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一章 仮面の少年
8話 箱庭と精神世界
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誰かの記憶が頭の中に流れ込んでくる。
…
……
………
僕はいっぱい謝っていた。
ごめんなさい。許して。ごめんなさい、ごめんなさい。連れていかないで。
ぼくはクロがつれていかれるのを止めることができなかった。
でも、仕方ないともおもったんだ。だって、うちは⬛︎⬛︎さんしかいなくて、お金もあんまりなかったから。きっと、いい人にみつけてもらえると、がまんしたんだ。
だからと言って、納得できたわけじゃない。ぼくはクロにまた会いたくて、暗い外をはしりまわった。そのとき、みちゃったんだ。あのはこのなかみを。そこから、なにもわからなくなっちゃった。
きづいたらいえにいて、もうにどといえからでちゃいけないっておこられたんだったな。なんで、わすれちゃっていたんだろう。
………
……
…
呼吸を忘れて、その光景を見ていた。クロが死んでいたことが自分の飼っていた猫が亡くなったことのように苦しくて。辛くて。それに、こんなの誰かに弄ばれたとしか思えない。
涙も出ないほどの絶望。それが一気に押し寄せた。
それでも、あきらめてはいけない。ここで死ぬことは許されない。そう思って、忘れた呼吸を再度繰り返す。
鼻がちぎれるほどの悪臭に脳みそをやられそうになり、生を感じる。僕は辛い現実を、生きている。
「はぁーっ。はぁーっ」
やっと息が整った。しかし、その激臭とぐちゃぐちゃに乱れた感情が、胃から内容物を押し出す。
「オ゛ゥエッ…」
びしゃ、と吐瀉物を地面にこぼす。勢いよく飛び出るそれは、口からだけではなく、鼻からも流れ出る。入院してから、何度吐いたか。
はぁ。最悪な気分だ。なんで、僕がこんな目にと決意を揺らがす。しかし、シュウを助けずにはいられない。
そうして再度、クロと向き合う。そして、一つ嫌な仮説を思い付き、整理する。
「今の…前にもあった。シュウ君の記憶、だよな?」
「そして、記憶だと、クロは連れてかれていなくなっていた…」
「でも、シュウ君は連れて行かれたクロの場所に辿り着いた。それは、連れてかれたクロの居場所を
知っていたから。じゃあ、なんで知っていたんだ」
「それは、クロをこんなことにしたのが…」
そこまで口にして悪寒が走り、振り返る。
そこに立っていたのが、シュウでなくて心底安心した。だが、ただ良かった訳ではない。それはシュウによく同じ顔で僕を睨む…恨むべき相手。
「セキチクッ!!!!!」
「この距離でそんなに叫ぶかよォ、普通っ!」
目があった瞬間、2人は吠えるように声を荒げた。
◇
体は僕より幼いシュウ君のものだ。いくら刃物を持っていようと僕に利がある。そんなことを考える余裕もなく、僕は彼に、訳もわからず殴りかかっていた。
怒りに身を任せ、馬乗りになりシュウ君と同じ顔をした少年を殴って殴って殴り続けた。
殴る方の拳も痛いなんてよく言うが、実際に自分の拳がじんじんと痺れるように痛みを訴え、殴るスピードも落ちていく。
そうして、息を切らしながらぼろぼろになった彼をみた。そこで気づいた。
彼は、ぼろぼろになんてなっていなかったし、握っていたナイフを落としていたなんてこともなかった。
「いてェじゃねえかよォ。あァン?」
痛みなんて感じていないような風でそんなことを口にした。
なんでだ、なんでコイツは傷ひとつない無傷の体なんだ…と、思考を巡らせたのが不味かったのかもしれない。いや、彼に出会った瞬間に僕は逃げなければならなかったのだ。
「っっっがぁぁぁぁぁっあっ!!!!!」
激痛が走る。僕の右腕はさくりと大根でも切ったかのように鮮やかに切り飛ばされた。
痛い。痛い痛い痛い。痛い、気持ちいい赤い痛い黒い痛い痛い痛い痛い。
なくなった腕と逆の腕で、傷を押さえて叫ぶ。体力を使うから叫ぶことは好きじゃないのだが、やめられず、言葉にならない激痛を訴える。
そんなことをしながら、人は腕を切られると、こんなにも鮮やかに血が弾けるのだなと、冷静に考えている自分もいた。
頭がおかしくなりそうなのに、死ねなくて。死んでいなくて。怖いのに楽しくて。笑っちゃいそうになったとき、声を投げかけられた。
「おい!おれ様ァ、お前が死んだ瞬間を2回も見たよなァ?」
「ぇ?」
肩を刺される。
「なんで生きてんだよォ、おい」
腹を刺される。
「それからよォ」
左足を刺される。
「なんてもん、暴いてくれちまってんだァ、あァン?」
ざくざく、ざくざく、ざくざくざくざく、と。何度も何度も何度も何度も。僕の体を好きなだけ刺す。こんなに辛いのになぜ僕は死ねないのか。
刃が肉を突き破る度、僕は何度も奇声を上げた。
「こんな、墓荒らしみてェな事するのはやめてもらっていいかァ?クソ野郎」
彼の言葉も、聞こえているのに理解できない。
「まァ、こんだけやりゃ、もう来ねェだろ」
そう言って、最後に彼は胸を刺す。
「今のままでいいんだ、もう来るんじゃねェ。カスが」
そうして僕は、世界から追放された。
◆
何度目かの死からの目覚めに慣れてしまった、なんて事は一切なく泣き叫びながらベッドから飛び起きた。
生暖かい感触があり、自分の血液ではないかと体を見れば、どうやら大量の汗であると気づき安堵する。
今回は、薬も使えずに激痛に喘ぎながら死んでいった。こんなことを何度も繰り返していたら、僕はすぐに廃人になってしまうだろう。
でも、何故か戻ってすぐは冷静で、切られた腕がある事に安堵してベッドから抜け出す。
何か得た事はあっただろうか。そうだ、シュウ君はネコを拾った。でも、飼えなくて、捨てた。その後、亡くなったのだろう。そして、殺したのは多分…。
「セキチクッ…!」
僕は拳を握りしめる。シャドウであるセキチクを消すことはできなかった。それに、この情報がなんの役に立つのかはわからない。それでも、僕が死んだ元は取れているんじゃないだろうか。
でも、もう一つの目的である、ウツツは見つからなかった。ただ、まだみていない場所はいくらでもある。諦めるにはまだ早いと決意を抱く。それに、どうせまた行くのだから。
あの、地獄に。
「でも、ちょっと疲れたな…。寝ても休めないっていうのはしんどいや」
苦しいものは苦しい。だから、こちらで休みたい。何かできる事があるかもしれないという言い訳を思い付き、僕は病室の扉を開く。
真っ白な病室から廊下に出た。辺りを見渡しても自分以外の他の患者も看護師もいない。
「前のこともあるし、あんまり病院の中を歩きたくはないな…」
現の夢病院は迷宮のように入り組んでいる。1人で歩けばどこに辿り着くかわかったものではない。僕の今いる第2病棟から出た時のことを思い出す。あの時は金庫のように厳重な扉のある空間に辿り着いた。
結局あの部屋がなんだったのかはわからないが、あまり気にする必要もないだろう。それにまた、病棟から出てそこに辿り着ける自信も、あの時のように運よく看護師に見つかるとも限らない。
まぁ、一度薬在庫に向かった際はなぜか辿り着くことができたが、あれもユウヤ先生のメモあってだろう。やはり、ここは病棟から出ると言う選択肢は好ましくない。
「病棟から出ないでできることか…」
僕は考える。ここから出ずにできることは多くない。日記でも書こうか。
謎の病の影響か、記憶のない僕だ。この病院に来た後の記憶だってもしかしたらすぐになくなってしまうかもしれない。忘れた時に備えるためのの日記、いわば備忘録だ。それを書かないなんて愚かなことだろう。それにしても、何を書いたらいいんだろうか。シュウのこと、ウツツのこと、精神世界のこと。書くことが多くて困りそうだ。まぁ、病室に戻ったらゆっくり書こう。
「今は、せっかく部屋から出たしな」
そう独り言を呟いて、思いつく。そうだ、シュウ君のところへ行こう。
もしかしたら、僕が精神世界に行ったことで彼の中で何かが変わっているかもしれない。
そんな期待を胸に、シュウの病室である204号室の扉を叩く。
「シュウ君、いる?」
返事はない。また、先生のところにでも行っているのだろうか。なら、少し待って来る気配がなかったら諦めようと立ち去ろうとした時、病室から何か物音がした。
「シュウ君?」
やはり返事はない。だが、中に誰かいる。まさか、セキチクか?と警戒しつつ扉に耳を立てる。病室からは、息を潜めるようにして泣きじゃくる、誰かの声がした。
シュウ君に何かあったのだ。そう判断して、扉を開こうとした時、背後から声がかかった。
「あら、チヨ君。盗聴趣味でもあるの?あなた」
麗しい声に振り返れば、そこにはセーラー服を着た3つ目の女性、シヅさんがいた。
「ち、違いますよ。シュウ君の様子を見にきただけです」
僕はそう訂正したが、彼女は「そう」と興味なさげに返すばかりである。それから、彼女はその3つの眼で僕を見つめる。
「な、なんですか?」
「いえ、なんでもないけれど。でも、今は彼に会わない方がいいかも」
「え」
シュウに何かあったのだろうか。いや、理由は分かっているだろう。そう、セキチクだ。今はアイツがシュウの主導権を握っているに違いない。拳に力が入る。しかし、そんな僕に彼女は3つの瞳を同時に閉じてこう口にする。
「貴方の思っているようなことじゃないと思うわよ」
どうやら、僕の見当は外れたらしい。それならばよかった。そこで新たな疑問が生じる。
「じゃあ、なんで会わない方がいいんですか?」
「そうね…」
彼女は、考える素振りをしてあるのかわからない口をゆっくりと開く。
「彼、さっき先生のところに行っていたのよ。きっとカウンセリングだと思うのだけれど、それから帰ってきたとき、酷い顔をしていたの」
「顔、ですか」
「そう。なんというか、絶望した表情というか、そんな感じ。何かあったのはそうだと思うけれど、今はあまり話せるような雰囲気じゃなかったわ」
「そう、ですか…」
きっと、カウンセリング中に何かあったのだろう。もしかして、ユウヤ先生が何かしたのだろうか。分からない。何があったかは、シュウか、ユウヤ先生に聞くしかないだろう。しかし、どうやって?
「そういえば、チヨ君。あなた今日のカウンセリングはまだよね」
「え?あ、はい。多分…?」
どれくらい眠っていたのか、今日が眠る前と同じ日付なのか、僕には分からない。そういえば、カーテンで隠されていて、窓の外なんて見ていなかったなと考える。
「まぁ、病室で待っていれば看護師さんがくると思うわ。それに貴方、先生の助手なんでしょ。だとしたら多少は教えてくれるかもしれないわよ」
「確かにそうですね…。分かりました、じゃあ病室に戻ってます。すいません」
「別に大丈夫よ。それに、貴方が先生の助手だっていうなら、もしかしたら私もお世話になるかもしれないしね。恩だなんて思わないけれど関わる分には損はないじゃない?」
「じゃあ」と軽く手を振った彼女は、207号室へと戻って行った。彼女のことはあまりわからないが、悪い人ではないのだろう。人は見かけによらない。
「さて。じゃあ、僕も病室に戻るか」
シュウ君のことは心配だが、仕方ない。僕は看護師が来るまでの間、眠ることもせずに病室で過ごすことにした。
◇
久方ぶりに、真っ黒い表紙の日記を開いた気がする。文字を書くのはあまり好きではなかったのか、あまり筆が乗らない。
「何を書いたものかな…。シュウ君のこともあるし、ウツツの事もあるし、うーん…」
僕は首を捻りながらゆっくりと文字を紡ぐ。
日記3
シュウ君の精神世界に入り、何度か死んで戻ってを繰り返す中でウツツという少女と出会った。
行動を共にする中で、ウツツは精神世界でシュウ君の別人格、セキチクに殺された。
しかし、彼女も僕と同じ異能を持っている可能性がある。
そのため、死んだウツツを探すため、また、シュウ君の病であるカイリセイドウヰツ症を治す糸口を見つけるため、まだ、シュウ君の精神世界を探索しなければ。
それから、まだ描いていなかったウツツの似顔絵を描く。もう会えないかもしれない、彼女のことを描くことにどこか虚しさを感じて、いつもよりも雑に描き終えてしまったような気がする。
「こんなもんかな…」
僕が日記を閉じた瞬間、このタイミングを狙っていたのかの如く病室の扉がノックもなしに開かれる。
「チヨ様、先生がお待ちしておりますので、私についてきてください」
扉の先にいた、ガスマスクをした看護師さんは僕にそう淡々と口にした。
そういえば、彼女のことは日記に書いていなかったな、なんて思いながら僕は彼女の後ろを歩き、先生の元へ向かうのだった。
◇
彼女について行き、たどり着いたのはいつもと違う部屋だった。
「今回はいつもの診察室ではないんですね」
僕のその発言に彼女は特に何か反応することはない。早く中に入れと急かされているように感じる。
そして、看護師は扉を叩く。
「先生、チヨ様を連れてきました」
彼女がそう口にすると部屋の中から、「入っていいよ」という先生の声がした。
「お邪魔します」
僕は看護師が開いた扉をおずおずと抜けて部屋の中へと入る。彼女は僕が中に入ったことを確認すると中に入ることはせず、ゆっくりと扉を閉めた。
あたりを見渡す。部屋の中で、台の上の大きな箱が目立っていた。また、棚に囲まれており、たくさんの人形や動物のフィギュア、木や山のジオラマが並べられている。
「やぁ、チヨ君、待っていたよ」
そんなキョロキョロと挙動不審な僕に相変わらずのうすら笑みを浮かべたユウヤ先生が声をかけてきた。
「あ、どうも、先生。あの…この部屋はなんですか?」
「そうだね。そこから説明しなくちゃいけないね。ここは面接室といってね、まぁ、シュウ君と話していた部屋なんだけれど。チヨ君、君が気になっているのはこの箱と周りの人形だろう?」
「はい」と僕は頷く。それを見て先生は僕に箱の中身を見るように促した。
そこには、砂が敷き詰められていた。その上に、人形や植物、猫のフィギュアが並べられている。
「箱庭療法は知っているかな」
「聞いたことがある…気がします」
「そうか。じゃあ、説明しよう。箱庭療法っていうのはね、箱庭にミニチュアを並べることで何か表現をしてもらって、そこから、何を考えているのか何を思っているのか、言語を使わずに内的な感情を理解することができる心理療法なんだ」
「なるほど…」
あまり理解できなかった気がするが、まぁ、なんとなくはわかった。この砂箱に色々置いて、そこから何かを解釈するのだろう。だとしたら、この箱にあるのは…。
「そう。君の想像通り、シュウ君が並べたものだよ。本当は部屋をそのままにするのは良くないんだけれどね。あぁ、シュウ君には事前に許可を取っているよ」
プライバシーの配慮などが必要なのだろう。まぁ、シュウ君から許可が出ているのならば問題ないか。
「チヨ君」
「なんですか?」
「シュウ君はこちら側を正面だといった。君はこれを見て、どう思う?」
先生は問う。僕はここで箱庭の中の光景にしっかりと目を向けた。
そして、絶句した。
「これ…」
箱庭の中の世界。それはなんというか、シュウ君の精神世界のようだった。
箱庭の中には無数に赤い花が並べられ、凶器を持った人形が1体だけいる。そして、正面から見て右下にあたる部分には砂が退けられ箱の水色が顔を覗かせており、その部分は柵で覆われている。池のようなその空間には白い花、それから女性の人形が置かれている。また、柵が1箇所倒れて、近くに黒い猫のフィギュアが転がされているのも気になる。他には小鳥やジョウロ、家が並べられていた。
僕は、考える。この箱庭の中でシュウ君が何を表現したのか。そして、凶器を持った人形が、柵の周りを見張っているように感じた。
「なんというか、凶器の人…多分セキチクがこの、柵の中の池にあるものを見張っているように感じました」
「なるほど。見張っているか」
「はい。周囲を見張っているような感じがするんです。何かから守っているというか、隠しているというか…すいませんあまりわからないですけれど」
「いや、構わないよ。専門知識のない君の率直な解釈を聞きたかったんだ。ただ、そうか。うん、いい解釈だと思う。流石だね」
何が流石なのだろうか。ただ、褒められたようだったので一応頭を下げる。それを見て、先生は相変わらずのうすら笑みを浮かべていた。
そこで、ふと僕がここに来た目的を思い出す。そうだった、僕は先刻のシュウ君の様子から、先生の元で何かあったのではないかと考えた。だから、ここに来て先生から話を聞こうと考えたのではなかったか。
「と、彼にその解釈は話さないでね。あくまで彼の表現だからね。私たちのそれを話して彼の世界を狭めたくはないんだ」
そんなことを話す先生に僕は向き直る。先生は僕と目を合わせた。
「何か気になることでもあったのかい?」
首を傾げる先生に僕は問う。
「シュウ君、だいぶしんどそうでした。僕はここで何かあったのではないかと考えたのです。先生、何か知りませんか?」
それを聞き、何か考えたような素振りをした後先生は頷く。
「そうだね。じゃあ、話そうか。この部屋で何があったのか」
そうして、先生はこの部屋で起きた出来事をゆっくりと語り始めた。
…
……
………
僕はいっぱい謝っていた。
ごめんなさい。許して。ごめんなさい、ごめんなさい。連れていかないで。
ぼくはクロがつれていかれるのを止めることができなかった。
でも、仕方ないともおもったんだ。だって、うちは⬛︎⬛︎さんしかいなくて、お金もあんまりなかったから。きっと、いい人にみつけてもらえると、がまんしたんだ。
だからと言って、納得できたわけじゃない。ぼくはクロにまた会いたくて、暗い外をはしりまわった。そのとき、みちゃったんだ。あのはこのなかみを。そこから、なにもわからなくなっちゃった。
きづいたらいえにいて、もうにどといえからでちゃいけないっておこられたんだったな。なんで、わすれちゃっていたんだろう。
………
……
…
呼吸を忘れて、その光景を見ていた。クロが死んでいたことが自分の飼っていた猫が亡くなったことのように苦しくて。辛くて。それに、こんなの誰かに弄ばれたとしか思えない。
涙も出ないほどの絶望。それが一気に押し寄せた。
それでも、あきらめてはいけない。ここで死ぬことは許されない。そう思って、忘れた呼吸を再度繰り返す。
鼻がちぎれるほどの悪臭に脳みそをやられそうになり、生を感じる。僕は辛い現実を、生きている。
「はぁーっ。はぁーっ」
やっと息が整った。しかし、その激臭とぐちゃぐちゃに乱れた感情が、胃から内容物を押し出す。
「オ゛ゥエッ…」
びしゃ、と吐瀉物を地面にこぼす。勢いよく飛び出るそれは、口からだけではなく、鼻からも流れ出る。入院してから、何度吐いたか。
はぁ。最悪な気分だ。なんで、僕がこんな目にと決意を揺らがす。しかし、シュウを助けずにはいられない。
そうして再度、クロと向き合う。そして、一つ嫌な仮説を思い付き、整理する。
「今の…前にもあった。シュウ君の記憶、だよな?」
「そして、記憶だと、クロは連れてかれていなくなっていた…」
「でも、シュウ君は連れて行かれたクロの場所に辿り着いた。それは、連れてかれたクロの居場所を
知っていたから。じゃあ、なんで知っていたんだ」
「それは、クロをこんなことにしたのが…」
そこまで口にして悪寒が走り、振り返る。
そこに立っていたのが、シュウでなくて心底安心した。だが、ただ良かった訳ではない。それはシュウによく同じ顔で僕を睨む…恨むべき相手。
「セキチクッ!!!!!」
「この距離でそんなに叫ぶかよォ、普通っ!」
目があった瞬間、2人は吠えるように声を荒げた。
◇
体は僕より幼いシュウ君のものだ。いくら刃物を持っていようと僕に利がある。そんなことを考える余裕もなく、僕は彼に、訳もわからず殴りかかっていた。
怒りに身を任せ、馬乗りになりシュウ君と同じ顔をした少年を殴って殴って殴り続けた。
殴る方の拳も痛いなんてよく言うが、実際に自分の拳がじんじんと痺れるように痛みを訴え、殴るスピードも落ちていく。
そうして、息を切らしながらぼろぼろになった彼をみた。そこで気づいた。
彼は、ぼろぼろになんてなっていなかったし、握っていたナイフを落としていたなんてこともなかった。
「いてェじゃねえかよォ。あァン?」
痛みなんて感じていないような風でそんなことを口にした。
なんでだ、なんでコイツは傷ひとつない無傷の体なんだ…と、思考を巡らせたのが不味かったのかもしれない。いや、彼に出会った瞬間に僕は逃げなければならなかったのだ。
「っっっがぁぁぁぁぁっあっ!!!!!」
激痛が走る。僕の右腕はさくりと大根でも切ったかのように鮮やかに切り飛ばされた。
痛い。痛い痛い痛い。痛い、気持ちいい赤い痛い黒い痛い痛い痛い痛い。
なくなった腕と逆の腕で、傷を押さえて叫ぶ。体力を使うから叫ぶことは好きじゃないのだが、やめられず、言葉にならない激痛を訴える。
そんなことをしながら、人は腕を切られると、こんなにも鮮やかに血が弾けるのだなと、冷静に考えている自分もいた。
頭がおかしくなりそうなのに、死ねなくて。死んでいなくて。怖いのに楽しくて。笑っちゃいそうになったとき、声を投げかけられた。
「おい!おれ様ァ、お前が死んだ瞬間を2回も見たよなァ?」
「ぇ?」
肩を刺される。
「なんで生きてんだよォ、おい」
腹を刺される。
「それからよォ」
左足を刺される。
「なんてもん、暴いてくれちまってんだァ、あァン?」
ざくざく、ざくざく、ざくざくざくざく、と。何度も何度も何度も何度も。僕の体を好きなだけ刺す。こんなに辛いのになぜ僕は死ねないのか。
刃が肉を突き破る度、僕は何度も奇声を上げた。
「こんな、墓荒らしみてェな事するのはやめてもらっていいかァ?クソ野郎」
彼の言葉も、聞こえているのに理解できない。
「まァ、こんだけやりゃ、もう来ねェだろ」
そう言って、最後に彼は胸を刺す。
「今のままでいいんだ、もう来るんじゃねェ。カスが」
そうして僕は、世界から追放された。
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何度目かの死からの目覚めに慣れてしまった、なんて事は一切なく泣き叫びながらベッドから飛び起きた。
生暖かい感触があり、自分の血液ではないかと体を見れば、どうやら大量の汗であると気づき安堵する。
今回は、薬も使えずに激痛に喘ぎながら死んでいった。こんなことを何度も繰り返していたら、僕はすぐに廃人になってしまうだろう。
でも、何故か戻ってすぐは冷静で、切られた腕がある事に安堵してベッドから抜け出す。
何か得た事はあっただろうか。そうだ、シュウ君はネコを拾った。でも、飼えなくて、捨てた。その後、亡くなったのだろう。そして、殺したのは多分…。
「セキチクッ…!」
僕は拳を握りしめる。シャドウであるセキチクを消すことはできなかった。それに、この情報がなんの役に立つのかはわからない。それでも、僕が死んだ元は取れているんじゃないだろうか。
でも、もう一つの目的である、ウツツは見つからなかった。ただ、まだみていない場所はいくらでもある。諦めるにはまだ早いと決意を抱く。それに、どうせまた行くのだから。
あの、地獄に。
「でも、ちょっと疲れたな…。寝ても休めないっていうのはしんどいや」
苦しいものは苦しい。だから、こちらで休みたい。何かできる事があるかもしれないという言い訳を思い付き、僕は病室の扉を開く。
真っ白な病室から廊下に出た。辺りを見渡しても自分以外の他の患者も看護師もいない。
「前のこともあるし、あんまり病院の中を歩きたくはないな…」
現の夢病院は迷宮のように入り組んでいる。1人で歩けばどこに辿り着くかわかったものではない。僕の今いる第2病棟から出た時のことを思い出す。あの時は金庫のように厳重な扉のある空間に辿り着いた。
結局あの部屋がなんだったのかはわからないが、あまり気にする必要もないだろう。それにまた、病棟から出てそこに辿り着ける自信も、あの時のように運よく看護師に見つかるとも限らない。
まぁ、一度薬在庫に向かった際はなぜか辿り着くことができたが、あれもユウヤ先生のメモあってだろう。やはり、ここは病棟から出ると言う選択肢は好ましくない。
「病棟から出ないでできることか…」
僕は考える。ここから出ずにできることは多くない。日記でも書こうか。
謎の病の影響か、記憶のない僕だ。この病院に来た後の記憶だってもしかしたらすぐになくなってしまうかもしれない。忘れた時に備えるためのの日記、いわば備忘録だ。それを書かないなんて愚かなことだろう。それにしても、何を書いたらいいんだろうか。シュウのこと、ウツツのこと、精神世界のこと。書くことが多くて困りそうだ。まぁ、病室に戻ったらゆっくり書こう。
「今は、せっかく部屋から出たしな」
そう独り言を呟いて、思いつく。そうだ、シュウ君のところへ行こう。
もしかしたら、僕が精神世界に行ったことで彼の中で何かが変わっているかもしれない。
そんな期待を胸に、シュウの病室である204号室の扉を叩く。
「シュウ君、いる?」
返事はない。また、先生のところにでも行っているのだろうか。なら、少し待って来る気配がなかったら諦めようと立ち去ろうとした時、病室から何か物音がした。
「シュウ君?」
やはり返事はない。だが、中に誰かいる。まさか、セキチクか?と警戒しつつ扉に耳を立てる。病室からは、息を潜めるようにして泣きじゃくる、誰かの声がした。
シュウ君に何かあったのだ。そう判断して、扉を開こうとした時、背後から声がかかった。
「あら、チヨ君。盗聴趣味でもあるの?あなた」
麗しい声に振り返れば、そこにはセーラー服を着た3つ目の女性、シヅさんがいた。
「ち、違いますよ。シュウ君の様子を見にきただけです」
僕はそう訂正したが、彼女は「そう」と興味なさげに返すばかりである。それから、彼女はその3つの眼で僕を見つめる。
「な、なんですか?」
「いえ、なんでもないけれど。でも、今は彼に会わない方がいいかも」
「え」
シュウに何かあったのだろうか。いや、理由は分かっているだろう。そう、セキチクだ。今はアイツがシュウの主導権を握っているに違いない。拳に力が入る。しかし、そんな僕に彼女は3つの瞳を同時に閉じてこう口にする。
「貴方の思っているようなことじゃないと思うわよ」
どうやら、僕の見当は外れたらしい。それならばよかった。そこで新たな疑問が生じる。
「じゃあ、なんで会わない方がいいんですか?」
「そうね…」
彼女は、考える素振りをしてあるのかわからない口をゆっくりと開く。
「彼、さっき先生のところに行っていたのよ。きっとカウンセリングだと思うのだけれど、それから帰ってきたとき、酷い顔をしていたの」
「顔、ですか」
「そう。なんというか、絶望した表情というか、そんな感じ。何かあったのはそうだと思うけれど、今はあまり話せるような雰囲気じゃなかったわ」
「そう、ですか…」
きっと、カウンセリング中に何かあったのだろう。もしかして、ユウヤ先生が何かしたのだろうか。分からない。何があったかは、シュウか、ユウヤ先生に聞くしかないだろう。しかし、どうやって?
「そういえば、チヨ君。あなた今日のカウンセリングはまだよね」
「え?あ、はい。多分…?」
どれくらい眠っていたのか、今日が眠る前と同じ日付なのか、僕には分からない。そういえば、カーテンで隠されていて、窓の外なんて見ていなかったなと考える。
「まぁ、病室で待っていれば看護師さんがくると思うわ。それに貴方、先生の助手なんでしょ。だとしたら多少は教えてくれるかもしれないわよ」
「確かにそうですね…。分かりました、じゃあ病室に戻ってます。すいません」
「別に大丈夫よ。それに、貴方が先生の助手だっていうなら、もしかしたら私もお世話になるかもしれないしね。恩だなんて思わないけれど関わる分には損はないじゃない?」
「じゃあ」と軽く手を振った彼女は、207号室へと戻って行った。彼女のことはあまりわからないが、悪い人ではないのだろう。人は見かけによらない。
「さて。じゃあ、僕も病室に戻るか」
シュウ君のことは心配だが、仕方ない。僕は看護師が来るまでの間、眠ることもせずに病室で過ごすことにした。
◇
久方ぶりに、真っ黒い表紙の日記を開いた気がする。文字を書くのはあまり好きではなかったのか、あまり筆が乗らない。
「何を書いたものかな…。シュウ君のこともあるし、ウツツの事もあるし、うーん…」
僕は首を捻りながらゆっくりと文字を紡ぐ。
日記3
シュウ君の精神世界に入り、何度か死んで戻ってを繰り返す中でウツツという少女と出会った。
行動を共にする中で、ウツツは精神世界でシュウ君の別人格、セキチクに殺された。
しかし、彼女も僕と同じ異能を持っている可能性がある。
そのため、死んだウツツを探すため、また、シュウ君の病であるカイリセイドウヰツ症を治す糸口を見つけるため、まだ、シュウ君の精神世界を探索しなければ。
それから、まだ描いていなかったウツツの似顔絵を描く。もう会えないかもしれない、彼女のことを描くことにどこか虚しさを感じて、いつもよりも雑に描き終えてしまったような気がする。
「こんなもんかな…」
僕が日記を閉じた瞬間、このタイミングを狙っていたのかの如く病室の扉がノックもなしに開かれる。
「チヨ様、先生がお待ちしておりますので、私についてきてください」
扉の先にいた、ガスマスクをした看護師さんは僕にそう淡々と口にした。
そういえば、彼女のことは日記に書いていなかったな、なんて思いながら僕は彼女の後ろを歩き、先生の元へ向かうのだった。
◇
彼女について行き、たどり着いたのはいつもと違う部屋だった。
「今回はいつもの診察室ではないんですね」
僕のその発言に彼女は特に何か反応することはない。早く中に入れと急かされているように感じる。
そして、看護師は扉を叩く。
「先生、チヨ様を連れてきました」
彼女がそう口にすると部屋の中から、「入っていいよ」という先生の声がした。
「お邪魔します」
僕は看護師が開いた扉をおずおずと抜けて部屋の中へと入る。彼女は僕が中に入ったことを確認すると中に入ることはせず、ゆっくりと扉を閉めた。
あたりを見渡す。部屋の中で、台の上の大きな箱が目立っていた。また、棚に囲まれており、たくさんの人形や動物のフィギュア、木や山のジオラマが並べられている。
「やぁ、チヨ君、待っていたよ」
そんなキョロキョロと挙動不審な僕に相変わらずのうすら笑みを浮かべたユウヤ先生が声をかけてきた。
「あ、どうも、先生。あの…この部屋はなんですか?」
「そうだね。そこから説明しなくちゃいけないね。ここは面接室といってね、まぁ、シュウ君と話していた部屋なんだけれど。チヨ君、君が気になっているのはこの箱と周りの人形だろう?」
「はい」と僕は頷く。それを見て先生は僕に箱の中身を見るように促した。
そこには、砂が敷き詰められていた。その上に、人形や植物、猫のフィギュアが並べられている。
「箱庭療法は知っているかな」
「聞いたことがある…気がします」
「そうか。じゃあ、説明しよう。箱庭療法っていうのはね、箱庭にミニチュアを並べることで何か表現をしてもらって、そこから、何を考えているのか何を思っているのか、言語を使わずに内的な感情を理解することができる心理療法なんだ」
「なるほど…」
あまり理解できなかった気がするが、まぁ、なんとなくはわかった。この砂箱に色々置いて、そこから何かを解釈するのだろう。だとしたら、この箱にあるのは…。
「そう。君の想像通り、シュウ君が並べたものだよ。本当は部屋をそのままにするのは良くないんだけれどね。あぁ、シュウ君には事前に許可を取っているよ」
プライバシーの配慮などが必要なのだろう。まぁ、シュウ君から許可が出ているのならば問題ないか。
「チヨ君」
「なんですか?」
「シュウ君はこちら側を正面だといった。君はこれを見て、どう思う?」
先生は問う。僕はここで箱庭の中の光景にしっかりと目を向けた。
そして、絶句した。
「これ…」
箱庭の中の世界。それはなんというか、シュウ君の精神世界のようだった。
箱庭の中には無数に赤い花が並べられ、凶器を持った人形が1体だけいる。そして、正面から見て右下にあたる部分には砂が退けられ箱の水色が顔を覗かせており、その部分は柵で覆われている。池のようなその空間には白い花、それから女性の人形が置かれている。また、柵が1箇所倒れて、近くに黒い猫のフィギュアが転がされているのも気になる。他には小鳥やジョウロ、家が並べられていた。
僕は、考える。この箱庭の中でシュウ君が何を表現したのか。そして、凶器を持った人形が、柵の周りを見張っているように感じた。
「なんというか、凶器の人…多分セキチクがこの、柵の中の池にあるものを見張っているように感じました」
「なるほど。見張っているか」
「はい。周囲を見張っているような感じがするんです。何かから守っているというか、隠しているというか…すいませんあまりわからないですけれど」
「いや、構わないよ。専門知識のない君の率直な解釈を聞きたかったんだ。ただ、そうか。うん、いい解釈だと思う。流石だね」
何が流石なのだろうか。ただ、褒められたようだったので一応頭を下げる。それを見て、先生は相変わらずのうすら笑みを浮かべていた。
そこで、ふと僕がここに来た目的を思い出す。そうだった、僕は先刻のシュウ君の様子から、先生の元で何かあったのではないかと考えた。だから、ここに来て先生から話を聞こうと考えたのではなかったか。
「と、彼にその解釈は話さないでね。あくまで彼の表現だからね。私たちのそれを話して彼の世界を狭めたくはないんだ」
そんなことを話す先生に僕は向き直る。先生は僕と目を合わせた。
「何か気になることでもあったのかい?」
首を傾げる先生に僕は問う。
「シュウ君、だいぶしんどそうでした。僕はここで何かあったのではないかと考えたのです。先生、何か知りませんか?」
それを聞き、何か考えたような素振りをした後先生は頷く。
「そうだね。じゃあ、話そうか。この部屋で何があったのか」
そうして、先生はこの部屋で起きた出来事をゆっくりと語り始めた。
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