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シュナイダー殿下視点
絶対に手は出さないと約束させられ、誓約書まで書かされた
しおりを挟む「もぅ! 何言ってるんですかぁ、シュナイダー様ったらぁ」
「……ははは、そうだね」
「そうそうこの間、こんな事があったんですぅ。聞いてくださいよぉ~! 実はぁ~」
あぁ、もう嫌だ。無理! 何で僕こんな策しか取れなかったんだろう……。
今更だけど、王太子として……将来王になる身として……ダメダメじゃないか?
あの女に近付く事を決め、実行してからはや数日。
僕の心はすでに疲れ切っていた。
オチも無く意味の分からない話に延々と付き合わされ、学園内では連れ回される。
放課後、図書室で勉強があるからと言って離れようとしても、
「だったら、私も付き合いますぅ」とか言って、図書室について来たと思ったら、僕が 勉強している間は爆睡。
……せめて勉強しろよ。
念の為、いつも一緒にいてくれている友人達も、一人、また一人と段々と死んだ魚のような目になっていった。
……付き合わせて本当に申し訳ないと思っている。
ただ、この捨て身の作戦が功を奏したのか、あの女は、悪評を撒き散らす行動は控えるようになったし、そのキャロラインの悪評も、僕の浮気の噂に上書きされた。この事で僕に非難が集中し、キャロラインには同情の眼差しが注がれているようだった。
……婚約破棄とか、騒がれているけど……キャロラインが本気にしたらどうしよう。
理由は分からないが、僕から離れたがる素振りを見せていたキャロライン。
これ幸いと離れてしまうんじゃ……
お妃教育の中断を申し出たと聞いた時は、目の前が真っ暗になった。
……学業に専念したい。それが理由だと聞いている。うん、そうに違いない。他に意味は無いはずだと僕はそう信じて……いる。
そんな不安に押し潰されそうになった頃、事件は起きた。
「何だって!?」
その報せを受けて僕は現場へと急いだ。
そこには、階段の下で倒れているキャロライン。
(と、おまけの女)
僕は真っ青になって、キャロラインの傍に行こうとしたが、何故かあの女が僕に「怖かったですぅ~、足がぁ~、痛くてぇ~」と縋りついて来た。
えぇい! 邪魔だ!!
どっからどう見てもキャロラインの方が重症だろう!? 意識が無さそうなんだぞ!?
僕が、どうにかしてあの女をひっぺ剥がしている間にキャロラインは運ばれて行った。
その後、キャロラインの詳しい容態を聞いた。
身体だけじゃない。頭も打っているらしい。
「ーーキャロライン」
僕は目覚めないキャロラインに何度も呼びかける。
無茶を言ってキャロラインを半ば強引に王宮に連れて来た。ここには最高位の医師がいる。万が一、何かあってもすぐに対処出来るはずだ。
さらに他の部屋で療養を、と言った周りの制止をこれまた強引に振り切り、僕の私室、僕のベッドにキャロラインを寝かしつけた。
ちなみに、キャロラインが居ても僕もこの部屋で寝泊まりしている。当然だ! 離れられるわけないだろう。
ただし、絶対に手は出さないと約束させられ、誓約書まで書かされた。
……仕方ないとは言え、出来ればもう少し信用して欲しかった……
……いつか僕のベッドで眠るキャロラインの姿を見たいと夢見てたけど、望んでたのは こんな形じゃ無かったのにな……
ちょっとだけ、落ち込んだ。
そんな時、キャロラインが動いた。
苦しそうに呻いていた。
「キャロライン!?」
僕が急いで駆け寄るとキャロラインは途切れ途切れに苦しそうに何か言っている。
悪い夢でも見ているのか!?
「……シュナイダー……様……私はずっと貴方を……お慕いして……おりました」
……………………え!?
今、何て……?
僕を……お慕いしてる? そう言わなかったか??
え? え? つまり、キャロラインも、僕の事を……??
キャロラインはそのまま再び意識を失ったようで、僕は動揺と混乱と嬉しさとで頭がおかしくなりそうだった。
目覚めないキャロラインが心配で心配で仕方なかったけど、まさかキャロラインが僕の事を!! という嬉しさに少しばかり浮かれずにもいられなかった。
そんな落ち込んだり浮かれたりの相反する様子を見せる僕を間近で見ていた友人の一人に、
「ついに頭がイカれたかと思いました」
と後に言われる事にはなったが。……まぁ、否定はしない。
その後、3日間も昏睡状態だったキャロラインが無事に目覚めた。
死ぬほど安心した。多分、初めて神様に感謝したと思う。
頭の検査は念入りに行なったが、特に大きな後遺症も無さそうだったので、ホッと一安心だ。後は療養に専念してもらい、早く良くなる事を願うばかり。
──さて。これで思いっきりあの女を心置き無く追い詰めてやれる。
もうこれ以上、アレを野放しにはしておけない。
キャロラインの悪評を流すだけだなく、今回は傷害罪だ。
……いや、そんな緩いものじゃない。あれは殺人未遂だな。
あの女を追い詰めるのは大勢の人の前でやりたい。
そうなると、今度行われる学園のパーティーは絶好の機会だろう。
その頃なら、キャロラインの負った傷も癒えているはず。怪我している時に無理はさせられないからな。
だけど、これはまた間違いなくキャロラインを傷付ける事になるし、下手をすればかなりの醜聞となってしまい僕の王太子の地位も危うくなるかもしれない。
だけど、もう僕の心は決まっていた。
──あの女を断罪する!
その為に、キャロライン。僕は心にも無いことを君の前で告げる事になる。
だけど、どうか、どうか……
「僕を信じて」
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