりがあの女に寄っていくじゃないの!
───たいして可愛いくもない他国のたかが侯爵家の令嬢でしょ? 私はこの国の王女なのよ?
どいつもこいつもどこに目をつけてるわけ!?
そんな苛立ちばかりが募ったわ。
『え? アンジェリカって婚約者いないの?』
『ええ、色々あってなかなか……縁談の話は持ちかけてもお断りされてばかりで』
『じゃあ、せっかくだもの。留学中にいい人見つけたいわね!』
『そうねぇ、実はそれも少し期待しているのだけど……』
なんて会話も耳にしたわ!
縁談がお断りばっかりされてるのは、ざまぁみろだけど、この国への留学理由が男漁りですって!?
それで、私の男ばかり狙っていたのね……! なんて女なの……アンジェリカ。
と、私はますます腹が立った。
私の男ばかりに声をかけらている光景を見てアンジェリカ・ノルリティは、男漁りが目的で留学してきた尻軽女……
私の中ではすっかりとそんなイメージがついた。
だから結局、独り身のまま帰国した時は、思いっきり笑ってやったわ。
誑かしてばかりだからそうなるのよ!
そして、この国に来ることになった時、私はすぐにアンジェリカの存在を思い出した。
せっかくだから、腹いせにたくさんいびってあげるわ!
そう決めたのに……
『王女殿下、お気に入りのハンカチですが、洗濯をしまして無事に綺麗になりました』
本当はどうでもいいハンカチなのだけど、大事なお気に入りのハンカチなのと嘘をついて、手洗いで綺麗にさせたわ。
かなり汚してやったから綺麗にするのは大変だったはず。
それをやっぱり要らないと言われたら、アンジェリカはどんな顔をするかしら?
『ああ……それ? もういいわ。捨てて頂戴?』
『え?』
『よく考えたけど、一度汚れたものなんてこの私に相応しくないもの』
『要らない……ですか』
アンジェリカは綺麗にしてきたハンカチを手に持ってがっくり肩を落としていた。
ふふ、やったわ! やってやったわ!
『何か文句あるかしら?』
貴族令嬢だもの。さぞかし手洗いなんて大変だったでしょう?
だからこそ、せっかく洗ったのにー! っと悔しがる顔が見れると私はワクワクしたわ。
なのに、アンジェリカのやつ……
『ですよね。そうなると思ってました! 良かったです』
『……は?』
『いやー、すみません。実は綺麗になりましたと言いましたが、本当は汚れが完璧に落とせなかったので……ちょっと汚れが残ってまして……でも、安心しました! 不要ならこれは捨てておきますね!』
『……は? ちょっと……』
悔しがるどころか笑顔でゴミ箱に放り入れていたわ。
ポットを投げつけた時だってそうよ!
あの女……のらりくらりと躱しやがって!
しかも、なんで私が王太子様に怒られなきゃいけなかったわけ?
本当に意味不明!
まぁ、いいわ。
今日のパーティー。表向きは私の歓迎パーティーと言っているけれど、王太子様が婚約発表の準備を進めている事を私は知っているの。側近や大臣達と話してるのを立ち聞きしちゃったんだから。
つまり、王太子様は「婚約なんて聞いてない!」とか最初は言っていたけど、その気になってくれて、このパーティー中に私との婚約を発表する気でいるという事よね?
やっぱり無理やり嘘ついて強引にやって来て良かったわ。
オーホッホッホ!
私が婚約者だと発表された瞬間のアンジェリカ……あなたの顔が楽しみだわ!
羨ましいでしょ? 未来の王妃よ王妃! あなたは逆立ちしても届かない立場よ!
───そんな事を思いながら、私はアンジェリカに向かって笑みを浮かべた。
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