【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea

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17. 可愛い可愛い可愛い可愛い俺のお嫁さん (アドルフォ(旦那様(仮))視点)

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「旦那様、私……旦那様と離縁したいと思っています」

  まだ何も言われていないのに、そう言われるのではないだろうか?
  何故かは分からないが、俺は可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんである愛しのミルフィに“今夜、大事な話があります”と言われてそんな事を考えてしまった。

「……っ」
 
  (俺が喋らないからか?  それともナデナデされるのが嫌になったのか?)
 
  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィが、俺に愛想を尽かす理由なんていくらでも考えられる。
  むしろ、ここまでよく耐えてくれている……とも思う。

   (普通に喋ればいい。分かってはいるんだ……分かってはいるんだが)

  可愛い可愛い可愛い可愛い愛しのミルフィを前にすると……

「……」

  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィにとって、俺はある日突然、強引に結婚を迫って来た知らない奴でしかなかっただろう。
  しかも、強引で可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィからは断れないような形での半ば無理やりな結婚。

  (それでも君が欲しかった。君をあの家から連れ出したかった)

「旦那様……?  どうかしましたか?」

  俺が不安そうになったのを感じ取ったらしい可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィが、心配そうな表情を向けて来る。

  (……くっ!  可愛い!)

  再び、ギューーっと抱きしめて撫で回して、この腕に閉じ込めてしまいたいくらい可愛い。

「……!」

  とりあえず、抱きしめるのはギリギリ堪えて、俺は手を伸ばして“承知した”という意味を込めて可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィの頭を撫でた。

  ナデナデナデ……

「あ!  良かった。ありがとうございます」

  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィには俺が言いたかった事が伝わった様子で、ホッとした顔で微笑んだ。

「!!」

  (……か、可愛い!  その顔!!  もっと!!)

  ナデナデナデナデ!!

  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィの可愛さが増す度にその都度ハートを撃ち抜かれている俺は、いつだって興奮してすぐにナデナデが加速してしまう。

  (頬が熱いな……きっと今、俺の顔は赤い)

  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィを前にしてすぐ赤くなっている自覚はある。
  そんな俺は最近、ようやくだが、ギューッと抱きしめ、ひ、額にだけどチューが出来るようになった。
  だが、出来る事ならあの柔らかそうな唇に……

  (……っって、まだダメだ、心の準備が!!  額にしたチューですら決死の覚悟だったのに!)

  今、そんな事をしたら俺の魂はどこかに抜けてしまうんじゃないだろうか。

  (それに、可愛い可愛い可愛い可愛い愛しのお嫁さんのミルフィに嫌な思いはさせたくない)

  父親の借金返済を助ける見返りに、ミルフィに花嫁になって欲しいと求めた。
  そのせいで可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィは、好きでもなんでもないこんな無愛想な俺に急に嫁ぐ事になってしまったわけで。
  そんな俺を簡単に愛せるはずがない。だから、ゆっくりゆっくり距離をつめていこうと決めたんだ。

  (だが、少しでも俺の愛が伝われば……)

  そうして、出来うる限りの“愛情”は伝えて来たつもりだったけれど、口を聞かない夫に不満は溜まっていたのだろう。

  ──だから……きっと、今夜の話というのは……

  ズキッ
  胸が痛い。

  (ミルフィ……)

  俺はそっとミルフィの頭に手を伸ばす。

  ナデナデナデナデ…… 

  (あぁ、このナデナデで俺のずっと抱えて来たこの気持ちが全部伝わればいいのにな)

  ナデナデナデナデ……

  いつだったか母上が言っていた、

  ───アドルフォの事だから、どうせミルフィさんを影からこっそり見つめるだけの片思いでもしていたんでしょうね。

  あれは本当だ。図星を指されて凄い動揺した……しかし、母上のあれは何だ?  
  母親の勘ってやつだろうか?  恐ろし過ぎる!

  俺はずっと可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィに声をかける事が出来ずに見つめていた。
  社交界でも、あの猫被りの醜い妹の姿は何度も見かけるのに、なかなか外に出て来ない可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィ。
  いつだって俺は君の姿を探していた。

  (本当にあの妹は醜い女だと思う。無邪気なフリをして散々可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィを傷付けて来た……計算だらけの醜悪な女)

  あのまとわりつかれた時の不快感は言葉に出来ないくらいだった。
  思わず可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィに癒しを求めてしまったじゃないか!

  (あれは癒されたなぁ……)

  だからこそ、そんな可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィが、どっかのバカ男と婚約をしたと知った時、俺は目の前が真っ暗になり絶望した。
  ウジウジしていた自分をかなり責めて、後悔、そして反省した。
 
  忘れる事が出来なくて未練タラタラだった俺の前に飛び込んで来た情報は、可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィが婚約を破棄された話とロンディネ子爵家の借金の話だった。
  二度と後悔したくなかった俺は……ロンディネ子爵家の事を徹底的に調べ子爵に接触した───

  (そうして巡り巡ってやって来たチャンスに手を回した結果……俺の花嫁として可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィはやって来た!)

  嫁いでくるまで夢じゃないかと思った。
  でも、夢じゃ無かった。
  屋敷で初めて顔を合わせた可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィは、足を滑らせて階段から俺の上に降って来た。

  (天使かと思ったな……)

  ミルフィは最高だ!
  こんな俺にいつだって一生懸命歩み寄ろうとしてくれているし、最近はナデナデするだけで、まるで会話しているみたいな気持ちにもなるんだ。

  (愛しい……)

  ───だから、ミルフィ。
  君が俺から離れたい。そう願っても俺は君を逃がしてはあげられない。



  そう思って夜、就寝前。
  可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィの部屋を訪ねた。

  俺のお嫁さんという立場になっている可愛い可愛い可愛い可愛いミルフィ。
  この部屋に立ち入ってしまうと理性を保てる自信が無くて最初は頑なに入室しないように気を付けていたけれど、一度入室した後は何とか理性を保つ事に成功した。

  (だから、今夜は大丈夫……)

「旦那様、わざわざありがとうございます」

  ナデナデ
  (構わないよ)

「……!  そう言って頂けて良かったです」
「……」

  ナデナデナデ
  (やっぱり可愛い可愛い可愛い可愛いお嫁さんのミルフィは凄いな!)

  と、感心していたけれど次の言葉で俺の頭の中ははてなマークだらけになった。

「……旦那様は本当に私を望んでくれていたのですか?」
「?」

  ナデナデ!

「シルヴィではなく、わ、私を……」
「!?」

  ナデナデナデ?

  (……ん?  どういう事だ?  話が見えない)

  確かに子爵には間違っても妹が来る事の無いように!  とは告げたが。
  俺のナデナデする手付きもぎこちなくなって行く。

  ……ナデナデ?

「で、ですから……えぇと、私は、そう!  あなたの、お、お飾りの妻では無かったのですか!?」
「!?!?!?」

  はて?

  (可愛い可愛い可愛い可愛い俺のお嫁さんのミルフィがお飾りの妻だと!?  どういう事だぁぁぁ──────!)


  こんなに叫びたくなったのは生まれて初めての事だった。

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