【完結】運命の恋に落ちたんだと婚約破棄されたら、元婚約者の兄に捕まりました ~転生先は乙女ゲームの世界でした~

Rohdea

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エピローグ

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「セラフィーネ、これを」
「何です?」

  翌朝……いや、もうお昼に近い時間に目を覚まし、レグラス様の寝顔のどアップに心臓が止まりそうになる……!  
  という体験をした私にレグラス様が一通の手紙を渡してきた。

  (心臓、飛び出すかと思ったわ。好きな人……しかもイケメンの寝顔の破壊力は凄いわね!)

「セラフィーネがクレシャス侯爵家に嫁いで来たら渡すようにってうちのじいさんから託されてた手紙なんだって」
「そんな物が……!」

  まさか、遺言にはまだ続きがあったの!?

「じいさん達は何を考えてたんだろうなぁ……」
「そうですね」

  そこはやっぱりレグラス様も分からないみたい。

「でも……」
「?」
「遺言があったから、マルクと婚約破棄したセラフィーネを逃さずに済んだわけだから……僕としては良かったのかな?」
「んー、それは、そうですけど……」

  遺言が無ければ。
  レグラス様がそれを盾に脅すような事をして来なければ。
  こんな日は来なかった。
  それだけは間違いないな、と思った。

「うん。じいさん達の意図は分からないけど、そこだけはやっぱり感謝だな」
「もう!」

  そう言ってレグラス様が笑いながら顔を近付けて来たので、私はそっと瞳を閉じてその熱を受け入れた。





  登城するレグラス様を新妻らしくお見送りした(いってらっしゃいのキスを要求されたんですけど!?)後、部屋に戻った私は、さっき渡された手紙を開封する。

「……」

  そこには、遺言という形で私の自由を奪ってしまった事に対するお詫びが書かれていた。そして……

「……いやいやいや。我が家のおじい様と意気投合してノリで決めちゃった!  って正直に書きすぎでしょ……」

  まさか単なるノリだったとは。
  ……思い悩んだ日々を返してよ!! 

「って、あれ?  続きが……」

  そのまま、最後まで読んだのだけれど、どうしても最後の一文が気になって仕方無かった。

『───は必ず君の事を幸せにしてくれるはずだ』

「何で“レグラス様”ってはっきり書いてあるのかしら?」

  遺言は、クレシャス侯爵家の息子二人のどちらかとの婚姻だったはずなのに。
  何でレグラス様?  そりゃ結果としてはレグラス様が夫になったけど。
 
「うーん?」

  謎が解けたようで更に深まった気がした。








「……それはじいさんが僕の好みのタイプを知ってたからじゃないかな?」
「好みのタイプ?」

  その夜、帰宅したレグラス様に手紙の話をすると、苦笑いされながらそう言われた。

「セラフィーネがどんな子かを知ったじいさんは、セラフィーネが僕の好みのど真ん中だって分かってたんだと思う。実際、一目惚れしたしね。凄いよね、年の功ってやつかな」
「っ!」

  好みのど真ん中って言葉に思わず頬が緩みそうになるけれど……今は我慢よ!

「だとしても!  私がレグを選ぶかどうかは分かりませんよね?」
「うん。だから、その辺の僕の性格もよんでたんだよ、きっと」
「あなたの性格?」

  私が首を傾げていると、レグラス様はニコッと笑いながら私を自分の方に引き寄せ軽くチュッとキスを落とした。

「!」
「リシャールも言ってただろ?  僕は嫉妬深く心の狭い男だって。そこに執着も加わるかな。とにかく諦めが悪いんだよ」
「……つまり、私がマルク様を選んだとしても……」
「奪い取る予想くらいはしてたのかもね。実際どうするかはその時にならないと分からないけど」

  レグラス様は笑いながらそんな事を言ったけどシャレにならないわよ!?

  嫌われそうで怖かった……
  とか口にしてたけど、レグラス様は……やる。間違いなくやる。
  彼の事を色々と知った今、私にはそうとしか思えなかった。

「まぁ、後は純粋にセラフィーネがマルクの好みとは違ってたのもあると思うよ。じいさんは僕だけでなくマルクの好みも把握してたんじゃないかな?」
「え?」
「マルクの好みは……ほら、アレ……が猫かぶってた最初の頃みたいな感じの女性だったからさ」
「アレ」
「あんなのアレで充分だろ?」

  元聖女はアレ扱いされていた……名前すら口にしたくないらしい。
  変なの。レグラス様だって、アレと恋に落ちてもおかしくなかったのに。

  なんて考えてたら、

「僕の“運命の恋”の相手はセラだよ」
「え!?」

  急に“運命の恋”なんて、言われたから驚いて身体が跳ねた。
  まさかレグラス様からここでその言葉を聞くなんて。

「な、な、何で!?」

  驚き過ぎて声が上擦ってしまった。レグラス様はクスリと笑った。

「セラは、本当に可愛いな」
「!!」
「昨夜……寝言で言ってたんだよ、“運命の恋”が……って」
「寝言……」
「そう!  僕の腕の中で眠ってるセラフィーネがあまりにも可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて暫く眺めてたんだけど、その時に……」
「!?」

  なに、その発言!!  何回言った!?  恥ずかしいじゃないの!
  私は顔が真っ赤になる。

「セラフィーネ」
「……」
「好きだよ、君だけを愛してる……10年前から」
「レグ……」
「“運命の恋”なんてものがあるなら、僕のその相手は君だ。セラフィーネ以外は考えられない、だから絶対に離さないし逃さない」

  そう口にするレグラス様にギュッときつく抱き締められた。
  その気持ちが嬉しくて私もレグラス様の背中に腕を回してギュッと抱き締め返す。

「ふふ、私、あなたに捕まっちゃいましたね」
「うん、捕まえた」

  そんな事を言いながら、見つめ合う私達。
  そして自然と唇が重なる。



「セラ……」
「……レグ」





  ──あぁ、きっと今夜も夜は長いわね。

  そう確信した。

  



  ここは乙女ゲームの世界で。
  私は攻略対象キャラに婚約破棄されるだけの運命だった名無しのモブで。
  なのに、何故かそんな隠しキャラの一人に分かりにくいながらもずっと愛されていて。
  そして、捕まった。

  変なの。
  聖女では無いのにまるで、私が主人公ヒロインみたい。

  なーんて、もうゲームの事は考えるのをやめようと思ったのに……ダメね。
  “運命の恋”なんて、言葉をレグラス様の口から聞いてしまったからかしら?


「……私の“運命の恋”もあなたよ、レグラス」
「セラ……」



  ──私の事を諦めないでいてくれて……ちょっと強引だったけど、こうして捕まえてくれてありがとう……

  そんな想いを込めてレグラス様にもう一度抱き着いた。

  
   ゲームのキャラなんかじゃないレグラスあなたと、セラフィーネわたしで、幸せになりましょう?

  
  そんな気持ちを込めて。



  ───この先、二人で紡ぐ未来は絶対幸せだ。
  





~完~







✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


これで、完結です!
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

まさか、こんなに感想欄が大変な事になるとは思ってもみませんでした。
何かこの話は、全て聖女……いや、性女(笑)……に持っていかれた気がします。
(何の事か分からない方は、是非、感想欄を!)
楽しい感想をありがとうございました!

もちろん、感想を書かずとも、こうして最後までお読みいただいた方々にも心よりお礼を申し上げます。
無事、最後までお届け出来ました!  楽しんでいただけたなら良かったのですが……

あと、一つお詫びを。
短編のはずだったのに、随分長くなってしまい申し訳ございません……
(主にあの性女……のせいです)

それと、昨日頂いた感想の返信にも書いたのですが、後日談で入れ損ねたエピソードが1つありまして。
大した話ではありませんが、その話だけは後日?  早ければ明日?  番外編として書こうかなとは思っています。
なので、もし今後、更新した際はまた読んで頂けたら嬉しいです。
あ、マルクの話じゃないですよ! 彼の幸せも気になりますけど!


最後にまた、入れ替えで新しい話も始めます。

『私の初めての恋人は、とても最低な人でした。』

えっと、もし私の他の作品を読んでくださった方には、お待たせしました。
になりますかね。
『私の好きな人~』『私は顔も名前も~』に続くお話です。 
新作も含め、全て単体でも読める話ですが、
もし、新しい話に興味を持っていただいて他の2作品は知らんわって方はぜひ、これを機会に読んで頂けたら嬉しいです!
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それではいつも長々とすみません!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
お気に入り登録、感想……どれも全て嬉しかったです。

本当にありがとうございました⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
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